あなたの内なる道鏡へ ―歴史の歪みを正したくて—

(著) 本田義幾

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―道鏡は、あやしくも好色でも悪逆でもない―
奈良時代後半の僧であった道鏡は、「道鏡事件」に代表されるように、これまで「自ら天皇になろうとした悪人」あるいは女性であった孝謙天皇をたぶらかした「妖僧」などの汚名と共に語られてきた。しかし正史である『続日本紀』を繙いてみると、道鏡についての記述には逆臣や逆賊といった言葉は一つも見られず、江戸期までの歴史書を見てもそれは変わらない。では道鏡に関する悪しき言説は、いかにして生まれたのか。本書では、道鏡にまつわる史料や各地に残る伝承を訪ね歩き、僧として政治家としての道鏡の実像とその姿を不当に歪めた日本の歴史教育の特異性を明らかにしていく。

[目次]
あなたの内なる道鏡へ
まえがき
第一章 道鏡は隠されている
一、「ト」とは誰か―双林寺所蔵「薬師如来略縁記」の一考察―
二、消された「法皇」と切り取られた裏表紙
三、道鏡伝承が消されている「ゆかり」の地
第二章 道鏡はでているけれど…
一、男根と共存の道鏡
二、戦前小学校歴史教科書に現れた道鏡像
第三章 道鏡を慕う伝承が残っている
一、伝承の地
二、ゆかりの寺
第三章 伝承と事実
一、百万塔に関して
二、伝承を確かめる
追記 大阪府八尾市弓削町、東弓削
さいごに
あなたの内なる道鏡へⅡ
序として
第一章 明治以前の歴史書での道鏡についての記述をみる
一、正史『続日本紀』にみる
二、江戸期までの歴史書などに見る
第二章 道鏡が悪人視される根源をさぐる
一、概観的に
二、戦前の小学校教科書を見て
三、戦前の教師用解説書にみる
四、戦前の試験問題に見る
第三章 道鏡の悪人視は今ものこっている
一、出版された本に見る
二、戦後の小学校教育のなかで
三 大学予備校での講義にみる(我が子が使ったテキストから)
四、道鏡の出身地と没した地では
第四章 道鏡見直しを
一、道鏡事件でみる
二、道鏡に対する好意的な見方をさぐる
三、道鏡は戦後見直されたでしょうか。
補足1 男根道鏡説を愚考する
一、好色巨根説
二、(性神)道祖神と道鏡伝承、
三、道鏡様と生殖器崇拝
補足2『続日本紀』宇佐八幡神託事件地の文をみる
補足3 たまにいわれる道鏡=ラスプーチン説に関し
おわりに
弓削地名一覧について

[担当からのコメント]
歴史が学問であるためには、先行研究のうえに立ちながらも時にそれを疑う目線が必要ですが、その意味では道鏡に関する言説の多くは歴史学とは言えないものなのだろうと思います。歴史を鵜呑みにすると容易に思想や宗教に変貌する、道鏡はそんな悪しき実例なのかも知れません。本書を通じて、ぜひ一人でも多くの方の道鏡の本当の姿を知っていただければ嬉しく思います。

[著者プロフィール]
本田 義幾(ほんだ・よしちか)

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