若手社員を一人前に育てる:日本企業の職場での人材育成を再生するためのヒント
(著) 藤本雅彦
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[商品について]
―ハイパフォーマーは、何が違っていたのか―
今日のビジネスにおいて、若手の育成は企業の将来を左右する重要な課題です。しかし実際の職場では時間やノウハウの不足といった深刻な問題が生じており、企業のパフォーマンスにも影響を与える人材育成は、変化の激しい市場で生き残るための喫緊の課題といえます。では若手社員を一人前の中堅社員に育て、高いパフォーマンスを発揮させるためにはどうすればよいのでしょうか。この問題に対して、本書ではインタビュー調査から得られた記述統計的な事実に基づき、若手社員の育成に必要なものは何かを成長のプロセスやステージを踏まえながら明らかにしていきます。人材教育に悩む幹部や人事スタッフはもちろん、自ら成長したいと望む若手社員にとっても示唆に富む一書です。
[目次]
はじめに
職場での上司と若手社員の嘆き
ナレッジワーカーの仕事
変わりゆく大卒の姿
一人前とは何を意味するのか
一人前になるために必要な時間
一人前として認められるための要件
日本企業の生産性を左右する若手社員の人材育成
本書のねらい
第一部 OJTを中心とする職場教育の仕組みを探求する
第一章 これまでの職場教育の仕組み
ビジネスパーソンはどのようにして学習するのか
職場教育の中心となるOJTのブラックボックス問題
徒弟教育制度がOJTの起源
目には見えない徒弟教育制度の仕組み
学校教育は、徒弟教育と何が違うのか
今日の職場教育における新たな問題と課題
第二章 今日の職場教育におけるOJTのあり方
「ナビゲーション型教育」
職場で何を学習し教育すべきかを明らかにする
職場における学習と教育の実践方法
職場における「仕事の教え方」の原理原則
経験的学習のメカニズム
経験的学習を促進するための「ソクラテスの問答法」と「何故を5回繰り返す」
職場での上司の関わり方や支援のあり方
「演繹的アプローチ」から「帰納的アプローチ」へ
「状況適応的人材育成」(Situational Human Resource Development)
第三章 これからの職場教育のための仕組みづくり
徒弟教育と学校教育のハイブリッド化
若手社員の職場での人材育成の仕組みの見える化
第二部 若手社員が一人前に成長するまでの学習と成長のメカニズムを探る
第四章 これまでに明らかにされてきた若手社員の成長を左右する要因とは何か
米国企業における入社後の昇進の可能性を左右する要因
日本企業では入社時の上司が将来的な部下の昇進可能性を左右する
第五章 今日の日本企業の若手社員が一人前に成長するプロセスとメカニズム
一般的な日本企業の若手社員の熟達プロセス
「日本企業の若手社員の一人前の研究」に関する調査概要
入社後9年間の成長の節目となる転機のスナップショット
成長の節目となる転機から、いつ頃、何を学習するのか
第六章 一人前に成長した中堅社員のパフォーマンスの相違をもたらす成長プロセスの要因とは何か
ハイパフォーマーは、入社直後のネガティブなリアリティ・ショックが少ない
ハイパフォーマーは、仕事経験と人との出会いによる成長の転機数が多い
ハイパフォーマーは、社外の人との出会いによる成長の転機の頻度が多い
ハイパフォーマーは、入社直後の初期にスタンスを学習する頻度が多い
ハイパフォーマーは、7年目に成長の転機を経験する頻度が多い
ハイパフォーマーは、2年を超える成長の停滞がなく、レジリアンス(回復)力が高い
第七章 技術系若手社員の成長プロセスの特徴
技術系若手社員の成長の転機数と学習内容の推移
技術系の若手社員は、上司よりも先輩との出会いによる成長の転機の頻度が多い
技術系の入社2年目の新人扱いは成長の落とし穴
技術系ハイパフォーマーは、入社直後の初期に技術スコープを拡大する頻度が多い
技術系ハイパフォーマーは、6・7年目頃から第一線の研究開発からマネジメント業務にシフトする
第八章 事務系若手社員の成長プロセスの特徴
事務系若手社員の成長の転機数と学習内容の推移
事務系の若手社員は、先輩よりも上司との出会いによる成長の転機の頻度が多い
事務系(営業職)ハイパフォーマーは、顧客との出会いによる成長の転機の頻度が多い
事務系ハイパフォーマーは、3年目と7年目に成長の転機の頻度が多い
事務系ハイパフォーマーは、中期から後期にかけて事業・組織スコープが拡大する頻度が多い
事務系ハイパフォーマーは、後期にスタンス(態度)を学習する頻度が多い
第九章 日本企業の若手社員が一人前の中堅社員に成長するための要件
入社直後のリアリティ・ショックを回避するための現実的な仕事のプレビュー
入社後3年間は、若手社員として業務遂行に必要な知識やスキルとスタンスを着実に体得する
入社5年目頃までに、半人前の中堅社員として高度な業務知識やスキルを確実に習得して自信をつける
入社後9年目頃までにベテラン中堅社員として、組織的にインパクトの大きな仕事に挑戦し、事業や組織の視野を拡大する
「やるときは、やる!」というメリハリのあるワークライフを楽しむ
第十章 日本企業の若手社員が一人前の中堅社員に成長するためのプロセスのモデル
第三部 職場での人材育成の考え方とヒント
第十一章 入社3年目までの若手社員の人材育成
必要な知識やスキルを確実に習得して基本的なスタンスを体得させる
入社直後の若手社員の仕事の特徴と課題
部下にアサインすべき仕事の職務特性
指示的OJTから説得的OJTへ
第十二章 入社5年目前後の半人前の中堅社員の人材育成
挑戦的な仕事によって自己効力感を高めて自信をつけさせる
本人にとって挑戦的で困難な、具体的で明確な目標を設定する
説得的OJTから参加的OJTへ
自己効力感を高めるために
第十三章 入社7年目頃以降のベテラン中堅社員の人材育成
組織的にインパクトの大きな仕事を任せて、事業・組織に関する視野を拡大させる
「シングルループ学習」から「ダブルループ学習」へ
国内の地方拠点や海外拠点と本社管理スタッフの仕事経験
仕事そのものによる内発的な動機づけ
部下を信頼して「仕事を任せても、任せっ放しにしない」委任的OJT
補足(ロジット回帰分析)
おわりに
参考文献一覧
著者略歴
[担当からのコメント]
人材育成の難しさは人はそれぞれ性格も個性も違うということだけでなく、ある会社で成功した事例が必ずしも普遍性を持つ訳ではないことにあるのではと思います。本書は、統計データを駆使しながら日本の人材育成に潜む課題を分析しているという点で、様々な企業や組織でもご活用いただける内容となっています。ぜひご一読ください。
[著者略歴]
藤本 雅彦(ふじもと まさひこ)
現職:東北大学大学院経済学研究科教授・地域イノベーション研究センター長
1959年、北海道生まれ。1983年、東北大学教育学部卒業後、株式会社日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)入社。リクルート社を卒業後、IT企業取締役などを経て、2004年、東北大学大学院経済学研究科助教授。2007年、同教授。
1999年、東北大学大学院経済学研究科博士課程修了(博士(経済学))。
人事・組織関連の主な著書に『人事管理の戦略的再構築』税務経理協会、『経営学の基本視座』(編著)まほろば書房、『ケースに学ぶ経営学 第3版』(共著)有斐閣などがある。その他、東日本大震災からの復興や地域経済に関する書籍が多数ある。
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