ハイテク通信が軍事化される日
(著) 井上照幸
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―ハイテク戦争の中で、日本の技術はどうあるべきなのか―
米空軍が1985年にF15戦闘機で実験した衛星攻撃兵器ASAT(エイサット)に使われた「眼」、日常生活に密着したNTTとKDDの通信回線に深く組み込まれた米軍C3Iの通信網、日本独自の方式で開発された三次元レーダーや「エグゾセ」に匹敵するといわれた日本の空対艦ミサイル「ASM‐1」のメーカーとして並ぶ見慣れた社名ーー先端的通信技術の軍事的活用が常態化しつつある日本。しかしその事実が、国民に知らされることはほとんどない。もはや現代戦で必須の要素となった情報通信技術は、いかなる危険を内包し軍事産業へと近接するのか、SDI開発に寄与した日本企業など過去の事例を検証しながら日本の情報通信産業の未来を展望した日本人必読の一書。
[目次]
まえがき
第1章 核戦略体制と情報通信
1 ICBMの脅威と情報通信
1 秒速七キロメートルで飛ぶICBM
2 ICBMはどのように飛ぶか
3 ICBM迎撃と通信システムの役割
2 現代核戦略を担う3CI
1 3CIとはなにか
2 3CIは情報通信の一大システム
3 通用しなくなった迎撃ミサイル構想
4 早期警戒衛星の登場
3 軍事に接近する通信技術
1 宇宙をめざす日本の通信技術
2 向上著しい衛星通信技術
3 大韓航空機撃墜事件と日米軍事通信体制
4 バッジ・システムにみるわが国情報通信技術の優秀性
第2章 軍拡に奉仕させられた通信
1 電信電話の登場と軍事通信
1 「電気通信」以前から重視された軍事通信
2 「電信」は電気実用化の第一号
3 明治新政府を支えた軍用電信
2 わが国での電話創業と「官営vs民営」論議
1 速かった電話機輸入と遅れた電話創業
2 工部省の打ち出した電話官営論
3 台頭した電話民営論
4 電話民営要求を支えた軍事費突出
3 電電民営化論の再燃と軍事大国化
1 日清戦争で再燃した民営化論議
2 突出する軍事費と電電株式会社構想
3 アジア諸国への軍事侵攻と電電建設株式会社構想
4 歴史から学ぶべき教訓はなにか
第3章 在日米軍と軍事通信体制
1 NTT誕生と軍事費の突出
1 電電事業の大幅黒字と株式売却
2 突出し続ける軍事費
3 耐爆格納庫までつくってあげる日本政府
4 日本が得意なミサイルの〝目〟づくり
2 在日米軍の核戦争指令通信システム
1 嘉手納基地の核戦争指令通信システム
2 横田基地の核戦争指揮通信施設
3 上瀬谷基地の「艦隊作戦統制センター」計画
4 世界核戦略を担う在日米軍基地
3 在日米軍によるNTT回線の軍事利用
1 在日米軍幹線通信網を形成するNTT専用回線
2 NTTは全国の核攻撃基地を結ぶ
3 原潜に最終的核攻撃指令を伝える依佐美送信所
第4章 光通信産業とその軍事輸出
1 明るみに出た光通信機器の対米軍事輸出
1 米国の光通信網入札で勝った富士通
2 富士通の〝敗退〟と日電の〝暴露〟
3 平和への願いがこもる「武器輸出三原則」
4 後を絶たない武器輸出と禁輸政策の強化
5 二転三転した光通信機器軍事輸出の真相
6 真相を隠そうとした企業の〝同志愛〟
2 先端兵器開発に活躍する日本の通信機メーカー
1 防衛庁調達の上位を占める通信機メーカー
2 わが国の軍事用通信機器は世界最高
3 国産新鋭ミサイル開発を先導する通信機メーカー
4 武器輸出規制は汎用品輸出解禁によって崩れた
3 光通信のしくみと技術的特長
1 「光源」問題を解決したレーザー
2 「伝搬路」問題を解決した光ファイバー
3 広い産業分野への応用が期待される光技術
4 光通信をめぐる国際情勢と日本の立場
1 日本の〝名人芸〟が活かされる光通信技術
2 世界に進出する日本の光通信
3 各国での光通信網計画と光通信需要
4 激化する開発競争
5 光通信の「生産能力過剰」と軍事への傾斜
第5章 世界的核戦略と日本の光通信技術
1 崩れゆく武器禁輸体制
1 軍事的に狙われる〝汎用品〟
2 「見えない戦闘機」とフェライト
3 日米で合意した武器技術供与
4 奨励される〝防衛技術〟の輸出
2 長距離用光通信の軍事的メリット
1 野戦に有利な光通信
2 新バッジ・システムと光通信
3 電子妨害と光通信
4 数多い軍事用光通信の特長
3 核時代を支える軍事用光通信
1 核ミサイル原潜を探知する光ファイバー
2 核爆発と電磁パルスの発生
3 電磁パルスは通信網を壊滅させる
4 防ぐのが難しい電磁パルス
5 光ファイバーは電磁パルスを寄せつけない
4 短距離用光通信の軍事的メリット
1 戦車に組み込まれる光ファイバー
2 軍用機で威力を発揮する光伝送システム
3 軍用艦船への導入が進む光通信技術
4 原潜の〝泣きどころ〟を克服する光ファイバー
5 対戦車ミサイルと魚雷の光ファイバー誘導
6 プラスチック光ファイバーも軍事用に狙われている
第6章 SDIに接近する民営NTT
1 宇宙戦略基地に納入されていた光通信機器
1 巨大な地下要塞〝NORAD〟
2 ピーターソン基地は、〝宇宙軍団(スペース・コマンド)〟の司令部
3 世界と宇宙にネットワークを張るスペース・コマンド
4 宇宙戦略の主役=スペース・コマンド
2 国防総省調査団の来日視察
1 米国が狙う電電ファミリーの「軍事技術」
2 電電公社はなぜ視察を拒否したか
3 SDI研究に乗り出すNTT
1 SDI訪米調査団に参加したNTT子会社
2 実態は「通研」のSDI参加
3 許されないNTTの軍事研究
第7章 SDI研究と日本の企業
1 高出力レーザー兵器に使われる日本製品
1 現実のものになってきたレーザー兵器
2 世界最大のレーザー装置《ノヴァ》
3 HOYA製品でつくられているノヴァの心臓部
2 日本企業による先端的軍事品の現地生産
1 日立金属の製品が使われた自由電子レーザーの中心部
2 京セラ米国子会社による軍事生産の疑惑
3 放任される現地法人の先端的軍事品生産
3 日本で進行する衛星通信の軍事利用
1 X線レーザー衛星で崩される「非核三原則」
2 自衛隊による「さくら2号」の利用
3 定着する通信衛星の軍事占有
4 衛星間レーザー通信の研究着手とSDI
1 SDIで重視されるレーザー通信技術
2 衛星間レーザー通信を進める宇宙開発事業団
3 SDIへの対抗力も強化するレーザー通信技術
終章 平和に貢献する情報通信の発展を
1 SDIをめぐる日米の思惑
2 軍事規制で心配される民生部門の衰退
3 「軍事」よりも「平和」を
著者略歴
[担当からのコメント]
本書で取り上げられている過去の事例を見るだけでも、日本が軍備に消極的な平和国家であると見ることは難しいのではないかと思います。知らないのは日本国民だけかもしれない、そんな危機感を抱かせる本書、ぜひ多くの方にご覧頂ければ嬉しく思います。
[著者略歴]
井上照幸(いのうえてるゆき)
1947年7月10日 東京都浅草生まれ
1975年 青山学院大学大学院経営学研究科博士課程出
1976年 電気通信大学経営工学科勤務
1978年 高崎経済大学経済学部経営学科勤務
現 在 高崎経済大学助教授
日本学術会議経営情報研究連絡委員会委員
主要著書(共編)『国有企業の経営』白桃書房
(共著)『コンピュータ革命と現代社会(経済・産業)』大月書店、『公企業論』日本評論社
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