人工酵素の夢を追ってー失敗が次の開発を生む―
(著) 白井汪芳
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[商品について]
――アレルギーの原因となるアレルゲンが体内に入り、それを排除しようとIgE抗体を作り出すことを何というか
1.感作 2.アナフィラキシーショック 3.誘発反応
正解は、本書 第4章1節「「かゆみ」を抑え、「かぶれ」を改善する効果の発見?」をご覧ください。
電気を通す高分子の合成から偶然できた金属フタロシアニンポリカルボン酸は、世界初の生体酸化酵素と同じ電子構造で似た働きをし、ユニークな商品群の誕生に繋がる。人間が良い匂いと感じる天然の草木の香りは残しつつ、悪臭分子のみを除去する人工酵素は、その悪臭の元に狙いを定めて消臭するという効果から、現在でも消臭スプレーなどで活用されている。本書は、消臭機能をはじめとする人工酵素の様々な機能を発見した著者が描く、その果てしない可能性を追い求めた開発者たちの物語である。消臭のメカニズムからバキュームカーの悪臭問題の解消、医療分野への応用まで、失敗をくりかえしながらも産学連携によってユニークな製品が生みされる過程を、ぜひお楽しみいただきたい。
[目次]
まえがき
第一章 消臭繊維ができた!
し尿の「臭い」を消すプロジェクト
生体酵素・金属酵素
酸化酵素の働き
強烈な「臭い」が消えた!
「臭い」を消す繊維 産学共同開発へ
人工酵素の基礎研究
ヘム鉄(Ⅲ)の電子状態
消臭繊維ができた!
消臭繊維の商品化
第二章 人工酵素――なぜ臭いを消すのか?
「臭い」を消す機能の評価
「匂い」を感ずるメカニズム
臭い分子の超微量分析
ふとんが尿や汗の臭いをなぜ消すか?
豚舎の「臭い」を消すプロジェクト
畜舎の臭いはなぜ消える
トイレの臭いはなぜ消える
第三章 消臭新素材の実用開発
タバコの臭いが消えた!
新幹線「のぞみ」に搭載──タバコの臭いを消す空気清浄器用フィルター
消臭紙・パルプ
消臭壁紙
マンションの死体
冷蔵庫
いろいろなキムチがつくれる冷蔵庫
立体織物から冷蔵庫用消臭剤
生ゴミの臭いを消す──高速消臭装置
おむつの開発
人工酵素の鮮度保持効果
第四章 かゆみを鎮静する繊維
「かゆみ」を抑え、「かぶれ」を改善する効果の発見?
動物実験へ
本格的臨床試験へ
治験と結果
商品名「アレルキャッチャー」の販売
第五章 メディカル分野への挑戦
人工白血球をねらって
消臭繊維の靴下で水虫が治る?
トリインフルエンザに効果があるマスク
フリーラジカルとガン
生体関連分子の金属錯体によるラジカル重合
人工酵素による酸素存在下のラジカル重合
副作用のないガン化学療法薬──シスプラチン誘導体
第六章 環境問題の難問に挑戦
自動車の排ガス浄化へ挑む
人工酵素でダイオキシンをやっつけろ!
燃焼法によるPCBの完全無害化処理
第七章 チトクロムをまねる? ──人工酵素の電子伝達
ポリアクリロニトリルからトランジスタができた!
金属フタロシアニンポリマーから電気が流れる高分子
チトクロムの電子伝導に似た電気を通す高分子
アモルファス高分子に結合させた金属フタロシアニン超分子の電子伝導
水を燃料にする二次燃料電池
ヨウ素‐亜鉛二次電池
金属フタロシアニン電極の新しい作製方法
三色に変化するエレクトロクロミックディスプレイ
人工酵素から分子素子へ
参考文献
著者略歴
[出版社からのコメント]
消臭やかぶれの改善、そして自動車の排ガス浄化や医療分野等、様々な分野での可能性が期待される人工酵素――本書はその最初の発見の一端を明らかにしてくれます。一筋縄ではいかない研究や数々の失敗からどの様に新しいものが生みだされていったのか、研究者が辿った未知の探求の物語です。ぜひ本書を通じてその過程を楽しんでいただければ嬉しく思います。
[著者略歴]
白井汪芳(しらい・ひろふさ) 工学博士(大阪大学)
長野県上田市生まれ、1966年信州大学大学院繊維学研究科修了、信州大学助手、1985年教授、1995年〜2003年信州大学繊維学部長、同大学院工学系研究科長、2004年〜2009年同大理事(研究、産学連携など担当)、2004年特任教授、2017年〜2021年公立大学法人長野大学理事長など歴任、2009年〜同名誉教授 この間1998年〜2004年文部科学省科学研究費COE形成基礎研究費先進繊維科学技術研究教育拠点リーダー、21世紀COEプログラム先進ファイバー工学教育研究拠点リーダー、2007年〜2009年科学技術振興調整費先端融合領域イノベーション創出拠点「信州大学ナノテク高機能ファイバーイノベーション連携センター」拠点リーダー、2002年〜2009年文部科学省長野・上田地区知的クラスター創生事業研究統括
この研究での受賞
日本化学会化学技術賞(1990)、繊維学会賞(1986)、高分子学会高分子科学功績賞2008 Linstead Career Award in Phthalocyanine Chemistry, The International Society of Porphyrins and Phthalocyanines,2012, 産学連携功労者文部科学大臣賞、2010 繊維学会功績賞 2011
著書
人工酵素の夢を追う、著書(米田出版)、フタロシアニン、編著(アイピーシー)、ファイバー工学、編著(丸善)バイオテクノロジー入門、編著(培風館)、スーパーバイオミメティックス、編著(NTS)、生体と金属イオン、編著(学会出版センター)、ニューファイバーサイエンス、編著(培風館)、最新の機能繊維、監修(シーエムシー)など多数
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