伝染病と闘った偉才ーー北里柴三郎と後藤新平:日本の医学・公衆衛生とふたりの絆
(著) 野村節三
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―先見の明をもって公衆衛生の向上に挑んだ二人の闘いは、今も続いている―
世界的な病原細菌の研究により近代の細菌学と免疫学の基礎を築いた細菌学者・北里柴三郎と、卓越した衛生行政によって伝染病の予防対策に貢献し、その後も近代日本の内政・外交に大きな足跡を残した政治家・後藤新平。生涯にわたる盟友であった二人は、コレラやペストなどの伝染病が蔓延して世界的な社会不安が生じていた明治から大正にかけての時代に何を思い、何を為したのか。日本の近代医学と公衆衛生の向上に大きく貢献した偉人たちの足跡を、幕末から昭和までの激動の時代とともに追った知られざる近代日本衛生史。
[目次]
まえがき
プロローグ
第一章 出生と幼少期
一 北里柴三郎の出生と幼少期
二 後藤新平の出生と幼少期
第二章 医学の修業
一 北里柴三郎の医学修業
二 後藤新平の医学修業
第三章 愛知病院・医学校と内務省衛生局
一 後藤新平の愛知病院・医学校時代
二 内務省衛生局時代 ―後藤・北里の出会い―
第四章 ドイツ留学と脚気論争
一 北里柴三郎のドイツ留学
二 破傷風菌とジフテリア菌の研究
三 ツベルクリン問題、天皇御下賜金と栄誉
四 後藤新平のドイツ留学
五 脚気論争
第五章 私立傳染病研究所の創立・移転とペスト調査
一 私立傳染病研究所の創立と土筆ヶ岡養生園の設立
二 私立傳染病研究所の移転
三 ペスト調査とペスト菌問題
第六章 相馬事件と後藤新平
一 相馬事件と後藤新平の関与
二 法医学・裁判化学的鑑定と後藤・片山論争
第七章 日清戦争と臨時陸軍検疫部、血清薬院と痘苗製造所
一 日清戦争と日清講和条約
二 臨時陸軍検疫部
三 血清薬院と痘苗製造所
第八章 台湾総督府
一 後藤新平の台湾総督府赴任
二 後藤新平の活躍
三 新渡戸稲造と高木友枝の活躍
四 後藤新平と斎藤實の親交、八田與一の活躍
第九章 私立傳染病研究所の国立移管・移転と北里門下の活躍
一 私立傳染病研究所の国立移管と再移転
二 北里柴三郎門下の活躍
第十章 日本薬局方と衛生試験法の沿革
一 日本薬局方の沿革
二 衛生試験法の沿革と長井長義の功績
第十一章 日露戦争と南満洲鉄道
一 日露戦争と日露講和条約
二 南満洲鉄道と満鉄総裁・後藤新平
第十二章 後藤新平の初入閣と国内外情勢
一 韓国統監府と朝鮮総督府
二 後藤新平の外交政策と初入閣
三 旅順工科学堂と南満医学堂の創立と変遷
四 伊藤博文暗殺事件と大逆事件
五 後藤新平の下野と清国・辛亥革命
第十三章 コッホの来日と北里柴三郎の渡欧米・満洲視察
一 コッホ夫妻の来日
二 北里柴三郎の渡欧米(国際会議出席)
三 北里柴三郎の満洲ペスト状況視察
四 両親・恩人の他界
第十四章 後藤新平の再入閣と国内外情勢
一 逓相兼鉄道院総裁・後藤新平と大正政変
二 第一次世界大戦と内相兼鉄道院総裁・後藤新平
三 ロシア革命とロシア内戦
四 シベリア出兵と外相・後藤新平
五 日露協会学校の創立と変遷
六 拓殖大学の沿革と運営
七 尼港事件
第十五章 内務省傳染病研究所の文部省移管
一 傳研文部省移管問題の経緯
二 内務省傳染病研究所員の総辞職
第十六章 北里研究所の創立とスペイン風邪の大流行
一 新研究所設立の経緯
二 北里研究所の創立
三 スペイン風邪の大流行
第十七章 慶大医学部の創設、衛生・医療事業と日本医師会
一 慶大医学部創設の経緯
二 慶大医学部の開学と進展
三 衛生・医療事業への参画
四 日本医師会の沿革
第十八章 後藤新平の東京市政と帝都復興計画
一 東京市政
二 日露(ソ)国交交渉
三 関東大震災とテロ事件
四 帝都復興計画と虎ノ門事件
第十九章 後藤新平の晩年と終焉
一 政治の倫理化運動
二 東京放送局の開局
三 少年團日本聯盟の発足
四 最後の満洲・ソ聯への旅と満洲某重大事件
五 後藤新平の終焉
第二十章 北里柴三郎の晩年と終焉
一 北里研究所と東大傳染病研究所との対立
二 北里柴三郎の政治への関与
三 微生物関連学会の沿革
四 伊豆・伊東町への寄与
五 公職辞任の慰留
六 北里柴三郎の終焉
第二十一章 北里柴三郎のエピソード
一 内務省衛生局時代
二 ドイツ留学時代
三 傳染病研究所・北里研究所時代
(一)報恩の精神
(二)人柄
(三)愛郷の精神
第二十二章 後藤新平のエピソード
一 愛知病院・医学校時代
二 前期・内務省衛生局時代
三 ドイツ留学時代
四 後期・内務省衛生局時代と満鉄時代
五 閣僚時代以降
第二十三章 北里柴三郎の顕彰とゆかりの建物・事物
一 北里柴三郎の顕彰建造物と記念事業
二 北里柴三郎ゆかりの建物・事物
三 北里柴三郎に因む演劇、映画、テレビ放送
第二十四章 後藤新平の顕彰とゆかりの建物・事物
一 後藤新平の顕彰建造物と記念事業
二 後藤新平ゆかりの建物・事物
三 後藤新平に因むラジオ・テレビ放送、映画
エピローグ
あとがき
参考資料(出版年順)
著者紹介
[担当からのコメント]
新型コロナウイルスが世界中に蔓延し始めたとき、多くの人はかつてのペストを思い浮かべたのではないでしょうか。本書に登場する二人が感染症に立ち向かったように、現代の私たちもまた新型コロナウイルスをはじめとする未知の感染症と闘っていかなければなりません。その知恵と心を支える一書として、本書を多くの方にご活用いただければ嬉しく思います。
[著者紹介]
野村 節三(のむら・せつぞう)
昭和9(1934)年:兵庫県氷上郡(現・丹波市)生まれ。
昭和32(1957)年:東京理科大学理学部化学科卒業
昭和32(1957)年:北里研究所研究員(抗生物質研究室)
昭和41(1966)年:北里大学衛生学部講師兼任(微生物化学担当)
昭和44(1969)年:北里大学薬学部講師兼任(微生物薬品製造学教室)
昭和46(1971)年:北里研究所食品衛生センター化学室長兼任
昭和47(1972)年:理学博士(名古屋大学)
昭和49(1974)年:米国・ハーヴァード大学化学部特別研究員
昭和51(1976)年:北里大学水産学部助教授(水産衛生学講座)
昭和55(1980)年:北里大学水産学部教授(水産微生物学講座)
平成11(1999)年:定年退職、北里大学名誉教授、現在に至る。
著書(分担執筆):『オゾン利用の理論と実際』リアライズ社(1989).
『オゾン年鑑』リアライズ社(1992).
『新版 オゾン利用の新技術』サンユー書房(1993).
インターネット・ブログ:『微生物の用語解説』(共著)微生物管理機構(2007).
『水中の不思議なミクロの世界』その1~5 微生物管理機構(2007).
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