小説 薔薇雨1960年6月 : 樺美智子との出会い・共闘・論争そして訣別
(著) 手塚英男
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―その時、わたしは雪崩を起こす最初の小さな雪塊になりたいわ―
国会わきの街路に座りこんだ学生デモ隊は旗とプラカードと大群衆の熱気に包まれ、その私たちの眼前には雨の夜に照らされた国会と、鉄柵の向こうにずらりと並んだ機動隊の姿があった。1960年6月15日。新日米安保条約成立を阻止すべく怒りに震えたデモ隊が怒涛の如く国会に押し寄せ、60年安保闘争がひとつの臨界点を迎えようとしていたあの日を、いまも私は思い出す。ともに革命を語った友人であり、あのデモの中で命を落とした樺美智子の、その最後の姿と共にーー全学連のデモやセツルメント活動に邁進し、やがてその見通しのない熱狂に危うさを感じて袂を分かつまで日々を、樺美智子との出会いと別れと共に描いた自伝的小説。
[目次]
『薔薇雨』再刊に寄せて
電子書籍版 『薔薇(ばらう) 1960年6月』発刊に当たって
薔薇雨(ばらう) 1960年6月
あとがき――単行本化にあたって
著者略歴
[担当からのコメント]
かつて国会から遠く離れたところからも地響きが聞こえたというほど日本を熱狂の渦に巻き込んだ学生運動は、今や学生や若者にとって教科書の中の出来事になりつつあります。なぜ学生たちはバリケードへと向かったのか、そこには単に日米安保条約やベトナム戦争といった言葉では測ることのできない「何か」があったのだろうと思います。本書が、その「何か」を感じるためのよすがとなれば嬉しく思います。
[著者略歴]
手塚 英男(てづか・ひでお)
1939年、信州・松本に生まれる。
1957年・東京大学文科Ⅱ類に入学。セツルメント活動に参加、また故・樺美智子らとともに学生運動に足繁く通う。57年砂川基地拡張反対闘争~60年安保闘争をたたかう。
1962年教育学部(社会教育専攻)卒業後、郷里の松本市で教育委員会職員となり、公民館など現場の社会教育活動に従事。地域の青年・女性・高齢者の学習・文化・スポーツ運動や読書会活動を支援。あがたの森文化会館、勤労青少年ホーム、総合社会福祉センター、なんなんひろば・中央図書館・市立博物館などで館長を勤め、98年退職。
その間、「信州年寄り通信」(信州の高齢者のつづり方文集全35集)を主宰・発行。
退職後は一市民として、市が進める大型ハコモノ事業や平成の合併に反対する住民運動、市民の財政白書づくりに取り組む。
主な著・編著に『学習・文化・ボランティアのまちづくり』『65歳からのいきいきにんげん宣言』『みや子・みとしの昔語り』『長野県公民館活動史』『松本市公民館活動史』『松本市青年団運動史』『奉安殿という呪縛』など。歌集『大樹の杜』『豪雨の杜』、障がい者詩集『ねむの木』、絵本『お山に春がやってきた』、紙芝居『三月の陽だまり――図書館ホームレス物語』『ぼくらは開智国民学校一年生』(戦時下の国民学校を描いた作品。紙芝居じじをやっています)。これまでの紙・誌への発表レポートを収録した『信州・松本――社会教育職員の仕事 復刻手塚英男の実践レポート』(全13集 現在8集まで発行)。個人通信『東々寓(とんとんぐう)だより』を発信中(既刊64号)。
同時代社から中短篇小説集『酔十夢』(全2巻)、ブックレット『日本老民考』(全6集)を発刊。
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