いつものように草野球をしようよ――ボクが富山第一高校軟式野球部の監督になって考えてきたこと

(著) 田畑良昭

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[商品について]
――野球のルールでは、打者が走ってベースを踏むのと送球の捕球が同時の場合、どうなるでしょうか。
1.アウトになる、2.セーフになる、3.打席のやり直しになる
正解は、本書第2章「3 ルールブックを愛読――審判のミスジャッジをチェック」をご覧ください。
1992年夏、富山第一高校軟式野球部は初の全国大会出場を決めた。出欠も入退部も自由、外野では女子ソフト部が練習をする環境で、富山第一高校軟式野球部はいかにして全国の切符を勝ち取ったのか――。軟式野球部の顧問として指導法を模索してきた著者が、手探りの状態から始めて型破りな指導方法に至るまでのその道のりを、生徒たちとの関わりや指導の考え方と共につぶさに語る。指導書としても、教育書としても、示唆に富む内容になっている。

[目次]
はじめに
第Ⅰ章 我が部活ありのまま なんでも自由、なんでも工夫
1 野球で遊びたい部員たち
いちおう経験あり――ただし補欠
なんと三振で一塁に走った打者がいた
バントサインは怒鳴りあい
勝ちを知りはじめたのんびり部員
けなげな花一輪のマネージャー
指示待ち部員はおしゃべりと休息大好き
2 部のルールは自主・自由
練習参加だけが条件――入退部自由
誠実な部員が残る――入退部自由の長所
試合直前のエース退部にはまいった――入退部自由の短所
部活の出欠も自由――これ、ほんとです
頭髪自由――野球に関係なし、学則で十分
その他も自由――練習の無帽は注意
よみがえってきた原風景の草野球
「野球をやる者、この指とまれ!」
3 部の施設設備・用具――あまりほしがらない
外野では女子ソフトボールやラグビー
ユニフォーム、スパイク、グラブは個人持ち
4 部の経費――お金はかけない。あるもので最善を
部費なし、生徒会の部予算だけでまかなう
それでも生徒・親の負担は少なくない
全国大会で知ったお金をかける野球
5 年間スケジュールと練習時間
シーズン中は一日二時間
練習は三百六十五日の三分の一以下の事情
6 練習内容――実戦ふうに基本をきたえる
確かな勝因は練習にしかない
①礼から始める
②ランニング
③柔軟体操は円陣をつくって
④ダッシュとランニングキャッチ――ラストは背面キャッチ一本
⑤円陣キャッチボール
⑥トスバッティングとバント
⑦フリーバッティング――もっとも人気のある練習
⑧攻撃練習――守・打・走
⑨打球方向指定バッティング
⑩シートノック――より実戦向きの工夫が課題
⑪ノックの要点、ノックの美学
⑫キャッチャー指示バックホーム
⑬三角シートノック――少人数小スペースでOK
⑭円陣スクワット――運動部らしさをラストに
⑮グラウンド整備――イレギュラーを防ぐ大事な仕事
⑯苦手のミーティング――する方もされる方も
⑰礼・気をつけ――もっときちんとやってもらいたい
7 練習試合――みんなの都合にあわせるのは大変
正式部活チームは敬遠
代わりに紅白戦、対OB戦を
自信と確信の対長野工業親善試合
8 大会――実戦はこんなパターンで
守備位置は監督、打順は選手が決める
試合当日――応援十名たらずでも選手は緊張
ねらい球はストレート・短打主義
大声でバントを指示することも
守備の指示には自信あり
投手をひとりぽっちにしない
試合後の挨拶――監督はまだ興奮状態
第Ⅱ章 全国大会までの道すじ 勝利至上主義でない勝ち方
1 監督のはじまり――何事も今までどおり
2 生徒の遠征試合ボイコット――ショックでした
3 ルールブックを愛読――審判のミスジャッジをチェック
4 初優勝――練習熱心の相手に申し訳ない
5 部室を喫煙室にしない方法
6 全国大会初出場
春の大会でエース交替
夏の県大会で雪辱、北陸大会へ
優勝するも冷めていたボク
なんとかなってしまった北陸大会
ひと休みしてから全国大会参加の準備
明石で――名門校監督に囲まれ肩身の狭い思い
全国大会向け練習――高めの速球を見逃す法
松山商業戦――初回スクイズに悔い
大会を終えたら感動がやってきた
第Ⅲ章 野球について あまり上手でない人のための技術論
1 練習は効果のはっきりしている守備中心
2 捕ること
予想・準備すること
意識すること
グラブについて
体の構えについて
捕球しやすい球
バウンドボール
体から離れたボール
片手捕球について
正面捕球について
ファウルラインあたりの打球処理について
フォースアウトになる捕球とベースの踏み方(一塁手と捕手)
バント打球処理について
バックホームの中継プレーについて
打球に対する野手の動き――捕球最優先
塁上でのタッチプレー
挟殺プレーのタッチ
飛打球の処理について
ロングヒット時の一塁手の目
3 投げること
投球の構図
癖はいじらない
早く投げること
速い球を投げること
速球を生む足
速球を援助する自由手(利き手と反対の手)
制球力について
ボールの握り方
球離れ時の人差指先端感覚
的のねらい方
投手に求めること
トス送球
4 打つこと
打つだけの練習には疑問
打つことの目標
ストライクゾーンを広く想定する
全方向に打球を飛ばすこと
バットを振ること
バントの要点
素振りについて
盗塁サインに対する打者の仕事
5 走ること
野球をスリリングにする最大の要素
〈打者走者の走り方〉
内野打球に対して(ゴロ、フライ、ファウルラインあたりの打球)
外野飛球に対して
〈走者の場合〉
アウトカウントと他走者の位置と数の確認
投手のどこに目をつけるか
離塁の仕方
盗塁、ヒットエンドラン
飛打球に対して
ゴロ打球に対して
投球・打球にすべて反応すること
ボールを背にした時の走塁
ベースを回る時のベースの踏み方
第Ⅳ章 草野球からのつぶやき 国語教師、二十八年のくぎりとまとめ
1 ボクのスポーツ歴
小学校時代――地域限定のアクションレジャー
中学時代――学校スポーツ・競技スポーツ
高校時代――体を動かす爽快感で立ち直る
大学時代――弓道、卓球で打ち止め、サイクリング
スポーツの原点は楽しむこと
2 軟式野球部監督への第一歩――新聞部顧問になる
3 あらためて学校スポーツとは
勝利至上主義と無理・矛盾
スポーツの評価が低いのでは
オフト氏の提言
普通の生徒のための学校スポーツ
4 身体について
身体と精神
体を使うことの効用
肉体軽視の日本
休むこと――正直な体
5 学ぶことと教えること
「付き合う」こと
学ぶ人間
教えようとしていること
生徒に任せていること
教えていない礼儀作法
野球が教えてくれること
指導者が評価されること
教えすぎないことと待つこと
6 結果について
負けることと勝つこと
やれることをやる
可能性にかける
勝つことにこだわった話
反省するメンバー選び
ボクの結果論――現在を軽視するな
ボクはボクらしく
あいまいな国語教育の中から
今やれることをやる
おわりに
付記  富一軟式野球部の生いたち
参考文献
著者プロフィール

[担当からのコメント]
スポーツ競技は結果へと至るプロセスの中に価値があるというのはまぎれもない事実ですが、その一方でスポーツ競技の多くは勝敗があって、勝利してこそ意味があるという様に考えることもできます。特にそれが学校の部活動である場合は、そうした問題はより顕著になるのではないかと思います。その意味では、本書は「勝利至上主義」の本ではなく、学校スポーツが抱える矛盾と向き合った一人の指導者の、指導の軌跡を形にしたものです。スポーツを通じた教育に関心をもつ全ての方にお薦めしたい一冊です。

[著者プロフィール]
田畑 良昭(たばた よしあき)

1948年生まれ、富山県富山市出身
東京都立大学人文学部教育学専攻卒
国語教師として富山第一高校に勤務

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