本当に小津安二郎を見たいなら無声映画(サイレント)を観よー名作『東京の合唱』『生れてはみたけれど』からその魅力を探る

(著) 高橋行徳

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作品詳細

[商品について]
―小津のサイレント映画を観ずして小津安二郎を語るなかれ―
『晩春』『麦秋』『東京物語』などの名作で知られる映画監督・小津安二郎。しかし、小津が生涯で撮った53本の映画のうち34本がサイレント映画であったことはあまり知られていない。本書では、その小津のサイレント映画の中から傑作と評価が高い『東京の合唱』と『生れてはみたけれど』の2作品に焦点をあて、戦後の名作だけでは語ることのできない映画監督・小津安二郎の魅力に迫っていく。邦画ファン、映画ファン必読の一冊。

[目次]
凡 例
「まえがき」に代えて
a.冷遇されてきた小津監督のサイレント映画
b.サイレント期と円熟期の相違
c.「それとは違う」小津論
d.なぜ『東京の合唱(こーらす)』と『生れてはみたけれど』を選んだのか?

第一部『東京の合唱(こーらす)』
第一章 映画の封切りまで
a.メロドラマで大失敗
b.悲劇も喜劇も達者な岡田時彦
c.野田高梧の助け
d.封切りは帝国劇場
第二章 『東京の合唱』のプロローグ
a.スラップスティック・コメディー
b.体操教師か、教練教師か
c.小津監督のギャグ
d.岡島の孤独
第三章 岡島家の日常生活
a.五人家族のサラリーマン
b.東京郊外の岡島家
c.岡島家の近辺
第四章 出勤前の光景
a.自転車をねだる長男
b.パパ・ママの呼称
c.ボーナス日に浮かれる家族
第五章 会社でのドタバタ・コメディー
a.ボーナスは社長室で
b.紙幣が便器の中に
c.「談判しないで、どうするってんだ!」
d.社長と平社員のバトル
e.「即刻、解雇する」
f.それぞれの社長への対応
第六章 失業の打ち明け
a.自転車がスケートに化けて
b.長男の反抗
c.「失業都市東京」
第七章 長女の入院
a.熊の脱走
b.美代子の病気
c.仲直りの遊び歌
第八章 先生は洋食屋の亭主に
a.岡島、職業紹介所へ
b.悲しい屁理屈(へりくつ)
c.街頭宣伝をめぐる駆け引き
第九章 インテリのビラ配り
a.「あんなパパがあるもんですか!」
b.妻の初めての愚痴
第十章 岡島家の再生
a.カレーライスで同窓会
b.吉報が舞い込んだけれど
第十一章 映画タイトルの謎
a.「東京」の入った最初の作品
b.「合唱」とは何か?

第二部『生れてはみたけれど――大人の見る絵本』
第一章 公開までに、ひと山もふた山もありまして
a.不二映画事件
b.トップ・スターを欠くなかで
第二章 郊外への引越し
a.三つのシナリオ
b.タイヤがぬかるみにはまって
c.酒屋の小僧は狂言回し
d.まずは引越し報告を
e.「黴菌(ばいきん)みたいな顔」といじめられて
f.死と再生のゲーム
第三章 父親と一緒の登校
a.吉井家の朝の情景
b.踏切
第四章 不登校の兄弟
a.原っぱでの早弁
b.あくびの連鎖
c.それぞれの習字の時間
d.父親の説教
第五章 学校での喧嘩
a.不登校を阻止する手立て
b.ガキ大将の攻勢
c.飼い犬の災難
第六章 良一がガキ大将に
a.酒屋の小僧との取り引き
b.亀吉の善行
c.二つの世界をつなぐ御用聞き
d.ガキ大将の地位が降ってきて
第七章 映写会
a.父親自慢
b.映写会へ参加できるのは
c.ライオンと縞馬(しまうま)
d.見せてはならぬショットが紛れ込んで
第八章 父親への反逆
a.初めての父親非難
b.「お父ちゃんの弱虫!」
c.本音を吐く父親
第九章 お辞儀の容認
a.良一、行軍の兵隊について行く
b.なぜ伏見版の終結部を変えたのか?
c.ハンガー・ストライキを決行
d.三度目の、父親との登校
第十章 映画を撮り終えてはみたけれど
a.大きな問題が残ったままで
b.作品のオクラ入り

参考文献
参考映像
あとがき
著者紹介

[担当からのコメント]
色も音もないサイレント映画ほど誤魔化しのきかない映像表現はないかも知れません。その意味で本書のテーマとなっている小津安二郎は、まさに映像の魔術師としてサイレント映画を極めた存在でした。ぜひ本書を通じて、その魅力を知っていただければ嬉しく思います。

[著者紹介]
高橋行徳(たかはし ゆきのり)

一九四七年兵庫県生まれ。七七年早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。
二〇一六年三月まで日本女子大学文化学科で教鞭をとる。日本女子大学名誉教授。

著書に『開いた形式としてのカフカ文学』(鳥影社)、『向田邦子「冬の運動会」を読む』(鳥影社)、『向田邦子、性を問う――「阿修羅のごとく」を読む』(いそっぷ社)。
翻訳にフォルカー・クロッツ『閉じた戯曲 開いた戯曲』共訳(早稲田大学出版部)。他に『タウリスのイフィゲーニエ』試論(日本ゲーテ協会会長賞)、溝口健二『祇園の姉妹』――男性社会に反逆する芸者(『アジア遊学』一一八号)、向田邦子『家族熱』ノート(『ユリイカ』二〇一二年五月号)、『精選女性随筆集第十一巻 向田邦子』解説(文藝春秋)、ドラマ『あ・うん』の一考察(『向田邦子文学論』向田邦子研究会編 新典社)など。

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