NTTの系譜ーー電電民営化過程の研究:電気通信の創業から電電ファミリーまで

(著) 井上照幸

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作品詳細

[商品について]
―電電民営化から日本の電気通信事業の歴史が見える―
1985年に民営化して日本電信電話株式会社(NTT)となり、その歴史に幕を閉じた日本電信電話公社。実はこの民営化は、日本の電気通信事業の黎明期である明治時代より経営形態論議として盛んに闘わされてきたものであった。本書では、その「電電民営化」について、経営形態をめぐる論議から労働問題、企業論そして電電ファミリーまで、公営として出発した日本の電気通信事業が民営化する過程を多くの資料をもとに検証する。企業論研究としても示唆に富む一書。

[目次]
はじめに
第1章 電気通信の創業過程における経営形態問題 ――電電民営化過程の研究・前史
1 電信電話の生誕
2 わが国における「電信」創業の道程
3 わが国における「電話」創業の道程
【追録】
論点:その1「日本の電信発祥の地をめぐって」
論点:その2「逓信省の官営論をめぐって」
第2章 敗戦前における電電民営化論議
1 再燃する民営論
2 「日本電信電話株式會社」構想の顛末
3 戦時下の「日本電信電話建設株式會社」構想
4 民営論台頭の時代背景
第3章 敗戦から公社設立に至る経営形態論議
1 マッカーサー書簡から電信電話復興審議会答申へ
2 国会決議とGHQの対応
3 「さしむき」としての公社設立
第4章 日本電信電話公社法の枠組みと内容 ――経営形態との関連において
1 公社時代の電気通信法令体系
2 電電公社の目的と業務
3 経営委員会の権限と組織
4 財務における自立の理念と現実の制約
第5章 電電公社発足後における経営形態論議の系譜
1 臨時公共企業体合理化審議会における 論議と答申の検証
2 公共企業体審議会における論議と答申の検証
3 臨時行政調査会における論議と答申の検証
4 公務員制度審議会における論議と答申の検証
5 公共企業体等関係閣僚協議会 専門委員懇談会における論議と答申の検証
a.専門懇設立の経緯
b.公労協の見解
c.全電通の見解
d.電電当局の見解
e.専門懇の意見書
6 公共企業体等基本問題会議における論議と 答申の検証
a.意見書提出の背景と争議権問題
b.電信電話事業以外の部会報告
c.電信電話事業の経営形態に関する報告
第6章 第二次臨時行政調査会にみる電電民営化論
1 『基本答申』と『第4部会報告』
2 公社制度の問題点と改革の要点
3 電電公社経営の問題点
4 臨調による指摘の検証
5 電電民営化の提言内容
【追録】
論点:その1「試論:電電民営化の7つの推進勢力」
論点:その2「ドイツテレコムの株式上場に寄せて」
第7章 電電民営化の背景としての労働問題
1 公労協と全電通
2 賃金交渉における政治的色彩
3 「財政民主主義」下での団体交渉
4 電電民営化への傾斜
第8章 1970年代後半における電電民営化の 底流と問題点
1 電電公社に忍び寄る影
2 電電経営と電電債券の問題点
3 問われる金融費用と建設投資
4 天下り幹部の実態調査
5 減価償却と耐用年数にみる問題点
【追録】
論点:「1999年の耐用年数をめぐる論議について」
第9章 電電民営化期にみる《電電ファミリー》の 範囲と内容
1 「危機」に表面化する結束力
2 『デンサン』に基づく業種分類
3 全国に展開する電電関連事業
4 広大な電電ファミリーの裾野
5 電気通信共済会の支配構造
第10章 電電民営化期にみる《電電ファミリー》の 天下り・資材調達・研究開発
1 《電電ファミリー》の概念に寄せて
2 「天下りによる人的結びつき」について
3 「調達による結びつき」について
4 強まる「外需」依存
5 「アナログ」から「ディジタル」へ
6 強化される「共同研究開発による結びつき」
a.ミニファクスにみる共同研究開発
b.DIPSにみる共同研究開発
c.「共同研究開発方式」のメリット
【追録】 「資材調達に関する資料収集をめぐって」
参照文献一覧
おわりに
著者略歴

[担当からのコメント]
NTTの民営化は当時大きな話題となり、その株式が非常に高値をつけたことを思い出す方も多いのではないでしょうか。時代の流れでなったようなイメージのある電電民営化ですが、本書を読むとその裏に長い議論の歴史があったことが分かります。日本のビジネスに大きな影響力を持つNTTの系譜を知ることができる本書、ぜひご一読ください。

[著者略歴]
井上 照幸(いのうえ・てるゆき)

1947年,東京都生まれ。
青山学院大学経営学部,同大学院経営学研究科博士課程を経て,電気通信大学文部教官助手として2年間勤務。
1978年4月,高崎経済大学専任講師に就任。
同大学助教授を経て1990年4月から教授。
専攻:テレコムビジネス論・現代企業論・経営学

〔主な著書〕
『ハイテク通信が軍事化される日』中央経済社,1986年(本書は日本図書館協会選定図書に指定)
『NTT―競争と分割に直面する情報化時代の巨人』大月書店,1990年(本書によって1990年度公益事業学会奨励賞を受賞)
「情報通信産業」(産業学会編『戦後日本産業史』東洋経済新報社,1995年,収載)
『KDD,IDC,ITJ―激変のときを迎える国際通信』(山下東子氏との共著)大月書店,1996年ほか。

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