不都合こそ、才能かもしれない

22世紀アートの前身は、前の会社でやっていた
社内ベンチャー事業「22世紀アートクラブ」だ。
そこでは美術に関する新たな可能性を発掘するため、
芸大や美大に行ってインタビューをしたり、
可能性がありそうな学生の展示を企画したり
していた。
「若い人にチャンスを与えよう」という
マインドだ。
けれど、なかなかチャンスを掴むまでいく人は
いない。

理由は、誰も本気で売れると思っていないから。
作家デビューできる人は、努力の末じゃなくて、
ある日シンデレラみたいに突然、
チャンスがやってくると思っているらしい。
どんなにセンスがあっても、
自信がなさそうな人ばかり。
「自分がまさか」という感じだ。
芸術が学べる環境にいて、同じ志ある仲間もいて、
親にも応援されていて。
それなのに、なんか、たぎってないんだよなぁ。

一方ある美大の近くに、朝鮮学校があった。
そこの学生も美大で展示をしていて
「よければ遊びにきてよ」と言ってくれたので、
寮に遊びに行くことになった。
そこは、想像もしないような場所だった。
外国にあるようなコンビニ、
カプセルホテルくらいしか広さのない寮の部屋、
質素な食事。
だけどそんな学校の子が、
コンクールで入賞していたりする。

「どうして絵を描くの?なんでそんなにうまいの?」
訊いてみると、意外な答えが返ってきた。
「狭い部屋にいたくない。アトリエの方が広いし、
自分の時間がつくれる。だけどアトリエに
いるためには、絵を描かなくちゃいけない」
彼らはコンテストも、賞金が出るものしか
応募していないらしい。
そして「絶対に売れる、絵で食べていくんだ」
とギラギラしていた。
衝撃だった。

不都合って、才能だ。
才能には内的才能と、外的才能があるが、
不都合は外的才能だろう。
そして不都合というのも、自分で選んでいる訳だ。
朝鮮学校の学生たちが、こうした現状を知って
日本に来たのかは、わからないけれど。
けれど誰でも辛いのは嫌だし、怖い。
そんな不都合に勝ってしまう好奇心こそ、
本当の才能だろうと思う。

みんななんらかの決断をして生きていくが、
後悔していない人は、そこに才能があるのだろう。
人生ここぞというときは、
あえて不都合を選んだ方がいいのかもしれない。
才能の見極め方は、そこにあるんだ。


株式会社 22世紀アート
代表取締役 向田 翔一

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