精神科医のひとりごとーー精神医療のホントのところ
(著) 羽根晃
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―人を安心させるのも、人を変えるのも、人しかない―
精神科にとって病気とは何か、それぞれの医師や医療に求められるものとは何か、こうした問いを考えていくと、医師や患者をとりまく医療や社会そのものにまで目線は広がっていく。そしてその答えは、日々の取り組みの中で医療に携わる一人ひとりが考え、できることを積み重ねていく中にしか見つけることはできないーー30年にわたり精神科医として患者と向き合ってきた著者が、効率や明確さばかりが重視される現代社会において、「人間」を相手にする精神医療のあり方や臨床現場から見えてくるものを自身の経験をもとに綴った随想的論考集。
[目次]
はじめに
第一章 病気と診断されること、治療を受けること
病気であること――病識とは?
精神科の病気に対する偏見や差別
病識と統合失調症の治療に対する姿勢
病気もつくられたもの?
治療と薬について
第二章 医者の仕事、資質、能力について
偏差値が高くないと医者はできないのか?
医者に求められる能力とは
医者に対する教育
基礎研究に必要なもの
臨床研究とはどういうものか
医師不足に関して
第三章 臨床という場
臨床教育について
コンピューター医師
コンピューター医師が不可能な理由
精神科臨床の一つの現状
精神科の診断あるいは病名の変遷
言葉と不安
うつ病が増えた理由の一つ
第四章 精神医療に必要なこと(求められること)
世の中に正解はない
片づかない現実と向き合う
いい加減にやって丁度いい加減になる
頑張らされている
第五章 臨床の背後にある現実
第六章 頭(脳)と気持ち(心)と身体(カラダ)
精神疾患は不安の結果である
頭と気持ちと身体のアンバランス
分かっちゃいるけど止められない
身体は頭を助けてくれる
第七章 普通の感覚と異常な心理
精神科の病気は異常な世界なのか
精神科では普通のこと
精神医療の改善は進むか
管理という仕事
医師の異常な感覚
治療を受ける側の意見や主張
第八章 患者さんへの説明、あるいは伝える言葉
健康には幅がある
止まない雨はない
元気の貯金をしましょう
うつ病の説明
復職後のアドバイス
60点主義でやりましょう
苦しい時や辛い時は、足元だけ、目の前の今だけを見て行きましょう
引き算をしないこと
雨が降らなきゃいい。雨が降れば傘を差せばよい
あなたにだって嫌いな人はいるでしょう
現実と無意識の足し算
どちらを選んでも・・
症状つまり結果だけを見ないように
第九章 薬についての話
治療と薬
精神科で使う薬物
薬の研究・開発
医者は職人である
処方する時に考えること
精神科の薬に対する偏見
処方量について
薬に関する少し細かい話
薬物依存の話
薬に関するいくつかの経験
薬に関して、最後に
最終章 現代医療の問題
高騰する医療費と医師不足
目指すべき真の医療とは
無常ということ
おわりに
参考文献
著者略歴
[担当からのコメント]
メンタルケアの重要性が高まる現代社会では、ひと昔前に比べれば精神科医の存在は身近になってきていると言えますが、精神科医がどのようなことを考えているのかについては分からないという方も多いでしょう。精神医療と私たちをつなぐ架け橋となる本書、ぜひ多くの方に手に取っていただければ嬉しく思います。
[著者略歴]
羽根 晃(はね・あきら)
1952年三重県生まれ。大学卒業後、会社勤務を経て、1983年名古屋大学医学部卒業。その後、名古屋大学附属病院、長浜赤十字病院、マルセイユ大学、名古屋掖済会病院、南豊田病院精神科に勤務。2007年精神科クリニックを開設。精神科医。
【共著】
「言語哲学の地平」(夏目書房1993年)
「分裂病の精神病理と治療6」(星和書店1994年)
【論文】
「ネオロギスムと分裂病の世界」(精神医学1990年)
「破瓜型(非―妄想型)分裂病の諸段階―言語論的『差異と関係づけ』からする精神病理学的一考察」(精神神経学雑誌、93巻、1991年)
「ソシュールとラカン」(イマーゴ1992年)、「パラノイアと他者の構造」(臨床精神病理1995年)
「緊張型分裂病についての一考察」(臨床精神病理2002年)など
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