境界神テルミヌスと寄り添いのアーティストたち

(著) 横川善正

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作品詳細

[商品について]
――瀬戸内の直島にあり、建築家・安藤忠雄の設計で知られる「南寺」。この敷地にはかつて禅寺があり、その後ある施設となっていました。それは次のどれでしょうか。
1.教会、2.病院、3.学校
正解は本書「第五章 もうひとりのアーティスト、もうひとつのアート」をご覧ください。
死あるいは無へと向かう場であるホスピスは、同時に創造または始まりの横溢する場でもある。死を自覚した者が有意義な生を全うしようとすること、それこそがアートであり、ホスピスとは「終わり」が「始まり」に転換するターミナル・アートの場である――。医療や福祉、農業など様々な分野に現れはじめたアートが生まれる「終わり」と「始まり」に目を向け、新時代のケアとアートのあり方とその本質を問う思考の書。

[目次]
序 章 テルミヌスの庭はどこに
第一章 ターミナル・アートの時代
モノからケアへ
終わりを受け入れるアート
「もてなし」のアートとケア
近代の忘れ物
外に出た「家」と新しいユートピア
境界神テルミヌスの復活
過渡を生きる「寄り添いびと」
「ターム」の境界線
まずは一本、線を引いてみよう
新しい時間をつくるところ
第二章 医術はかつて美術であった
美と医の地霊
ケアの時代のアーティスト
「絶対美感」
アーティストよホスピスにゆこう
田んぼのみえる緩和ケア病棟
医の感性は目と手とこころで磨かれる
そのとき息を重ねるひとがいて欲しい
痛みが創造に転じるために
こころのなかの制度がつくる「弱者」
デザインの原点にあったもの
制約を引き受ける才能
生き甲斐から死に甲斐の世代へ
いのちをもらい、つくるところ
第三章 開かれる「終の住処」――英国の福祉とコミュニティの力
羊の群れと監視カメラの数
ウィンチェスターの「もてなしの館」
ユーモアはこころの点滴
「フェア」であることの歓び
マラソンランナー、ハリエット女医
風鈴の鳴る庭――なぜ「また会いましょう」が言えなかったのか
「良医」は辺境に
芸術教育の現場としてのホスピス
再生のコミュニティ
補い創る治療――O・TからC・Tへ
最後まで触れていたいもの――子供のホスピスの未来
第四章 突き抜けるアート――障害者の自立へ、あるデザイナーの挑戦
アウト&イン
ロスト・イズ・ゲイン
「アトリエ・インカーブ」――新しい芸術の発信基地
限られた時間
ありのままのココロがカタチになったアート
開きながら閉じる、テルミヌスの極意
すき好んで障害者になったのではない
永遠の無垢とオリジナリティ
抗弁できない才能
感動のそばにあるもの
究極のコミュニケーター
第五章 もうひとりのアーティスト、もうひとつのアート
空港のターミナルから
本物と「本物もどき」のあいだ
坑道のカナリヤ
ボランティアというアーティスト
橋を架けるひと、渡るひと
限界と協働のエクスタシー
もう一つの境界、遊びの掟
ホスピス・ミュージアム、直島の「南寺」
モランディの静寂、カルシュームに還る
「コウゲイ」セラピー
「芸農連携」、アートはアグリから
これからのアーティストたち
第六章 世も末だというまえに
納得のゆく境界線を引いてみる
かたちは、あきらめたとき見えてくる
無垢の恢復、患者が子供に返るとき
人生という「作品」の仕上げに向けて
本番直前のリハーサル
自然の「告知」に耳を澄ませて
「メメント・アルス」(アートを忘れない)
参考文献
あとがき
著者略歴

[担当からのコメント]
一見すると全くの別物と思えるアートと福祉ですが、その本質を探っていくと次第にその姿は重なり合いを見せるようになります。いかなる人間も無関心ではいられない生と死、それらを最も鮮やかに捉えるプリミティブ・アートの世界は、閉塞する現代社会に新たな力をもたらすのではないかと思います。アート、福祉、どちらかに少しでも関心のある方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。

[著者略歴]
横川 善正(よこがわ よしまさ)

1949年生まれ。石川県金沢市生まれ。
金沢美術工芸大学名誉教授(英国文芸・デザイン史)、公立小松大学副学長。

主な著書:
『ティールームの誕生──〈美覚(びかく)〉のデザイナーたち』(平凡社)
『マッキントッシュ、建築家として・芸術家として』(訳、鹿島出版会)
『マッキントッシュ──インテリア・アーティスト』(訳、芳賀書店)
『スコットランド 石と水の国』(岩波書店)
『誰も知らないイタリアの小さなホスピス』(岩波書店)
『ホスピスが美術館になる日──ケアの時代とアートの未来』(ミネルヴァ書房)
『ホスピスからの贈り物──イタリア発、アートとケアの物語』(ちくま新書)
『スコットランドを知っていますか:英国の影に埋もれた「石と水の国」の生き方とその魅力、教えます』(22世紀アート)
『いのちをもらい、いのちをつくるホスピス:イタリアの終末介護のパイオニアたち』(22世紀アート)

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