広島藩の地域形成:財政、産業、流通、医療からみる領有制の特質
(著) 土井作治
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―広島藩の領有制の特質を解明する―
国是の違いともなって顕れる藩国家の特質は、その形成過程を視野に入れて検証しなければならない。本書では、広島藩の領有制のあり方を念頭に、藩領内の地域的な特質を検証し、それぞれの領域がいかにして創生され、個有な地域として展開されるかについて、領有制の基礎となる「太閤」検地と城下町の形成、宝暦・天明期の藩政改革、製鉄・牡蠣・扱苧に見る生産流通とその統制・市場問題、領域住民の生活・環境を規定する医療制を取り上げ、広島藩の領域支配のもとで、領民の生産・流通・生活・文化意識など、それぞれが創生・定着・発展の各段階をへて固有な地域形成をなしとげた軌跡について解明しようと試みる。
[目次]
はしがき
第一章 広島藩の検地と城下町
一 検地と貢租
1 毛利氏の検地と貢租
2 福島氏の検地と貢租
3 浅野氏の地詰と地概し
二 広島城下町の形成と町組
はじめに
1 町組の形成過程
2 町人役の負担
三 町人町の支配と町構成
1 町役人制と自治
2 町人の町構成と機能
第二章 財政改革と国益政策
一 宝暦改革と大坂市場
1 一八世紀前半の藩財政
2 宝暦改革の内容
3 大坂市場との対抗
二 藩財政の収支記録
1 「古今増減秘録」の性格
2 藩米収支の状況
3 金銀貨収支の状況
4 藩借銀の性格
三 一八世紀後半国益政策の実施
1 宝暦・天明期の国益政策
2 化政期の国益政策と開地
3 国産奨励
4 国産自給論と「他国金銀出入約メ」
5 「大坂置為替」の仕法
第三章 近世の鉄山経営と鉄穴流し
一 藩営鉄山の形成
はじめに
1 広島藩の鉄山政策
2 鉄の藩専売統制
3 藩営鉄山の成立と構造
二 江川流域の鉄穴分布と藩営鉄山の鉄穴経営
はじめに
1 江川流域の採鉱地分布
2 鉄穴経営の諸形態
3 藩営下山県郡口筋の鉄穴経営
三 東城川流域の近世鉄山と鉄穴流し
1 近世鉄山の系譜
2 鉄山経営と流通
3 鉄穴流しの特徴
第四章 芸備国産と交通の開発
一 広島牡蠣と大坂市場
はじめに
1 広島牡蠣仲間の成立
2 大坂表の販売形態
3 国益政策と大坂牡蠣商事
二 扱苧専売制と太田騒動
はじめに
1 麻苧の生産と流通
2 専売統制と反対闘争
三 芸北中山駅と石見路
1 領域市場の形成
2 中山駅の成立とその機能
3 流通機構の変化
四 安芸太田川の艜船開発
はじめに
1 太田川艜船の開拓
2 船改めと通船仕法
3 幕末期の艜船輸送
五 瀬戸内の廻船と地域市場
1 瀬戸内の人口増加
2 産業開発と商品生産
3 廻船業と地域市場
第五章 藩の医療制と地域医療
一 広島藩の医療制
1 藩登用の医師群
2 町・在村医の医事組織
二 地域(在村医)の医療
1 芸北地域の医療活動
2 大朝村保生堂の医師たち
3 診療記録「回生録」の特徴
初出一覧
あとがき
[出版社からのコメント]
藩という一つの地域国家が支配体制を確立し運営されたその経緯・歴史は、幕藩体制が終焉を迎える幕末期になって現況に対処する国是の違いとなって顕れたのだとすれば、私たちは今も尚、旧体制の歴史の中に学ぶべきものを多く見いだせるように思います。地域研究はもちろん、現代にも通ずる諸問題を考察するうえでも示唆に富む内容となっています。
[著者プロフィール]
土井 作治(どい・さくじ)
1930年 岡山県生まれ
1954年 広島大学文学部卒業
1986年 広島大学より文学博士号を授与
現 在 岡山商科大学名誉教授 文学博士
主 著
『広島県史』近世1・2(共著、1981・84年)
『幕藩制国家の展開』(溪水社、1985年)
『吉備と山陽道』(街道の日本史)(共著、吉川弘文館、2004年)
『広島藩』(日本歴史叢書71)(吉川弘文館、2015年)
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