未来を拓くあなたへ:「共に生きる社会」を考えるための10章
(著) 田巻松雄
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―憶見を排し多角的な視点で人と社会を見つめる。社会学を学べば、それができる―
様々な生活状況と価値観を持っている人々が「共に生きる」ということは、いったいどういうことだろうか。本書は、この本質的な問いかけを内包する社会学という学問について、マイノリティや社会的弱者をテーマに研究を進めてきた著者が、どのような視点・発想・問題意識で現実の問題に向き合うかを、自身の研究の足跡を総体的に振り返りながら鳥瞰した論考集である。資本主義や権力の論理に対する問題意識としての「周辺からの思考」をはじめ、人間と社会を考える力を身につけるうえで示唆に富む内容となっている。
[目次]
はじめに
Ⅰ 人間と社会について考える力
第1章 問題意識を振り返る
問題の所在
1 博士論文執筆までの経過
2 フィリピンからホームレス・寄せ場へ
3 フィリピン研究において何が問題であったか
4 自分への関心
5 現代の貧困問題と自分の原点
6 より鮮明な問題意識の構築に向けて
第2章 寄せ場を起点とする社会学の射程―「中央」と「周辺」および「勤勉」と「怠け」をキーワードにして―
問題の所在
1 基本的視角―「中央」の論理と「周辺」からの思考
2 「中央」の論理と「周辺」としての寄せ場
3 「常識」と差別
4 「怠け」の意義・重要性と「勤勉」の問題性
第3章 ボランティアという行為―ホームレス支援の経験から
1 「近く」て「遠い」ホームレス問題
2 問題意識の原点
3 支援が目指すもの
4 支援の楽しさ
5 「市民」に対する意識の問題
6 被支援者の「美化」と「主人化」
Ⅱ 社会問題と向き合う
第4章 日本におけるホームレス問題
はじめに―世界に遍在する問題
1 ホームレス人口の規模及び構成―「狭い定義」による把握
2 ホームレス増大の背景
3 路上生活の厳しさ
4 ホームレスの社会問題化―東京・新宿駅をめぐる攻防
5 ホームレス問題のポリティクス
おわりに―排除と「個人化の原理」に向き合う
第5章 日本の災害関連援助―フィリピン・ピナトゥボ火山噴火災害を事例に
1 なぜピナトゥボ火山噴火災害を選んだのか
2 ピナトゥボ関連ODAの特徴
3 0DAの発掘案件と最終案件
4 有償資金協力(商品借款)における透明性の不足
5 官と民の協力・連携
6 全体としてのビジョン
第6章 夕張は何を語るか
はじめに―「石炭の街」夕張
1 国策としての石炭産業
2 石炭産業斜陽化のなかの夕張
3 閉山跡処理問題
4 観光開発の性格と課題
5 財政破綻の背景と教訓
第7章 日本における外国人労働者―韓国との比較を通して
1 東アジアにおける外国人労働者問題をみる目
2 日本における外国人労働者政策
3 韓国における外国人労働者政策
4 2000年代の政策とその背景
5 まとめと今後の展望
Ⅲ 多文化共生社会を目指すために
第8章 共生という言葉の使われ方・使い方
1 多文化共生という言葉の出現
2 多文化共生と共生をめぐる議論
3 多文化共生と共生を考えるための論点
第9章 外国にルーツがある子どもたちの高校進学問題
1 外国人生徒の高校進学率の低さ
2 特別枠と特別措置
3 栃木県における6回目の外国人生徒進路調査結果
4 まとめと今後の展望
第10章 宇都宮大学国際学部の実践―HANDSと外国人生徒入試
1 外国人生徒入試開始!
2 外国人生徒の進学問題に関する問題意識
3 宇都宮大学国際学部とHANDS
4 進路保障
5 大学での進路保障に向けて
6 Small is Beautifulの精神を活かして
参考文献
初出一覧
おわりに
〈著者紹介〉
[担当からのコメント]
社会学という学問は教科書を学べば修めることができるという類の学問ではなく、常に「行動」することが必要な学問であると思います。社会に生起する問題への意識を持ち、社会科学的にどう見つめ、誰に問いかけるかを考え、そして(おそらく)フィールドに出たときに初めて、その人の「社会学」は始まります。本書はそんな貴方の「社会学」をサポートしてくれる、そんな作品となっています。ぜひご一読ください。
〈著者紹介〉
田巻松雄(たまき・まつお)
北海道夕張市生まれ。1996年より宇都宮大学国際学部に勤務。2013年より国際学部長。地域社会論、国際社会論などを担当。著書として、『夕張は何を語るか 炭鉱の歴史と人々の暮らし』(編、夕張の歴史と文化を学ぶ会協力)吉田書店、2013年、『地域のグローバル化にどのように向き合うか―外国人児童生徒教育問題を中心に―』下野新聞社、2014年、『越境するペルー人 外国人労働者、日本で成長した若者、「帰国」した子どもたち』(編)、下野新聞社、2015年、『ある外国人の日本での20年―外国人児童生徒から「不法滞在者」へ』下野新聞社、2019年、等。
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