アーク:人類を救う箱船の神話が始まる

(著) 井上朝廣

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作品詳細

どこかで電話が鳴っている。
(誰か出れば良いのに。まだ鳴っている。お隣の電話かしら。しつこいったらありゃしない。いい加減にあきらめれば良いのに)
宮川房江(みやがわふさえ)は蒲団(ふとん)の中でうっすらと目を開いた。頭の芯がまだ眠っていて、霞がかかっている。
(うちの電話らしいわね。また間違い電話じゃないの)
そろそろと身を起こした。枕元の時計は午前3時を少しまわっている。
(それにしても非常識ね。こんな時間にかけて来るなんて。まさかまた節子(せつこ)のボーイフレンドじゃないでしょうね)
高校二年の長女の節子に最近ボーイフレンドが出来て、よく長電話をするようになった。先日も午前1時過ぎまで2時間半も喋っていた。
(電話代が増えてきたのはきっと節子のせいよ。貴方からきつく言ってもらわなくっちゃ。私の言うことなんか聞かないのだから)
房江は電話のベルが鳴り止む事を期待しながら、そろそろと身体を起こして玄関においてある電話台の方へ片手を廊下の壁に這わせながらゆっくりと歩いて行った。(プロローグから)

【著者プロフィール】
井上 朝廣(いのうえ・ともひろ)
昭和13年横浜に生まれる。
昭和20年塩山小学校入学。
鎌倉市立御成小学校、横浜市立日枝小学校を経て横浜市立蒔田小学校卒業。
関東学院中学・高校卒業。
東京工業大学電気工学科昭和37年学部、39年修士課程卒業。
同年(株)東芝入社、火力技術部へ配属。以来国内外の火力発電所開発・計画・設計・建設に従事。
昭和42年メルボルン駐在。
昭和51年より火力技術部計画課長、開発課長、重電経理部見積企画課長、電力企画室長、火力企画室長、総合企画部部長、火力技師長、技監を経て平成10年3月定年退職。
著書
『パンゲニア第1巻』
『パンゲニア第2巻』

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