物理学はまだこんなことがわかっていない

(著) 川久保達之

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作品詳細

[商品について]
――乗り物が急に速さを変えたり運動の方向を変える時、乗っている人が倒れそうになります。その様な現象が起こるニュートンの法則は次のどれでしょうか。
1.作用・反作用の法則、2.運動の法則、3.慣性の法則
正解は、本書 第9話 吸い込み口のまわりの渦をご覧ください。

ありふれた日常で起こる身近な現象に対してのふとした疑問、不思議に思う気持ちこそが新しい科学の始まりであり、科学の基本中の基本である。日常で経験し何気なく見過ごしている様々な現象の中で、「物理的に解るとはどういうことかを考える」と同時に「物理学の限界」を考える一冊である。自然の中に新しい問題を見つけ、好奇心をもって観察し、実験し、自ら考えていく癖を一人でも多くの人に身につけてもらえたら幸いだと日々感じている著書が、猫の飛び降りによる衝撃力・カエルの眼・樹木の吸水・肩こりに効く磁石と人体の関わり・吸い込み口の渦など身近なテーマを元に物理学という方法でアプローチし解明を試みる。世の中の現象の中にはまだ解っていない問題が沢山あり、解けない問題の中に、未来の物理学ないしは科学が拓かれる可能性を秘めているに違いない。

[目次]
はしがき
近くて遠くなった科学技術
「なぜだろう」と思う気持ちが大切
物理学とは何か
物理学の研究分野を拡げる必要がある
第1話 猫は高い所から飛び降りても怪我しない?
中学2年生のころの思い出
5メートルの高さから人が落ちる衝撃力
5メートルの高さから猫が飛び降りる場合
衝突の際の衝撃力を減らすには
第2話 樹木はてっぺんまでどうやって水を吸い上げるのか
真空による水の吸い上げは10メートルが限界
自然の樹木と植物生理学者の説明
まだ完全には解っていない問題
第3話 磁石はどうして肩こりに効くのか
磁石は肩こりに本当に効くか
磁場による皮膚温度の上昇
血行がよいとはどういうことか
肺から末梢組織へ酸素を運ぶヘモグロビン
磁場によるヘモグロビンの酸素結合比率の変化
残る大きな課題――「筋肉がこるとは何か」
第4話 水の上を走る大とかげ
君は「バシリスク」の走る姿を見たか
「バシリスクの走り」を試算してみる
水分子集合体の動的構造の謎
第5話 鏡のなかの左右と上下
朝永振一郎博士が問題にした「鏡のなかの世界」
バスガイドと乗客にとっての左右と上下
鏡映によって反転するのは鏡の面に垂直な軸だけ
鏡像に対する思い込み
議論をまとめると
第6話 カエルの眼
カエルは動いているものしか見えない
人の眼球は止まっているものを見るとき小刻みに動いている
動くもののほうがよく見える
神経細胞による映像信号の伝達
ものが見えるということの不思議さ
第7話 電車の架線の中を流れる電子の速さ
東京から猪苗代まで電子が行くのにどれくらいの時間がかかるのか
山手線の電車の架線を流れる電子のスピード問題
量子力学で見た「電子の速さとは?」
第8話 ゾウリムシにも心があるか?
ゾウリムシの走熱性
物理学者の浅はかな知恵
ゾウリムシはたくさんいるほど集まりやすい
単細胞にも備わっている「感知・判断・行動」機能
ゾウリムシと心
第9話 吸い込み口のまわりの渦 その1 浴槽から出ていく水は左巻きか?
北半球では真北に発射したロケットは東にそれる
メリーゴーランド上でのキャッチボール
地球の自転によるコリオリ力
北半球では浴槽の水は左巻きの渦をつくるか
コリオリ力は浴槽程度のサイズの流れではほとんど効かない
第10話 集まる水は渦を巻きたがる 吸い込み口のまわりの渦 その2
水槽実験で渦を作る
孔に吸い込まれていく水はなぜ渦を作ろうとするのか
角運動量の保存則はどうなっているか
相転移と対称性の破れ
究極の条件下では浴槽にもコリオリ力が効く
竜巻と台風の違い
ここまでのまとめ
竜巻や台風のメカニズムはもっと複雑
第11話 自励発振はノイズから成長する
ブランコはなぜ揺れるのか
自励発振はどうして起きるのか
発振はノイズから成長する
発振の安定度の目安となるパワースペクトルの幅
レーザー発振におけるモードの単一化
発振現象は化学や生物の世界にもたくさんある
非平衡開放系における相転移現象としてみた自励発振
第12話 筋肉を収縮させる生体分子エンジン
無生物と生物の違い
筋肉を収縮させるミオシンとアクチン
ミオシン1分子の運動の観察
ミオシンの動的構造変化のシミュレーション
ミオシン頭部のランダム振動は一方向に偏る
物質とエネルギーと情報
第13話 なぜこの世界の現象は不可逆的なのか
不可逆的とは何か
ニュートンの運動第二法則
水中でのインクの拡散
3個の球の衝突問題
確率過程論
時間の矢
付録 物理量の大きさを実感する
■大きな数と小さな数を表す記号の意味と読み方
参考文献
あとがき
著者

[出版社からのコメント]
科学の進歩によって多くのことが既に解明されていると思っていましたが、身近に起こる現象の中にもまだまだ解らないことが沢山あります。物理学とは難しい数式や理論をイメージしますが、本書は物理学と疎遠の方にも分かりやすく、身近にある興味深くて面白いテーマに沿って、物理的に考える方法論や解明されていない現象の一部に迫っています。著者の願いでもある本書を通して多くの方が様々なことに興味と疑問をもち、行動し、考えていくことの礎になっていただければ嬉しく思います。

【著者略歴】
川久保 達之(かわくぼ・たつゆき)

1932年生まれ。
東京大学理学部物理学科卒業。
東京工業大学大学院理工学研究科物理学専攻博士課程修了。
最初は半導体の電気伝導度がある温度で急に変わる相転移の研究をしていたが、1970年以後は、各種の発振現象や自律的に成長する流体の運動、さらには生物の機能に関わる問題など、いろいろな問題に興味をもち、広範囲の研究を行ってきた。
東京工業大学名誉教授。
桐蔭横浜大学終身教授。
応用物理学会会長(1992-94年)。

著書には
『物性論』(朝倉書店)、
『ゆらぎの科学』(共著、森北出版)、
『生命現象と物理学』(共著、朝倉書店)
などがある。

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