鬼哭の親鸞:親鸞教学の大改造:真宗学の誤解が苦悩者を切り捨てた
(著) 入井善樹
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[商品について]
―虚心で親鸞の言葉と向かい合う、《ひろまり》と《ふかまり》を追求した力作である。その先に見える世界が、本書である―
親鸞の根幹教学は『重誓偈』にあり、第一句の「超世の願」は「横超」による信心の現生成仏の学びであり、第二句は貧苦者を現世利益で救済し、第三句は念仏による救済の連鎖によって世界中から念仏の声が聞こえる、そうした教えだった筈である。しかし私たちが現在教わる本願寺宗学は、第一に「悪人」救済といい現世利益を否定している。こうした権力に迎合的で苦悩者の人たちの苦を倍増する宗学の考えをあらため、真の親鸞教学を未来へと伝えるにはどうすべきか――そうした視点のもとで積み重ねてきた研究の集大成ともいえるのが、本書である。親鸞はこの世に何が言いたかったのか、浄土真宗の教えに迫る仏教書として示唆に富む内容となっている。
[目次]
はじめに
第一章 「横超(おうちよう)の信心」の喪失(そうしつ)
「横超の信心」が生んだ同一地平の精神
解放同盟からの疑団
「横超の信心」とは
現生成仏からの利他行
親鸞の「教相判釈」
「われらなり」の淵源
近代の往生・成仏説
罪悪と「おまかせ」
タマシイの導入
出門はアミダ仏に似る
「おまかせ」と「無根の信」
第二章 鬼哭(きこく)の親鸞
【真宗学の誤解が苦悩者を切り捨てた】
親鸞の入門の救済論
「安城の御影」
鎌倉仏教と最貧者
伝統的誤解の悪影響
親鸞の《ひろまり》
臨床心理と信心の関係
鬼哭の親鸞
第三章 念仏はすべて利他行(りたぎよう)
【入門は祈願念仏で現世利益(げんせりやく)の救済】
利他行(りたぎよう)の念仏(ねんぶつ)
「大乗」の入門は祈願念仏
心・身の順列
大乗が目指したもの
六つの謎解き
念仏の効能
信心は獲得するもの
第四章 怒りの連鎖を止める
ブッダの風光からの心象真理
親鸞の「逃散(ちようさん)」
触光柔軟(そつこうにゆうなん)の身
最下層の誕生
福祉の精神
筆者の意識変革
親鸞の差別意識
おわりに
著者略歴
[担当からのコメント]
伝来の過程や教学・学問として複雑になっていったりして、ブッダの本来の教えは歪められてしまっているのではないか、そんな思いを持つ方はぜひ本書をご覧ください。親鸞の教えの本当の意味を知りたい、という方にもお薦めです。難解なイメージのある仏教の教えや教典の、本当の姿や意味を知ることができます。
[著者略歴]
入井善樹(Irii Zenjyu)
《経歴》1943年、香川県の浄土真宗・光教寺に生まれる。65年、龍谷大学真宗学卒業、同年、伝道院終了。67年頃から、毎日、親鸞の著述の繰り読みを始める。73年、喉を痛め、陶芸を始め開窯した。75年、世界連邦協会の国際裁判所を設立に共鳴。国際関税局を設立して貿易に関税をかけ、最貧国に働く場を誘致し、軍事産業を平和産業に変える資金援助を訴える。77年、日本で最初の「テレホン法話」を開設。電話(087)862・3101。82年、陶光会全国展で東京都知事賞受賞。県展にて奨励賞受賞。84年、広島平和記念式典に参加。広島別院で「念仏者の平和運動」を主催した。85年、光教寺本堂建立。88年、教学の歪みを感じ、輔教論文を勧学寮に3年間連続提出。審問の結果、すべてが間違いといわれ、親鸞の証文を引用し、反論の証文を要求したが「引く必要なし」の返答に、逆に伝統教学のすべてがおかしいと気づいてからは、出版に力を注ぐ。96年、「東雲の会」(中途障害者適所小作業所)を友人6人と立ち上げ理事長となる。99年高松市仏教会々長に就任。
【出版】87年『日々、のびやかに』(新日本印刷)。87年『テレホン人生講話』(時潮社)。95年、『親鸞聖人の現場の教学』(法蔵館)。95年4冊本出版、『ゆがめられた親鸞教学』・『親鸞念仏の可能性』・『ふかまる横超』・『親鸞の霊性』(国書刊行会)。96年、『反差別の教学』(永田文昌堂)。2011年『法王さま、親鸞が答えます』(国書刊行会)。
【論文】90年、『東方』六号の「岩波仏教辞典問題」で中村元博士の論文に引用された。04年、『東方』二十号、「親鸞の利他の精神」シリーズ採用、以後4年間連続で査読掲載された。
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