言葉の孤独
(著) 松久明生
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―言葉の牢獄の中で、その孤独が共振する―
見飽きた 聞き飽きた/どいつも こいつも/空虚と恥辱を拝ませるな/すっからかんになった俺の虚無が/廃虚と不能者の群から/立ち上がるぞ/ムジーク ムジーカ!/垢と痰のこびりついた階段が/アコーディオンになれば/酔どれと阿呆が踊りだす(「言葉の孤独」より)
孤独の磁場に囚われながら言葉の風景に没入し表出してきた詩人が、創造の中にある〈言葉の孤独〉を68編の詩に託した知と感性の詩集。
[目次]
序文
言葉の孤独
言葉の孤独
青ざめた馬を見よ
デジャブ
ambiguous umbrella
黒い雨
雨に踊れば
カタツムリのスキャット
平成ミレニアムの煙が行く
野良犬
シーシュホスの神話
G線上のメリークリスマス
ランボーへの遺文
アルルカン
グレーゴル・ザムザ(註19)
箱男
おかしな男の夢
恥知らずの永遠の朝に
インスタントイレスタント
空出張の猿ども
泥酔の夜明けが起きあがる
梅田、午前8時
潰されて
君の名はMr.コースター
ドナドナドンナ風が吹く
蚤の歌
死の教室
セミョーノフ練兵場からの遺書
青空が見えない
帰らぬノストラダムス
黒い太陽の許へ
罪と罰
街の死亡診断書
眼球は気球で旅にでる
世界はMissドーナッツに飢えている
僕のトイストウリィ
言葉の意味の無意味の意味
鴎のジョナサン
ポルトフィーノ岬から
冬の告知
SKY IS……
秋のソナタは冬の彼方へ
冬のお迎えうれしいな
春の刻印から
春が唄えば
言葉と自然の間で
忍び寄る森の影
悲しみの代謝
グラン ブルー
海の青へ
イマージュのアルカデイア
イマージュの滴る中で
父と母の風が見えて
n個の性の歴史
バスタブで女が子守歌を歌う
予言者
言葉は茨の道を行け
凍えそうなマリアよ
ようこそクローンパークへ
ハロークローン人間
不在のメインマスト
生の文脈の中に
一粒の麦
言葉に依らずして
夜明けの気配
進むべき樹
死のエピグラム
狂信者
模糊たる闇の彼方へ
あとがき
[担当からのコメント]
発せられる言葉と異なり書かれる言葉は音声という軛から曖昧な形で解放され、それが詩という形式を得たとき言葉の狭間で独自の世界を生み出すのではないか、本書の作品群を読んでいるとそんな予感に囚われます。言葉に没入し言葉の風景に出会う、そんな時間をぜひ本書と共にお楽しみください。
[著者プロフィール]
松久 明生(まつひさ・あきお)
1951年名古屋市生まれ。北海道大学薬学部卒。医学博士。現在、製薬会社で感染症の分子診断学の研究開発に従事。少年時代は昆虫採集に没頭し、昆虫学者になるのが夢であったが、浪人時代にそのモチーフを見失った。その頃、世の中は赤軍派リンチ事件、浅間山荘の銃撃戦、三島由紀夫の市ヶ谷自衛隊での割腹自殺と血腥い事件が相次ぎ、そんな背景のなかで文学書嫌いの私もその類いを読み始め、〈詩〉をひねり出していった。今から考えると、私にとって日々詩を作ることは失った〈時間〉に対するメンタルなバランスを取るための〈作業〉であったと言える。現在では会社人から〈私人としての私〉を救出するための〈行為〉であり続けている。
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