イマヌエル・カント『実践理性批判』注解――自由、道徳、理性、その哲学が見据えるもの
(著) 藤田昇吾
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―ドイツ哲学の巨人と過ごす至福の時間―
『純粋理性批判』をはじめとするカントの三大批判の中でも、『実践理性批判』は他の二作に比べて顧みられることが少なく、これまで学術的な研究や註釈はほとんどなかった。しかしそれは、カント倫理の中心思想を論証した作品である『実践理性批判』そのものの価値を否定することを意味しない。本書は、その『実践理性批判』についての本格的な研究書であり、長くカント哲学を研究し多くの実績を残してきたルイス・ホワイト・ベック氏の代表的な著者でもある『 A Commentary on Kant's Critique of Practical Reason』(1960. The University of Chicago Press)を全訳した作品である。解釈学的研究として『実践理性批判』をカント哲学と18世紀の道徳哲学の連関の内に位置づけると共に、その哲学的長所を吟味し、第一、第三『批判』等カントの主著から書簡、遺稿の類までほとんど全てを網羅した、カント哲学全体の体系的研究書となっている。
[目次]
序言
『実践理性批判の注解』の日本語版への序言
「カント『実践理性批判』の注解」電子書籍版への序言
第Ⅰ部
第一章 『実践理性批判』の執筆
第二章 理論理性の限界
第三章 思考・行為・実践理性
第四章 『批判』の名称、意図、構造。 序言と序論に関する注解
第 Ⅱ 部
第五章 実践理性の分析論の概観
第六章 経験的実践理性の分析論Ⅰ 形式的考察、〈実践理性批判〉第一節の注解
第七章 経験的実践理性の分析論Ⅱ 実質的考察、〈実践理性批判〉第二、三節及び 八節の一部に関する注解
第八章 道徳法則の「形而上学的演繹」 第四、五、六、七節及び八節の一部に関する注解
第九章 実践的概念と判断力 分析論第二章の注解
第十章 純粋実践理性の原則の「超越論的演繹」 第七節とアカデミー版四二―五十頁の注解
第十一章 自由
第十二章 純粋実践理性の「感性論」 分析論第三章と弁証論の一部と方法論の注解
第十三章 純粋実践理性の弁証論 弁証論第一章及び第二章(第四、五節を除く)の注解
第十四章 純粋実践理性の要請 弁証論第二章第四節と第五節の注解並びに結論
事項索引
人名索引
凡例
訳者後記
訳者紹介
[出版社からのコメント]
時短や効率性ばかり求められる時代において、哲学はその対極に位置するものと言えるかも知れません。機が熟す時間を良しとせず、人為的に熟成を早めてほしいものを手に入れようとする精神が、人間社会だけでなく自然の世界にも影響を与え始めているいま、あらためて哲学を見直す時期に来ているのではないかと思います。本書を通じて、未だ輝きを失うことのないカントの思索に触れ、現在の時のなかで諸問題を考えるきっかけとしていただければ嬉しく思います。
【訳者紹介】
藤田昇吾(ふじた・しょうご)
1939(昭和14)年3月、大阪市生まれ。
1971(昭46)年3月、京都大学大学院哲学専攻、博士課程単位取得退学
現 在 大阪教育大学名誉教授
主 著 『西洋思想の源流と展開 改訂版』
『カント哲学の特性』
いずれも電子書籍版あり。
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