仮橋 : 大津留直歌集(あけび叢書第一八二篇)

(著) 大津留直

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作品詳細

麻痺の身を意識し初めし遠き日のわが目に沁みし赤き夕ぐれ

脳性麻痺による歩行・言語障害を持つ作者が、自らの障害のこと、ドイツで哲学を学んだ青春の日々、妻との出会いを詠う。
自らの生を克明に見つめる深いまなざしに貫かれた歌集。
平成九年より平成二十年の作品を収録する。

(収録作品より)
帰り来しわがふるさとはかそかなる金木犀の香に包まるる
希臘(ぎりしあ)語を学び疲れてベーテルの夜道に明き月を仰ぎし
癲癇を病む若者が全身をふるはせて聴くバッハ受難曲
没りつ陽は筑後川面にあかあかと義父をし惜しむごとくかがよふ
つばくらめ短き夏を惜しむがに塔をめぐりて身を翻す
芍薬の花はドイツのさむき雨ふふみて重くうなかぶしゐむ
若き日のわが自画像の澄みし眼に未だに遠き灯火(ともしび)を見る

【著者プロフィール】
大津留 直(おおつる・ただし)
1947年 三重県生まれ。脳性麻痺のため歩行・言語障害。
1954年~1963年 東京都立光明養護学校小学部・中学部在学。
1972年 早稲田大学修士課程終了後、ドイツ ベーテル神学校・チュービンゲン大学へ留学。
1992年 ドイツ チュービンゲン大学より哲学博士号取得
1996年 帰国
1997−2004 大阪大学非常勤講師
1998−2005 関西学院大学非常勤講師
1995年より「あけび短歌会」会員 2013年より同選者
著書 『正義とディケー ‐ ハイデッガーのニーチェ解釈における自己批判としての思索の道』(ドイツ語)
論文 『障害と健康』(『現代思想』2000年9月号)・『言葉への道。芸術の現象学へ向けて』(『思想』2004年12月号)など

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