校長協会の歩みから見る戦後の高校教育の歴史――教育の民主化からベビーブーム、ゆとり教育まで
(著) 萱原昌二
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――昭和44年に始まる高校紛争の結果、社会問題となった高校生の「三無主義」の三無とは、無気力、無関心、残り1つは次のどれでしょうか。
1.無道徳、2.無責任、3.無反応
正解は、本書第4章「一 昭和五〇年代の深刻な教育課題」をご覧ください。
本書は、戦後の新制高校発足以来の高校教育の歩みを、中央教育審議会・教育課程審議会の答申を受けた学習指導要領の変遷を主軸とし、その時々に社会から関心をもたれた大学入試・高校入試、学園紛争などに触れつつ、全国高等学校長協会の視点から記した作品である。全国の国立・公立・私立高校の校長を会員とする全国高等学校長協会の活動を、主に普通科高校を中心として紹介し、校長協会の果たした役割を教育史の中に位置づけようと試みた高校教育通史として、示唆に富む内容となっている。
[目次]
はじめに
第一章 第二次世界大戦後の教育改革
一 教育の民主化
総司令部による教育民主化の指令
六・三・三制の発足
二 全国高等学校長協会の発足
校長協会設立の準備
発足当時の校長協会
三 新制高等学校の発足
アメリカをモデルとした新制高校
小学区制
総 合 制
男女共学制
新制度へのとまどい
四 新制高等学校の教育課程
大幅な選択制の導入
教室移動で廊下はラッシュ状態
大幅な選択制の修正
短命に終わった大幅な選択制
五 全国高等学校長協会の苦悩
旧制中等学校からの脱皮
新制高校発足の決意
第二章 占領下教育からの脱却
一 教育内容の改善
教育改革の見直し
理科教育・産業教育の充実
人格形成の完成教育
二 多様な教育課程の編成
独立国家としての教育の改善
必修教科・科目の増加
三 ベビーブーム世代の到来
高校進学率の上昇
適格者主義か希望者主義か
職業科高等学校の増設
第三章 後期中等教育の拡充
一 後期中等教育の多様化
高等学校以外の教育機関の整備
職業教育の多様化
二 全国高等学校長協会の提言
後期中等教育についての提言
中央教育審議会の答申「後期中等教育のあり方について」
生徒の多様化への対応
生徒の多様化に対応した教育課程
三 高校入試改革と学園紛争
高校入試改革と東京都の学校群制度
学園紛争
四 学校教育の拡充整備の提言(四六答申)
中央教育審議会の画期的な提言
中央教育審議会中間報告への対応
実現されなかった「四六答申」
第四章 国民的教育機関としての高等学校
一 昭和五〇年代の深刻な教育課題
九〇パーセントを突破した高校進学率
いじめ・不登校などの教育問題
様々な教育論
二 大学入試の改善
旧学校制度における入学試験
進学適性検査
能研テスト
大学入学者選抜方法の改善要求
共通第一次学力試験
三 ゆとりと充実
量的拡大への対応に追われた高校教育
高校教育の再編成
ゆとりと充実をめざした学習指導要領
総合科目の新設
学習指導要領の基準の弾力化
習熟度別学級編制
教育課程の編成
学習指導要領への対応と評価
四 大学入試センター試験
不評だった共通一次試験
学習指導要領の改訂と共通一次試験
共通一次試験の再検討
共通一次試験に代わる新テスト
試験日程・受験機会の複数化・私立大学の参加が争点
大学入試センター試験
第五章 社会の変化に対応した高校教育
一 臨時教育審議会
臨時教育審議会の発足
臨時教育審議会の審議
教育改革に関する第一次答申
教育改革に関する第二次答申
教育改革に関する第三次答申
教育改革に関する第四次(最終)答申
臨時教育審議会後の動き
二 ゆたかな心の育成と個性を生かす教育
臨時教育審議会に対抗して発足した教育課程審議会
高校社会科の再編成
家庭科の男女共修
全国高等学校長協会の教育課程審議会への対応
平成元年版『高等学校学習指導要領』
国旗・国歌について
職員会議の位置づけと評議員制度
全国高等学校長協会の学習指導要領への対応
第六章 二一世紀を展望した教育の改革
一 新しい時代に対応した教育諸制度の改革
第一四期中央教育審議会
中教審の学校教育制度に関する小委員会の審議
総合的学科(総合学科)
学校週五日制
教育上の例外措置
高校入試の改革
二 生きる力とゆとり
第一五期中央教育審議会
相次いで設置された調査研究協力者会議
全国普通科高等学校長会の提言「新しい高校像を求めて」
教育課程審議会
平成一一年版『高等学校学習指導要領』
総合的な学習の時間
『学習指導要領』の一部改訂
中高一貫教育
三 急テンポの高校教育改革
地方教育行政の見直し
東京都の教育改革
あとがき
著者略歴
[出版社からのコメント]
コロナ禍に教育環境は大きな変革を迫られていますが、歴史を振り返ればこれまでにも時代や社会に応じて様々な問題が生まれ、問題解決に向けて努力が繰返されてきました。本書に描かれている高等学校教育の歴史が、多くの方にとって教育問題を考えるうえでの一助となれば嬉しく思います。
【著者略歴】
萱原 昌二(かやはら・しょうじ)
昭和一二年生まれ。香川県坂出市出身。東京教育大学文学部日本史専攻卒業。昭和三五年、東京都公立学校教諭となり、東京都教育庁人事部管理主事、東京都立白鷗高等学校長、筑波大学学校教育部教授兼附属桐が丘養護学校長を経て、拓殖大学政経学部教授。
この間、東京都公立高等学校長協会長、全国歴史教育研究協議会会長、全国高等学校長協会常務理事、全国高等学校長協会五十年史編集委員長などを歴任。
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