実篤、夢の共鳴(レゾナンス)――100年目の理想郷(ユートピア):「新しき村」と武者小路文学の地平

(著) 南邦和

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作品詳細

[商品について]
―この道より我を生かす道なしこの道を歩く―
それが新しき村/人間の誠意が生きる処/人間の真価が通用する処/その他のものが通用しない処/それが新しき村である
文学者・武者小路実篤が理想郷として作り上げた「新しき村」。紆余曲折を経て誕生したこの村は、いま何処に向かおうとしているのか。100年という時間の中で浮き彫りになった「人類平和共生」の理想と現実を、実篤の文学と人生、そして村の盛衰と共に記録した渾身のルポルタージュ。

[目次]
第一章〈新しき村〉誕生への道
一、念願の土地へ――日向への道
小説『土地』
全国行脚しつつ日向の地へ
土地探し
二、木城村石河内字城――津江市作との出会い
西都原から茶臼原へ
〝願いは天に通じた〟――津江市作という人
〝城の地〟と出合う
二転、三転の末に
三、〈新しき村〉の構想――夢からの啓示
夢の話
「新しき村の精神」
〝生命を生かす〟――真人主義
四、〈新しき村〉誕生
土地登記完了
〝村づくり〟
第二章〝稀有の人〟武者小路実篤 ――その出自から『白樺』創刊の時代
一、出自――幼少年期
子爵の末子の生まれだが
叔父・勘解由小路資承
兄と弟
二、姉の死と志賀直哉との友情――青年時代
姉の結婚と死
お貞さんという人
志賀直哉との出会い
「十四日会」の結成
三、「白樺」創刊と〈大逆事件〉
『お目出たき人』
「白樺」創刊
大逆事件と文学者たち
四、〈パンの会〉と「白樺」――明治後期の文学動向
明治文学と実篤
「パンの会」のこと
野田宇太郎著『日本耽美派の誕生』
五、竹尾房子と実篤――「世間知らず」の背景
竹尾房子との出会い
房子という女(ひと)
母と子と房子と
第三章〈新しき村〉の建設――〝ゴタゴタ〟をかかえて
一、〈村〉の財政と村人たち
実篤の収入に支えられた〈村〉の財政
創作の充実と第二の村の建設
周作人の来村と村の活動の広がり
二、錯綜する人間模様
実篤の意気軒昂
〝ゴタゴタ〟と房子
三、房子と安子と実篤――〈関東大震災〉前後
『武者小路房子の場合』
〝恋する女〟
実篤と安子
四、大正という時代と宮崎
米騒動と「県外通電反対」運動
関東大震災と日豊本線全通
第四章二つの村・二人の村――〈日向〉から〈東の村〉へ
一、実篤のいない村――実篤の〝離村〟と村の〝自活〟の活動
〈村〉の隆盛
実篤の〝離村〟
村の10周年祭――実篤の〝怪気炎〟と〝金策〟
〝自活〟へ
二、正雄・房子の帰村と県営発電所問題
川島伝吉と野井十
杉山正雄・房子の帰村
実篤の欧州旅行
県営発電所問題
三、〈日向〉から〈東の村〉へ
〈東の村〉の開村
〈東の村〉と実篤
四、二人だけの村――杉山と房子の〝戦争〟
昭和前期の宮崎
「八紘一宇」の塔建設
戦時下の〝二人だけの村〟
第五章〈武者小路文学〉その流域と沃野――〝人道主義〟の射程
一、〈武者小路文学〉の流域――小説から詩・戯曲・狂言まで
第一期
第二期
第三期
第四期
第五期
実篤の死と周辺
二、〈武者小路文学〉への評価――同時代人からドナルド・キーンまで
『お目出たき人』論争
演劇人・実篤
漱石・龍之介と実篤
実篤文学の沃野
ドナルド・キーンの「白樺派」論
三、実篤と〝出会った〟ころ――我が文学人生の〝青春の勲章〟
最高裁判所書記官研修所「本郷分室」
豪華な講師陣容
文芸誌題字を書いてもらう
第六章二人だけの村――杉山正雄と房子の生と死
一、二つの〈村〉の戦後
実篤十三年ぶりの新しき村
〈東の村〉の戦中から戦後
〝二人の村〟の戦中から戦後
二、「此処は新しき村誕生の地なり」――昭和50年の〈新しき村〉
宮崎の自然を守る会〝自然教室〟
峠を越えると風景は一変した
初めての〝新しき村〟
杉山氏と対面する
〝村〟産のひとつつみの柿
三、二人の最後――〝ひとつの時代〟の終焉
杉山と吉田
杉山氏の最期
一人残されて
房子の最期
追悼杉山正雄
第七章百年目の〈村〉――二つの村の〝現在〟を訪ねる
一、〈理想郷(ユートピア)〉は、いま――百年目の〈日向新しき村〉
前坂で
松田省吾氏との再会
〈村〉の空気をとじこめた「記念館」
〈遺跡〉探し
「新しき村誕生の地なり」
二、〈新しき村〉はいま――〈東の村〉から
毛呂山(もろやま)の地
ここには〝生活〟がある
〝養鶏日本一〟の栄光も
〝友情〟都市
三、「仙川の家」と武者小路実篤記念館
実篤公園と実篤邸
『或る男』から『一人の男』へ
四、〈新しき村〉と宮崎――〝出窓〟の役割
五、百年目の〈村〉からの伝言
【参考文献】
あとがき――八十五歳の夏に
著者略歴

[担当からのコメント]
新しき村の掲げる理想を見て、それに賛同しない人はあまりいないでしょう。それでも人口は減り残された村人は高齢化し、存亡の危機を迎えているこの現実をどの様に考えるべきなのでしょうか。実篤の建設した理想郷は単なる実験場に過ぎなかったのか、それともこれから大きく芽吹こうとする沃野なのか、ぜひ本書の中でその答えを見つけていただければ嬉しく思います。

[著者略歴]
南 邦和(みなみ くにかず)

1933年(昭和8)朝鮮半島で生まれる。日本敗戦後、日南市に引き揚げる。その後、国家公務員(裁判所職員)として、東京・大阪・横浜・鹿児島・宮崎で勤務。現在は宮崎市在住。
『円陣パス』『都市の記憶』『原郷』『メニエール氏』『ゲルニカ』『神話』などの詩集の他、自伝的評論集『故郷と原郷』、エッセイ集『南国のパンセ』『宮崎ふるさと紀行』『百済王はどこからきたか』、放送対話集『宮崎1968~1972』、学習マンガ『宮崎平野の歴史』、戯曲『キキのゆくえ』など著書多数。

〈受賞〉宮日出版文化賞、日本国際詩人協会賞、宮崎県文化賞

現在、日本ペンクラブ名誉会員、日本現代詩人会会員、日本国際詩人協会会員

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