竹久夢二という生涯――日下四郎が辿るその人生と美の奥義

(著) 日下四郎

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作品詳細

[商品について]

―たまきという女性に「あなたの長髪が嫌い」と言われ、夢二はどうしたでしょうか―

1、長髪の理由を伝え説得した 2、固く一本に髪を結わいて見せた

3、頭を刈って翌日会いに行った

正解は、本書 第8章「女人渇仰」をご覧ください。


竹久夢二は、数多くの美人画を残し、『どんたく』や『夢のふるさと』など詩人としても名を残している。本書は、その夢二の歩みを旅という視点で捉え、幼少期や歩んだ土地と出会った女性たちとの関係、夢二の童画と童話の世界などを紐解いていく。著者によって、夢二が日々なにを思い生活を送っていたのか、当時の詩や言葉とともに記されている。子どものように描き、人を恋い、そして泣いた竹久夢二を追いかける一冊である。


[出版社からのコメント]

竹久夢二は明治から昭和の時代を生きた詩人であり画家です。彼の作品は当時から評価されているものが多くありました。その裏、私生活においては様々な女性との関係が噂される人物でもありました。花火のように儚く消える恋も数多く経験されていたそうです。しかし、真剣に恋をし向き合った女性ももちろんいます。本書には、夢二の歩みとともにその心情が作品のどの部分に垣間見えるのかが記されています。芸術家の心を感じることが出来る一冊です。


【著者略歴】

日下四郎(くさか・しろう)


1930年 京都市に生まれる 戸籍名:鵜飼宏明

1948年 旧制第三高等学校文科丙(フランス語科)を修了

1953年 新制東京大学第1期生として文学部ドイツ文学科を卒業

経歴:放送 JOKR(ラジオ)からTBSテレビで番組制作 ~1979年

   舞台 DANCE THEATER CUBICで創作活動 台本&演出 ~1991年

   教職 淑徳短期大学/日本女子体育大学の非常勤講師 ~1997年

   評論 現代舞踊を中心とする創作作品の批評と審査 ~2013年

以上ダンス関係の仕事にはペンネーム日下四郎(くさかしろう)を用いた。


【主な著作と作品】

●鵜飼宏明名の著作

『太陽と砂との対話:西アジアのシルクロード』(1983 里文出版)

『東京大学・学生演劇七十五年史:岡田嘉子から野田秀樹まで』(1997 清水書院)

『さすが舞踊、されど舞踊』(2005 文芸社)

『ナナとジャン : 昭和20年代が生んだ青春の譜 上下巻』(2016 青風舎)


●日下四郎名の著作

『モダンダンス出航』(1976 木耳社)

『竹久夢二の淡き女たち』(1994 近代文芸社)

『現代舞踊がみえてくる』(1997 沖積舎)

シリーズ『ダンスの窓から』(2003−2012全3冊 安楽城出版)

翻訳本『ルドルフ・ラバン』(2007 大修館書店) その他


●ビデオ制作(全6巻 各1時間 台本・演出および解説パンフレット)

『第1巻 開拓期の人々』~『第6巻 戦後世代の展開』(1988-2005CDAJ)


[読者から頂いたお声]

竹久夢二さんについて、私はあまり詳しくはないのですが、黒猫を抱く女性を描いた美人画「黒船屋」はテレビか何かで見たことがありました。女性らしい華奢な体つきと曲線、全体の色彩が印象的な作品でした。本書では、その竹久夢二さんの女性関係について多く書かれています。そもそもにどのような方だったのかを存じ上げない私にとって、夢二さんの生き方は、私とは正反対で、格好良く憧れのようなものを抱いてしまいました。というのも、私は女性とお付き合いをするということが11年なかった時期もあり、憧れと書きましたが、羨ましい・・・という側面があるのも事実です(笑)。しかし、夢二さんご本人からすれば、きっと心が引き裂かれるようなときもあったのではないでしょうか。本書を読んでいると、輝いては消えていく女性もおりましたが、夢二さんの心に深く残る女性がいたこともしっかりと書かれています。そういった様々な女性との関係、心に深く残る女性との関係を築いていったからこそあのきれいな曲線美が描かれ、絵に深みを増していったのかなと思いました。本書を読み、夢二さんがどのような方だったのかを知ったことで、いつか生で夢二さんの美人画を観たい。できれば、年代別に観ていきたいと思うようになりました。コロナが落ち着いて、もし美術館などで展示されることがあれば是非行きたいと思います。夢二さんのバックボーンまで想像でき、その絵の魅力をより一層感じることができるのが楽しみです。また、本書ではその女性関係をとても美しい言葉で表現されています。「もどかしげに若い肉体から深紅の花を摘み取ってしまった」などの幻想的な表現にまるで物語を読んでいるように引き込まれていきました。静かで落ち着いた、それでいてドキドキしてしまう時間を過ごさせていただきました。あまり芸術に詳しくない私ではありますが、作者を知ることでその絵に感じる魅力に深みが増すのだということを教えていただきました。今後も夢二さんに限らずいろんな芸術家さんの作品とともにバックボーンへも意識を向けていきたいです。そしてその際に読む書籍が本書のような美しい表現がされていると嬉しいです。(30代:男性)


竹久夢二という、画家、詩人として残した数多くの美人画や詩の裏に隠された背景をこの本を通じて初めて知りました。

夢二が描いてきた美人画の主なモデルであったたまき、彦乃、お葉、雪坊など、数多くの女性達との関わり方に竹久夢二の人間像が浮かび上がってきました。

特に印象に残った、竹久夢二がゆき江の知らない間にゆき江のあとをつけて居所を見とどけ、何回かラブレターを自分で玄関先の郵便受けにまでとどけに来ていたという場面、あそこで私は、竹久夢二はまるで、少年のようであるなと思いました。

5章辺りからの、章をおっていく事に現れる数々の詩にもその少年らしさは垣間見れるように思えました。


また、この作品中には、竹久夢二の日記や詩が本文中に紹介されている箇所が多々ありました。竹久夢二自身の日記や詩の、竹久夢二自身の言葉を読むことで、人間像やその時その時の心情変化を追うことが出来て楽しかったです。

そして、竹久夢二の‘’山”に対する思いに、驚かされました。

その数ある女性遍歴のうち、夢二がもっとも深く愛したと思われる薄命の愛人、笠井彦乃こと通称〝おしの〟を、かれはひそかにもうひとつの別名〝山〟で呼び、自らを〝川〟になぞられていた。

とあります。山を人に例えるというところに、しかも昔の恋人を山に例えるという発想に驚きました。花などではなくなぜ山なのか、と。なので竹久夢二の日記の中の、山というワードがとても印象に残りました。

本を読み進める中で最初は、女遊びの激しい人だったのかな?と思っていましたが、この、かつての恋人を山、自らを川と表現するところに、数多くの女性と関わる中で、ただ遊んでいただけではなく、一人一人しっかりと愛していたのではないかなと、感じました。

また、この比喩に、画家、詩人という芸術家らしさを感じることが出来ました。

竹久夢二の生涯を知ることが出来、これを知った上で1度竹久夢二の作品を見てみたいなと思う作品でした。(30代:女性)


今回、竹久夢二という人物を本書を取ることで初めて知ったのですが、大正・昭和のロマン画家・詩人として数多くの功績を残し、今回竹久夢二の残された作品を拝見して、特に多く残されてきた美人画の表現の仕方、感性、独特の視点による浮世絵のような描写の豊富さなど、非常に興味深く惹かれ、どんどん引き込まれ魅了されていきました。私自身、お恥ずかしながらあまり芸術の分野に明るくなく、大正から昭和にいたる際の、人々の生活や文化に根付いた芸術の歴史や作風の表現の変遷なども存じ上げなかったのですが、竹久夢二も着目した都市における大衆文化の開花による消費生活の拡大を背景とした、新しい応用美術としてのデザインというものの黎明という時代背景が、本書の中でのご解説や作品等を通じて大変伝わってきて、大変勉強となりました。

また、竹久夢二の歩みとともに語られる様々な女性との恋愛、その恋愛遍歴とともに綴られた日記や手紙から、夢二の真剣でまっすぐな気持ち、詩的でドラマチックな表現の豊かさ・ユーモアさは、今現在でもそのままドラマや恋愛小説などの脚本にも通用するかの様な魅力溢れるものと感じました。また、恥ずかしながら、恋愛というものにとんと疎い干物のような人生を送っているので、読み進めるごとにこんな展開があるのかと羨ましく感じました。

私の知人に、実際に芸術家として活動されている方が数人いるのですが、その方々はそれぞれ分野も違いますしお話してる限り感性も違うのですが、彼女らがそれぞれ口をそろえて仰るのが、「その時その時の感情や思っている事、感じた事、いわゆる心の振れ幅が特に作品作りであったり、手がけている作品の表現などに写実に影響を及ぼす」と言った話です。この話を伺った際はあまりピンとは来なかったのですが、竹久夢二の生きざまや恋愛の話、その時その時の史実、心の影響により作品・作風に影響を及ぼしている事を本書の中で感じる事ができ、あの時言っていたことへの理解を深める事ができ、私にとっても大変貴重な一冊となりました。 (30代:男性)

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