こんな道徳教育では国際社会から孤立するだけ : 徹底批判!!「私たちの道徳」
(著) 半沢英一
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―国家や大企業に都合のよい人間を生み出す道徳は要らない―
現在、教育基本法の改正や教員免許の更新制度の導入、大学への国旗・国歌の要請など、国家権力による教育統制の動きがさまざまに進んでいる。
道徳の分野でも、安倍政権が道徳の教科化を計画し、文部科学省が道徳教科書のモデルとして編さんしたテキスト『私たちの道徳』の使用が、教育現場で半ば強制されている。本書は、『私たちの道徳』全4冊から編さん者側の意図が推測できる項目を選び、、この「教科書」がどのような「道徳」意識を日本国民に刷り込もうとしているのかを批判的に分析し、それが如何に日本国憲法を含む国際人権論に反し、結果として日本人の知性を劣化させ、日本を国際社会から孤立させるものであるかを明らかにしていこうとした作品である。主権者として、また人類の一員として、道徳とはどのようなものであるべきかを問いなおす一書として、示唆に富む内容となっている。
[目次]
はじめに:『私たちの道徳』は「理性」なき「夢」、「個人」なき「家族」、「人権」なき「きまり」、「人類」なき「国」
第1章 小学校1・2年テキストを読む
1 うさぎとかめ(p26~27) 競争原理刷り込みへのプレリュード
2 小さな力のつみかさね(p28~31) 二宮尊徳(そんとく)像の国家主義的歪曲
3 よいと思うことはすすんで(p32~33) 他者の不在
4 おはかまいり(p94~95) 自国文化の無批判な讃美へのプレリュード
5 やくそくやきまりをまもって(p118~121) 国連憲章や憲法も「きまり」
6 家族のやくに立つことを(p138~141) 「子どもの貧困」の無視
7 ふるさとに親しみをもって(p150~151) 「ふるさと」の衝撃
第2章 小学校3・4年テキストを読む
8 バスの運転手さんの話(p13) ILO労働時間条約と日本
9 やろうと決めたことは最後まで(p22~29) 本格的な競争原理の刷り込み開始
10 あなたの勇気をさがしてみましょう(p32) 語られない他国の古典
11 外国の文学作品から(p65) 同性愛者の人権と法律の歴史的相対性
12 友達づくりのひけつを漢字から学ぼう(p71) 語られない他文化の影響
13 働くことの大切さを知って(p130~131) 語られない労働者の権利
14 家族みんなで協力し合って(p136~141) 家族という病
15 ふるさとを愛した歌人・石川啄木(p162) 社会の矛盾を詠んだ啄木
16 伝とうと文化を大切に(p164~165) 「和食」って何?
第3章 小学校5・6年テキストを読む
17 「誠実である」ということ(p39) 吉田松陰のアジア侵略思想
18 好奇心が出発点(p42) 「懐疑」なき「好奇心」
19 新しいものを求めるということ(p44) マリー・キュリーの放射線障害死
20 江戸しぐさに学ぼう(p58~59) 「江戸しぐさ」は現代人の偽作
21 銀のしょく台(p82~83) 現代日本の貧困と犯罪
22 黄熱病とのたたかい(p92~95) 黄熱病の病原体はウィルス
23 こわされていく自然環境(p112) ジュゴンと辺野古の基地建設
24 権利とは、義務とは(p124~125) 基本的人権は無条件の権利
25 家族の幸せを求めて(p156) 人権の「人」は「個人」
26 郷土や国を愛する心を(p164) 「郷土」と「国」の不連続性
27 世界の人々とつながって(p176) 国連個人通報制度と日本
28 龍馬は考えていた(p177) 明治維新から後発帝国主義国家へ
第4章 中学校テキストを読む
29 理想通りにいかない現実もある(p18) 自己責任の刷り込み
30 この人のひと言(p27) 曽野綾子氏の人種差別記事
31 「夢をもちたい」という願い(p33) 『私たちの道徳』はブラック企業の露払い
32 異性を理解し尊重して(p66) 国際民主主義とLGBT
33 人それぞれに異なるものの見方・考え方がある(p73) 『私たちの道徳』の厚顔
34 支え合い共に生きる(p94~95) 君が代はダサいから歌わない
35 偶然性・有限性・連続性(p99~101) 人類滅亡の蓋然性
36 あなたならどう考え、行動しますか(p123) 杉原千畝と『私たちの道徳』
37 人物探訪(p124) 日本はナチス・ドイツの同盟国
38 法やきまりについて学んだこと(p135) 国連UPRと日本
39 現代の企業でも(p147) 語られない企業の人権擁護義務
40 世界人権宣言(p161) 世界人権宣言と『私たちの道徳』の矛盾
41 人物探訪(p164) 語られないガンジーの不労所得批判
42 家族の一員としての自覚を(p180) 家族礼賛と生活保護の切り捨て
43 ふるさとを愛するということ(p202) 「ふるさと」の重層性
44 国を愛し、伝統の継承と文化の創造を(p206) 日本国は国民に何をしたか
45 日本人の自覚をもち世界に貢献する(p214) 日本を有難がらなかった道元
46 世界が抱える幾多の課題(p216) 人類の合理的選択としての人権
おわりに:『私たちの道徳』に対抗する立脚点としての国際人権と日本文化
■謝辞
■参考文献
■付録:『私たちの道徳』全4冊の構成と本書との対応
■電子書籍版付録
[著者略歴]
[主要論文・著書]
[出版社からのコメント]
いつの時代も道徳教育は国の根幹であり、その国が進もうとしている道すじを端的にあらわすものといえるかも知れません。これからの日本がどのような道を進み、私たちはそれをどうするのか、ぜひ本書を通じて考える時間を持っていただければ嬉しく思います。
[著者略歴]
半沢 英一(はんざわ・えいいち)
1949年生。東北大学理学部数学科卒、理学博士(数学)。
元北海道大学、金沢大学教員、現在いしかわ教育総合研究所・教育政策部会長
[主要論文・著書]
「ステファン問題の古典解」(英文、博士論文)『東北数学雑誌』1981
「シュヴァルツ超関数理念の一般化」(英文)『日本応用産業数学雑誌』1992
「数学と冤罪―弘前事件における確率論誤用の解析」庭山英雄編『被告・最高裁』技術と人間1995所収
『狭山裁判の超論理』解放出版社2002
「ナッシュの等距離埋蔵論文の影響についての私見」『ナッシュは何を見たか』シュプリンガー・フェアラーク東京2005所収
「ナッシュのゲーム理論―正義と競争の数学的関係」『数学通信』2007(日本数学会HPで公開)
『雲の先の修羅―『坂の上の雲』批判』東信堂2009
『邪馬台国の数学と歴史学―九章算術の語法で書かれていた倭人伝航路記事』ビレッジプレス2011
『天皇制以前の聖徳太子―『隋書』と『記』『紀』の主権者矛盾を解く』ビレッジプレス2011
「「人間宣言」書き換え事件考」『反天皇制市民1700・31』2012
『ヘックス入門―天才ナッシュが考えた数学的ボードゲーム』ビレッジプレス2013
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