無償教育と国際人権規約 : 未来をひらく人類史の潮流
(著) 三輪定宣
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―フランスの思想家ジャン=ジャック・ルソーが教師の資格の第一に「金で買えない人間」を挙げたのは、以下のうちどの著作か。
1.社会契約論、2.新エロイーズ、3.エミール
正解は、本書第2章の「2 無償教育の思想史」をご覧ください。
現在に至るまで、日本の教育費は世界標準に比べて高い。その原因の一端が、国際人権規約(1976発効)に批准しながらも、全ての教育段階における「無償教育」を唱えたA規約13条2項(b)(c)の適用を留保し続けてきたことにある。2012年にようやくその留保を撤回したが、国連は日本に対して、2018年までに無償教育計画の策定と実施を求めた(2018年問題)。本書はその2018年問題に関する「奨学金の会」(会長・著者)の取り組み過程で発表された論文・講演をまとめたものである。2012年の留保撤回以降の無償教育にまつわる教育政策を再検討し、今後の展望を議論する上での必読書。
[目次]
はじめに――無償教育の潮流と展望
1 「無償教育時代」の到来と有償教育との訣別
2 無償教育の意義と展望
Ⅰ部 国際人権規約と無償教育
第1章 国際人権A規約13条と「2018年問題」
1 国際人権A規約と第13条
2 社会権規約委員会「一般的意見」
3 社会権規約委員会「総括所見」と「2018年問題」
第2章 国際人権A規約13条の意義と思想
1 国際人権規約と無償教育条項の世界史的・人類史的意義
2 無償教育の思想史
3 無償教育の教育実践的意義
4 無償教育と社会の発展
第3章 国際人権A規約13条・「2018年問題」への官民の対応、 市民運動
1 「2018年問題」への政府・民間の対応
2 「2018年問題」と市民運動
Ⅱ部 無償教育政策の動向と教育費の現状
第4章 無償教育政策の動向と背景
1 無償教育政策の最近の動向
2 無償教育政策の背景
第5章 過重な教育費負担、少子化と財政危機
1 過重な家計負担教育費の実態
2 高学費と高等教育の修学難
3 学校・教師の疲弊
4 少子化を加速する教育費負担、財政危機
第6章 貧困・格差と就学支援・奨学制度
1 貧困・格差の拡大と子どもの貧困
2 就学支援・奨学制度と自治体の責任
3 奨学金制度の変遷、現状と課題
Ⅲ部 ¬2018年問題の課題と展望
第7章 無償教育計画と教育保障制度
1 無償教育計画
2 「教育保障制度」の確立
第8章 朝鮮学校への就学支援金支給差別
1 問題の概要
2 国際人権規約と民族差別の禁止
3 憲法、教育基本法と朝鮮高校就学支援金差別の不当性
4 朝鮮高校が受ける「不当な支配」論
第9章 教育職員の地位の改善
1 就学前・初等・中等教育の教育職員の地位の改善
2 高等教育の教育職員の地位の改善
第10章 学校制度の発展
1 国連の委員会による日本の教育に関する勧告と政府・民間の対応
2 学校制度の発展と日本の教育の課題
第11章 無償教育の展望と財源
1 財源見通しと財政破綻の危機
2 無償教育社会実現の財政政策
おわりに――「教育再生」政策と教育共同戦線
1 「教育再生」政策の推進
2 教育共同戦線の構築
【各章の註】(本文で引用した文献を除く)
【参考文献1】国際人権A規約13条関係(三輪以外、2005年以降)
【参考文献2】同(三輪執筆、2005年以降)
著者略歴
[出版社からのコメント]
本書は無償教育についての単なる理論的、概説的な内容に留まらず、無償化促進の運動に深くコミットした経験を踏まえているため、とても実践的です。そのため、社会に直接的・間接的に深甚な影響を与える「教育費」の無償化すすめるために何が必要で、私たち個人がいかなる行動を取るべきかの指針を得られる内容となっています。
[著者プロフィール]
三輪 定宣(みわ さだのぶ)
1937年静岡県三島市生まれ。東京大学教育学部卒業、同大学院教育学研究科博士課程修了。千葉大学教育学部教授などを経て現在、千葉大学名誉教授、帝京短期大学教授。国民のための奨学金制度の拡充をめざし、無償教育をすすめる会(奨学金の会)会長。
著書に『教育法の現代的争点』(2014年、法律文化社)、『新しい高校教育をつくる』(14年、新日本出版社)、『先生、殴らないで! 一学校・スポーツの体罰・暴力を考える』(13年、かもがわ出版)、『教育学概論』(12年、学文社。教師教育テキストシリーズ全15巻(三輪・編集代表)の第1巻)など。
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