ファシズムの解剖学【電子書籍版】

(著) Robert O.Paxton

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作品詳細

[商品について]
―ファシズムは、第一段階のレベルではすべての民主主義国に存在する―
ファシズムとは何か。その問いに答えることは容易ではない。ヒトラーやムッソリーニに代表されるような恍惚とした群集を前にして熱弁をふるう排外主義者のデマゴーグや排斥された少数者を殴打する武装部隊といったイメージは、ファシズムの単なるカリカチュアに過ぎない。ファシズムについて少しでも深く調べていくと、そこには困惑するほどの多様性が広がっていることに気づく。しかし世のファシズムに関する研究は個別の現象に焦点を当てているものが多く、ファシズムの全体像を掴むには必ずしも充分ではない。ーー長年にわたりファシズム研究に携わり斯界の第一人者として知られるパクストン教授が、多彩で複雑なファシズムの全体像について考えるために、その起源から時代や地域を越えて広がるその態様、そしてファシズムの未来まで、様々な視点から試論を展開した第一級のファシズム概論、待望の日本語化。

[目次]
序文
ドイツ語版および日本語版への序文
第1章 序論
第1節 ファシズムの起源
第2節 ファシズムのイメージ
第3節 ファシズム研究の戦略
第4節 どこに向かって検討をすすめるべきか?
第2章 ファシズム運動の始まり
第1節 ファシズム運動発生前夜の情勢
第2節 ファシズムの直接的な背景
第3節 知的起源、文化的起源、情緒的起源
第4節 長期にわたる前提条件の形成
第5節 ファシズムの先駆け
第6節 ファシストの新規獲得
第7節 起源だけで解釈してはならないファシズム
第3章 根をおろすファシズム
第1節 非常に多い成功しなかったファシズム
第2節 成功したファシズム(1) ――イタリア、ポー川流域(一九二〇―二二年)の事例
第3節 成功したファシズム(2) ――ドイツ、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン(一九二八―三三年)の事例
第4節 成功しなかったファシズム ――フランス(一九二四―一九四〇年)の事例
第5節 その他の成功しなかったファシズムの事例
第6節 比較と結論
第4章 権力の掌握
第1節 ムッソリーニと「ローマ進軍」
第2節 ヒトラーと「密室での共謀」
第3節 実際にはなかったこと――選挙、クーデター、単独勝利
第4節 同盟の形成
第5節 ファシストが体制派に提供したもの
第6節 ファシズム前夜の危機
第7節 権力掌握後の革命――ドイツとイタリアの事例
第8節 比較と選択肢
第5章 権力の行使
第1節 ファシズム支配の性質――「二重国家」と形なきダイナミックス
第2節 ファシストと保守派の主導権争い
第3節 指導者と党の主導権争い
第4節 党と国家の主導権争い
第5節 適応と熱狂と恐怖と
第6節 ファシズムの「革命」
第6章 ファシズム破局への行程     ――過激化か、それとも拡散か?――
第1節 過激化の可能性と拡散の可能性
第2節 なにが過激化に駆りたてるのか?
第3節 ホロコーストにかんする考察
第4節 イタリアの過激化――国内の秩序、エティオピア戦争、サロー共和国
第5節 最終局面における判断
第7章 戦後のファシズム、ヨーロッパ以外のファシズム
第1節 ファシズムは今後もありえるのか?
第2節 一九四五年以降の西ヨーロッパ
第3節 ソヴィエト崩壊後の東ヨーロッパ
第4節 ヨーロッパ以外のファシズム
第8章 ファシズムとはなにか?
第1節 ファシズム解明の困難さ
第2節 あい対立するさまざまな解釈
第3節 ファシズムとそうでないものとの境界線
第4節 ファシズムとはなにか?
注記
訳者あとがき
著者
訳者

[担当からのコメント]
かつての三国同盟から戦前の日本の全体主義はファシズムに含まれるだろうか、そんなことを思いながら本書を読んでいると共通するもの、異なるもの、様々なことに気づきます。かつての日本を考えるうえでも示唆に富む本書、ぜひご一読ください。

[著者略歴]
著者
ロバート・パクストン(Robert O. Paxton)
コロンビア大学名誉教授、ニューヨーク在住
1932年、ヴァージニアに生まれる。
ハーヴァード大学で博士号を取得後、カリフォルニア大学、ニューヨーク州立大学を経て、コロンビア大学の歴史学教授として長く教鞭をとってきたファシズム研究の第一人者。
邦訳書に『ヴィシー時代のフランス』(渡辺ほか訳、柏書房、2004年)がある。

訳者
瀬戸岡(せとおか) 紘(ひろし)
 駒澤大学経済学部教授
 1945年 東京に生まれる。
 1968年 早稲田大学商学部卒業。
 1975年 同大学院商学研究科経済学専修博士課程単位取得退学。
 1977年 駒澤大学経済学部専任講師、同助教授を経て現在にいたる。
 1987~88年、1997年、2007年 コロラド大学客員研究員
 著   書 『ソ連崩壊と新しい社会主義像』(共著、時潮社、1996年)
       『グローバル時代の貿易と投資』(共編著、桜井書店、2003年)
       『アメリカ:理念と現実』(時潮社、2005年)
       ほか
 訳   書 ヴィノグラードフ著『労働者統制の理論と歴史』(共訳、大月書店、1974年)
       グリーンバーグ著『資本主義とアメリカの政治理念』(青木書店、1994年)
       メイヤー著『アナリティカル・マルクシズム』(監訳、桜井書店、2005年)
       ほか

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