ユダヤ人と映画 巻1:反ユダヤ主義の嵐の中で
(著) 福井次郎
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―映画とユダヤ人の関わりを解明する、映画を学ぶ者必読の書―
映画が世界共有の芸術として成長を遂げた今でも、ユダヤという視座なしに映画を語ることは、映画に対する重要な知見が欠落しているとしか言いようがない。本書は、それほどまでに深く映画に関わってきたユダヤ人にスポットをあて、第二次大戦までの時間軸の中で、映画の歴史だけでなくユダヤ人の歴史や作家論にも言及しながら、映画を通じてユダヤ人がいかに反ユダヤ主義と戦ったか、そして映画を通じてユダヤ人がいかに自己実現を果たしてきたかについて論じた作品である。映画によってユダヤ人の歴史を知り、またユダヤ人の歴史を辿りながら映画の歴史を知る一書として、示唆に富む内容となっている。
[目次]
はじめに
序章 ドレフュス事件と映画の奇妙な関係
忘れられた俳優
ドレフュス事件と映画の誕生
ジョルジュ・メリエス
メンデルスゾーンとフランス革命
ナポレオンとロスチャイルド
反ユダヤ主義の登場
第一章 反ユダヤ主義の台頭とポグロム
「オリヴァ・ツイスト」と「炎のランナー」
英国のユダヤ人
ユダヤ人宰相ディズレーリ
国際ユダヤ人と闇の支配者
ロシアのユダヤ人
プロトコルの完成とポグロム
日本にも影響を与えたポグロム
ロシア系ユダヤ人の特質とポグロムの影響
第二章 エクソダス
中継地ウィーン
二十世紀のエクソダス
『グッド・モーニング・バビロン』
セファルディ
アメリカにおけるユダヤ人社会の発展
西部開拓とユダヤ人
『我が心のボルチモア』
第三章 映画との出会い
『ラグ・タイム』、そしてロアー・イースト・サイド
映画に群がったユダヤ人
初期のユダヤ人製作者
第四章 創世期におけるヨーロッパ映画
始まりはフランス映画
イタリア映画の第一期黄金時代
遅れてスタートしたドイツ映画
ロシア映画の始まり
ポーランド映画・イギリス映画
第五章 ハリウッドの帝王達
ハリウッドの誕生
メジャー創業者の出会い
カール・レムリ
ウィリアム・フォックス
アドルフ・ズーカー
MGMとロキシー
ユダヤ人創業者成功の要因
第六章 第一次大戦とドイツ映画黄金時代
第一次大戦の影響
ウーファの設立
ドイツ表現主義
自然主義映画
『メトロポリス』とパルファメト協定
第七章 ロシア革命と『戦艦ポチョムキン』
『戦艦ポチョムキン』
ロシアのアヴァン・ギャルド
トロツキーとスターリン
第八章 ハリウッドの成長と金ピカ時代
ハリウッドの成長
大戦直後のハリウッド
『ラスト・タイクーン』
ロアリング・トゥエンティーズ
ヘンリー・フォードと反ユダヤ主義の胎動
第九章 二十年代アメリカ映画
二十年代映画アラカルト
ヨーロッパからの移民監督
スティルレルとグレタ・ガルボ
ハリウッドのルビッチ
マイルストンとスタンバーグ
第十章 トーキー革命で勃興したミュージカル
トーキーの誕生
『ジャズ・シンガー』とワーナー兄弟
音楽とユダヤ人
ミュージカルとユダヤ人
第十一章 ギャング映画とユダヤ人
ギャング映画の流行とユダヤ系スターの登場
禁酒法時代のユダヤ系マフィア
第十二章 二人のジャン、あるいはフランス前衛映画
第一次世界大戦後のフランス映画
フォトジェニー派
花開くアヴァン・ギャルド
伝説の映画作家ジャン・ヴィゴ
第十三章 ナチの台頭とドイツ映画
フーゲンベルクとウーファ
反ナチ映画のリアリズム
フリッツ・ラングの逃亡
ナチ政権下の映画
第十四章 大恐慌下のハリウッド、そしてイギリス映画の国際デビュー
大恐慌と金融資本の参入
プロデューサー・システムの完成
第一次大戦後のイギリス映画
ハンガリー・コネクション
第十五章 共産主義の浸透と共に流入した逸材たち
Bムービーとマックレイカー映画
共産主義の流入
流入したライターと演出家
第十六章 アメリカにおける反ユダヤ主義の台頭
ハリウッドのディートリッヒ
不道徳の代名詞
反ユダヤ主義の台頭
反ユダヤ主義対抗映画の登場
ナチからの亡命者
第十七章 フランス映画の黄金時代
三十年代フランス映画と反ユダヤ主義
ルネ・クレールの謎
ジャン・ルノワールの秘密
ペシミスト、フェデールとデュビビエ
三十年代フランス映画の終焉
第十八章 スターリン時代のポーランドとソ連映画
三十年代ポーランド映画とイディッシュ語映画
スターリン時代のユダヤ系監督
『戦艦ポチョムキン』後のエイゼンシュタイン
粛正の嵐と第二次世界大戦
おわりに
著者略歴
[出版社からのコメント]
欧米の歴史を知るうえというでユダヤ人は不可欠の存在であるといえますが、本書はそれを映画というエンターテインメントの歴史の中で試みた作品です。映画が人によって生み出される限り、その時代性を免れることはできないという事実を胸に、ぜひ本書を通じてこれまでとは異なる目線で映画を楽しむきっかけを持っていただければ嬉しく思います。
[著者略歴]
福井 次郎(ふくい・じろう)
1955年青森県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。ユダヤ人と映画の関わりについて精力的に研究、映画を歴史と関連づけて論ずる独自のエクリチュールを確立し、多方面にわたって執筆活動を展開。
著書『戦争映画が教えてくれる現代史の読み方』(言視舎)他。
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