社会運動としての東大全共闘 第1分冊 総目次 序章 東大全共闘が切り拓いた社会運動の新形態 第1章 国家と戦争、そして暴力

(著) 高口英茂

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作品詳細

[商品について]
―資本主義を超え、そしてソ連型社会主義を超えるために―
近代資本主義が生みだす社会矛盾に立ち向かう社会運動の流れの中で、「予示的運動」に近いところに立ち異彩を放っていた東大全共闘運動。「ソ連型社会主義」が失敗に終わり、近代資本主義に対峙する新たな運動が模索される中で、今後の社会運動の原理として発展しうる予示的原理を内包していた東大全共闘運動は、今あらためて社会運動の視点から総括されなければならない。全5巻に分けて東大全共闘運動に迫るシリーズ第1巻である本書では、国家の起源と国家に付随して生起する戦争、暴力をテーマを取り上げる。

『社会運動としての東大全共闘』は5分冊となっております。

[目次]
序章 全共闘運動が実践した社会運動の新しい形態
 1.社会運動の歴史のなかでの東大全共闘
「社会運動」とは何か
社会運動と政党政治
日本社会党の凋落
 2.「1968年革命」
世界における1968年
「新しい社会運動」の登場
 3.全共闘運動が提示した予示的運動
学生運動の歴史のなかでの東大全共闘運動
予示的運動としての東大全共闘運動
東大闘争の延長に考えた、「半農半X」の生活の推進
 4.本書の狙いと構成

第1章 国家と戦争、そして暴力
第一節 部族社会から国家へ(王権の確立と王有財産の拡大)
 1.「国家」を根底から考える
68年9月30日の日大・日大全共闘間の確認書を反古にした国家権力の介入
人類は「野生」から「未開」を経て「文明」へ進化したのか?
部族社会が発明した「半族制」
人類登場の時代の「骨拾い人」仮説
サルの不平等社会からヒトの「平等志向社会」へ
農耕牧畜の開始・安定集住が促した部族社会の形成
 2.王権の成長
「首長制社会段階」に文明化した地域と非文明地域が分化
国家の誕生に不可欠だった「力」の行使者としての「国王」の存在
国王権力は外来性の暴力そのもの
部族から出自しながら自他の部族民を完全支配できる国王が「王有財産」を形成
国家は集団の期待の外化だが、それは誕生すると同時に被支配者にとっては疎外態になる
国家は王権が形成した支配部族及び被支配部族「統治」のためのセンター
「共同体」と国家
血縁原理による集団統治の限界と部族=氏族制への移行
政略結婚・戦略的婚姻は世の常
旧石器時代からの交易が「王権」のシンボルになる威信財を運び、王権を強化する
外部集団との分業と集団内の分業の組織化
 3.国家の拡大
異なる宗教どうしの統合による「プレ国家」および国家の拡大
神殿による収穫物の「収税」・再分配から、「国家」による収税・再分配へ
集団を統合する原理の錯綜(血縁、宗教、経済的利益配分の織物)
等価価値の存在を背景にした「交換」が集団を経済面から統合
沈黙交易は、贈与か互酬か交換か、はたまた朝貢か
物質的条件が王権の成長を促す一方、王権が物質的条件を整えていっそう物質的条件が前進
 4.国家内部の階層化
国王の臣下となる氏族の有力者と、王とその取り巻きの支配者化
共同体内「暴力」行使と対外「戦争」の常態化(傭兵も活用して急激に膨張する初期国家)
初期国家が取り組んだ交易路の拡充・確保・独占
市場取引に介入する「プレ国王」
原初的貢納制生産様式と戦争による国王財産の増大
農兵制生産様式・小規模経営生産様式、小規模・大規模奴隷保有生産様式の併存
「国家に抗する社会」、および国家に執行権力がないアイスランド・サガの世界
エンゲルスが古代アテネを国家形成の典型例としたのは、当時の歴史学の限界のため
古代「都市国家」における都市の政治は貴族支配で一般市民が自由なわけでは必ずしもない

第二節 戦争による国王領土の拡大とその内部的外部的争奪戦の展開
 1.「ステート」の争奪戦が戦争の基調
縄文時代の戦いと弥生時代の「戦争」
戦争に随伴して不可避的に発生する犠牲には際限がない
戦争の歴史を「ステート」の位置づけとその争奪史から理解する
武器と戦争マネジメントの略史;武器の発達には後戻りがない
 2.歴史の中での戦争
ヨーロッパにおける騎士戦士時代の終焉と小銃の登場
兵制の変遷と国家(中国の歴史を中心に)
近世・近代フランスの戦争:「国民」の戦争とその深化形態としての「国民総力戦」
国王を殺害した国民国家フランスが確立した国民経済のコンセプト
戦争の歴史上、大きな変化点となったナショナリズムを背負った戦争
国民兵ではなく、外人部隊にたよるようになった帝国主義時代のフランスの戦争
これまでの戦争と位相が異なる二つの世界大戦
続く「植民地支配の後遺症」型戦争
 3.第二次世界大戦を最後の世界大戦に
近代日本が嵌ったアジア太平洋戦争の深み
「相手から仕掛けられた戦争」の要素もあったが、そういう言い方が許されない日本軍の蛮行
「日本国民」を戦争犯罪者に仕立て上げる結果を招いた戦争指導者たち
朝鮮、台湾の人々も「日本人」として戦った事実を忘却するなかれ

第三節 政治的解決が行き詰まった際に発現する「暴力」
 1.「新左翼」の暴力性
1968・69全共闘運動の時代とその暴力性
「一般学生」も決起した東大全共闘運動における暴力
新左翼系諸党派の70年代の暴力行為
「前衛党神話」からの脱却が必要
スペイン内戦の経験は「前衛党」建設戦略への疑問をつきつけていた
共産党政権による暴力は二度とはないと思うが決して正当化することができない
 2.自然生起する<神的暴力>、担うべき「戦争を防ぐ暴力」
フランツ・ファノンの暴力論
<神的暴力>であるかどうかは歴史の判断による;歴史に恥じないものかどうかで決断を
戦争と暴力の問題の総括

[担当からのコメント]
環境問題や労働問題、貧富の格差など現代の私たちが抱える喫緊の課題の中には、少なからず近代資本主義の矛盾が含まれています。これらの難問を超えるためには今なにが必要なのか、本書はそうした思索をするうえでも示唆に富む内容となっています。ぜひご一読ください。

[著者略歴]
高口英茂(たかぐち ひでしげ)

1945年 北海道帯広市生まれ。1968年 東大全共闘運動参画。1981年(株)クリオ設立、代表取締役。2011年 病を得て離職。2016年『東大全共闘と社会主義』(全5巻)を(株)芙蓉書房出版より刊行。

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