写真でのんびり旅気分──若狭・近江・東京本郷

(著) 高橋昇一

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作品詳細

[商品について]
ー写真から旅の香りがするー
苔むした渓流を流れる滝の音。古寺に漂う悠久の時。眩しいほどに赤く色づいた紅葉の神秘ーー。日本人の心の琴線に触れる旅風景が、ここにある。
本書は、由緒ある寺や庭園が集まる若狭・近江、そして多くの文化、芸術が今も街を彩る東京本郷の鮮やかな景色を収めた写真紀行である。眺めているだけで、日本の歴史と文化を全身で感じられる1冊。

[目次]
※若狭古寺巡礼
瓜割名水公園、天徳寺、多田寺、国分寺、萬徳寺、
明通寺、鵜ノ瀬、妙楽寺、円照寺、羽賀寺、徳賞寺
国吉城資料館
※近江古寺巡礼
湖東三山→金剛輪寺、西明寺、百済寺
湖南三山→常楽寺、長寿寺、善水寺
教林坊、観音正寺、西應寺、大池寺、永源寺
※本郷界隈散策
湯島天神、無縁坂、東大構内(本郷・弥生)、
根津権現

[担当からのコメント]
日本の歴史や文化を感じさせる美しい景色がいくつも収められた本作。その写真をじっくりと眺めて味わうのもいいですが、中には著者による各地の見どころや寺の解説なども記されています。若狭、近江、東京本郷を訪れる際のガイドとしても活躍すること間違いなしの1冊です。

[書評]
過去と現在が交差する場所

寺社仏閣めぐりから文学の舞台へ

なぜ人は先進的な町並みよりも、ノスタルジックなものに興味をかきたてられるのか。

ノスタルジックな典型例が寺社仏閣かもしれない。「寺社仏閣めぐりが好き」というと、信仰心や歴史への興味がその背景にあると思いがちだ。しかし、私たちが楽しんでいるのは宗教や歴史なのだろうか。旅情とは何か。寺社仏閣を訪れると心が落ち着くのはなぜなのか。

本書はページをめくるたびに、そんなことに思いをはせたくなる。

寺社仏閣めぐりと山登りは似ている
「この道をたどれば寺があるからではなく、寺があるからこそこの道をたどるのである」
 この言葉には寺社仏閣めぐりの魅力が込められています。なぜ寺社仏閣に行くと、私たちは心が落ち着くのでしょうか。苔むした岩や木の根。岩の割れ目から湧き出す水。静謐な寺の雰囲気。こうしたものが私たちを癒やしてくれるからでしょうか。
「ひとたび本堂にぬかずけば、懐はおおらかに懐を広げ、額に汗する人たちの心を慈しみ、深く迎えてくれる。人々はその慈愛を求め踏みしめる一歩一歩に願いを込め、石段を登る。」
 俗物根性から離れ、ただ、そこにたどり着きたいから登る。この感覚は山登りにも似ているかもしれません。特別な感情は、五感を解放し、自然に触れ、歴史や文化と触れることからはじまるといえるでしょう。
往時に思いを馳せることは内なる旅でもある
 本書の前半では、若狭と近江の山寺の写真が掲載されています。
 若狭と近江は、かつて日本の歴史的な交流と文化の拠点だった地域です。塩や海産物などの豊富な食材を都(京都)に運ぶ街道があった場所として知られる若狭は、商業的にも文化的にも先進的だったと言われています。
 とりわけ鯖街道と呼ばれる街道群は食材だけでなく、さまざまな物資や人、文化を運ぶ交流の道でした。現在も鯖街道沿いには、伝統的な町並みや豊かな自然、食や祭礼など様々な文化が息づいています。
 若狭よりさらに京都に近い近江は、古代から海外や日本海沿岸各地とつながる「海の道」と、都(京都)とつながる「陸の道」の結節点として栄えた港湾都市でした。都との交流を通じて建造された寺や神社、町並みは民俗文化財として、現代にも残っています。
 後半では、東京の本郷と湯島エリアが紹介されています。森鴎外の「雁」や夏目漱石の「三四郎」に登場する場所も紹介されています。
 前半と後半では撮影対象も場所も異なりますが、共通しているのは「ノスタルジー」です。過ぎ去った時間や時代、遠く離れた場所を懐かしく思う気持ち。
 私たちが先進的な町並みよりも、古風な町並みに心惹かれるのは、今は失われてしまったものに思いを馳せたいからなのでしょう。かつてそこで暮らしていた人を想像し、思いをたどることで、自らの内にある過去の経験に感情を重ねているのです。
 思い出と現在が交差する場所で、私達は心を落ち着かせ、自分自身を見つめ直しています。ぜひ本書を、内なる旅のお供にしてみてください。

文:筒井永英

[著者略歴]
高橋昇一(たかはし・しょういち)
1948年11月3日生(福井県)
1971年法政大学文学部卒業
2008年医薬品・日用品卸を経て海外向け眼鏡製造商社を退職
現在、三国写友クラブ所属
【出版】
書籍
2004年『清熱より創造へ』(東京図書出版)
2005年『惜しみなく時は奪う』(前進商会)
2015年『草枕』(文芸社)
写真集
2013年10月~2018年12月
①「捨恋苦」②「虞美人草」③「浜昼顔」④「三百六十五夜」⑤「曼珠沙華」⑥「唐獅子牡丹」⑦「南仏・スペイン」⑧「純情二重奏」⑨「東京大学」
電子書籍
2020年4月『南仏・スペインの旅』22世紀アート
2020年8月『アガペーの光』22世紀アート
2021年2月『随想ポートレート』22世紀アート
2022年7月『随想ポートレートⅡ』22世紀アート
2022年12月 電子書籍「南仏・スペインの旅」を全国書店流通本として発売(日興企画)

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