尊氏と足利氏を見つめなおす――古文書・古典籍から知るその時代、信仰、そして文化
(著) 千田孝明
Amazon作品詳細
[商品について]
――足利尊氏が逆賊として公に喧伝されるようになった書物は、次のどれでしょうか。
1.太平記、2.大日本史、3.日本外史
正解は本書「足利尊氏の世界」をご覧ください。
戦前の皇国史観による尊氏逆賊説の影響もあって、これまで足利尊氏や足利一族への関心はあまり高いものではなかった。しかし近年は足利氏や尊氏に関する研究も大いに進展し、それまであった陰のイメージは払拭されつつある。本書では、足利氏の生きた時代や文書研究に携わってきた著者のこれまでの成果として、尊氏が一時代を築くこととなったその背景やその人間像を描き出し、尊氏を生んだ足利家の歴史を様々な史料から辿っていく。豊穣な足利氏の世界に光を当てる、歴史ファン必見の一書。
[目次]
──足利尊氏と足利氏の世界──
足利氏の歴史 ―尊氏を生んだ世界―
プロローグ――尊氏を生んだ世界への誘い
八幡太郎義家の登場
源義国と足利荘のおこり
足利義康と新田義重
義 兼
義 氏――足利氏の飛躍
泰 氏
頼 氏
不遇の自決をした家時
貞 氏
高氏(たかうじ)の登場
尊氏の想い
足利尊氏発給文書に関する覚書 ―原本による御内書の再検討を中心に―
尊氏の文書をみつめなおす
疑問視されていた五通の尊氏文書
五通の尊氏文書の再検討
尊氏がはじめた御内書
同じ右筆の尊氏御内書
なぜ「御内書」なのか
足利尊氏の世界
南北朝正閏論(せいじゅんろん)と足利尊氏
尊氏を生んだ足利氏の歴史
武人――尊氏
政治家――尊氏
人間――尊氏
尊氏と足利の荘
足利氏と鑁阿寺
足利氏の氏寺(うじでら)――鑁阿寺
足利氏と足利荘のおこり――鑁阿寺前史
有力御家人足利義兼
足利義兼の仏教作善(さぜん)
義兼の足利における造寺・造仏活動と鑁阿寺の草創
鎌倉期の足利氏と鑁阿寺
尊氏以後の足利氏と鑁阿寺
大いなる足利氏の文化遺産――鑁阿寺
足利樺崎寺赤御堂考
樺崎寺の浄土とは
樺崎寺と赤御堂
阿弥陀法を修していた赤御堂
三尺七寸厨子(ずし)入り金剛界大日并三十七尊形像と赤御堂
理真上人朗安・法円坊隆験と足利義兼
密教浄土信仰の寺――樺崎寺
足利学校と足利氏
足利学校と鑁阿寺
足利義兼の素意
学問所としての鑁阿寺
複合施設としての視点
付編
主要参考文献
あとがき
──足利成氏花押研究ノート── ─那須文書を中心として─
はじめに
一 那須文書中の成氏文書における成氏署判の分類
二 足利様の花押と足利成氏の花押
三 足利成氏の花押変遷からみた時期比定
おわりに
──足利尊氏宿願の開版刊記がある大般若経について── ─いわゆる「智感版大般若経」をめぐって─
はじめに
一 常楽寺蔵の版本大般若経 ~足利尊氏開版刊記の確認~
二 智感勧進による版本大般若経の雕造事業
三 宮内庁書陵部所蔵松平定信蒐集大般若経 ~足利義詮・基氏の開版刊記と、基氏の署判がある大般若経~
四 足利尊氏宿願開版刊記の検証 ~義詮・基氏の刊記もあわせて~
おわりに
──新出の足利氏満宿願開版刊記のある 智感版大般若経について──
はじめに
一 新出の「智感版」二巻
二 「智感版」の摺��写版行と、足利尊氏・氏満の宿願刊記
おわりに
[著者略歴]
[担当からのコメント]
源頼朝や徳川家康に比べると印象が薄い足利尊氏ですが、室町幕府や足利氏が歴史上で果たした役割は決して小さなものではありません。複雑な時代背景を解きほぐしながら真実に近づいていくのが歴史の醍醐味であるとすれば、尊氏の生きた時代ほどこの醍醐味が味わえる時代はないかも知れません。本書を通じて、尊氏と足利氏の奥深い世界をお楽しみいただければ嬉しく思います。
[著者略歴]
千田 孝明(ちだ こうみょう)
[略 歴]
1953年、栃木県日光市生まれ。
1976年、東北大学文学部史学科卒業。
2009年、栃木県立博物館技幹兼人文課長退職。
現 在 日光市天台宗観音寺住職。
栃木県立博物館名誉学芸員。
栃木県文化財保護審議会委員。
主要著書・論文
『図説 栃木県の歴史』(共著・河出書房新書)1993年。『栃木県の歴史』(共著・山川出版社)1998年。『知られざる下野の中世』(編著・随想舎)2005年。『人物でみる栃木の歴史』(共著・随想舎)2011年。「日光山をめぐる宗教世界」(『中世東国の世界1 北関東』高志書院)2003年。「日光山常行堂小史」(『日光 その歴史と宗教』春秋社)2011年、ほか。
新刊情報