「こころ」と「からだ」のリアリズム

(著) 種村完司

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作品詳細

――実体二元論を唱えた近世哲学の祖と言われているフランス生まれの哲学者は次のうち誰でしょうか。
1.イマヌエル・カント、2.ジョン・ロック、3.ルネ・デカルト
正解は、本書 心身論へのインビテーション をご覧ください。

哲学者や思想家により繰り返し取りあげられ追求されてきた「心-身」の問題、われわれにとって一番身近な存在であり、われわれ自身のことでもある「こころ」や「からだ」に関わる心や身体の本性、心と身体の関係は簡単に結論が出せそうにない難問である。知覚や感覚による認識論、感情・情動・情念・理性・欲望などによる感情・意志論、労働やコミュニケーションによる社会的行為論のそれぞれの領域で、いわゆる心身の問題をめぐってどんな理論的問題が発生し、解答を与えていくのか。「身体と精神」「物と心」という二元的な枠組みから、現実世界の中で生き生きと活動し自己形成していく人間身体を重視した「自然的かつ文化的な身体」を軸にした心身一元論こそ明らかにされるべき道であると著者は考える。心身問題はわれわれ人間の日常生活・社会的活動すべての活動領域に現われる基本問題であり、本書はいろいろなレベルや側面からアプローチすることで心身問題に光を示す一冊である。

[目次]
心身論へのインビテーション
第1章 心身関係の現在
1 心と身体をめぐる「病理」と課題
2 心身への哲学的アプローチ
第2章 対象認識と自己認識における心身
1 身体と感性的認識
2 抽象的認識と心身
3 自己についての認識と身体
4 認識における身体の意義と限界
第3章 感情と意志における心身
1 感情における心身
2 感情と自由意志
3 心身の「社会化」
第4章 社会的行為や人間関係における心身
1 社会的活動と心身
2 コミュニケーションにおける心身
3 文化の継承と心身問題
第5章 現代心身関係論の諸相
—素描と批評
1 現象主義的心身論との批判的対話
――大森心身論,廣松心身関係論,市川身体論によせて――
2 心身二元論と創発主義的唯物論
――ポパー,エクルス, ブンゲの諸説によせて――
参考文献
あとがき
「現代批判の哲学」刊行のことば

[出版社からのコメント]
本書を拝読するまで、自分自身のことでもある「こころ」と「からだ」は精神的・肉体的区別としてのみ捉えていましたが、心身問題の本性や所在、関わりなどを突き詰めると様々な分野での分析や研究が不可欠になるほど驚異的・神秘的な存在なのだと改めて考えさせられました。本書を通して、知覚し思考する自己自身の認識、感情や意志という実践的な意識形態の中での身体の働き、社会的な場面での心身の関係を踏まえ、今後、自分の心と身体をどのようにつくりあげるのか、優れた心身関係を実現するにはどう行動し、どう生きたらよいかを考え、多くの方にとって生きていく上での糧になっていただければ嬉しく思います。

【著者プロフィール】
種村 完司(たねむら・かんじ)

1946年、名古屋で生まれる。 京都大学文学部、京都大学大学院博士課程を経て、1977年以降、鹿児島大学教育学部で講師、助教授、教授を務める。1996年、博士(社会学)号を取得[一橋大学社会学部]。 鹿児島大学副学長(2003~2007) 、鹿児島県立短期大学学長(2010~2016)を歴任。 現在、鹿児島大学名誉教授、および鹿児島県立短期大学名誉教授。

主な著書
『近世の哲学者たち』共著 三和書房 1979年
『哲学のリアリティ』共著 有斐閣 1986年
『「豊かな日本」の病理』共著 青木書店 1991年
『知覚のリアリズム-現象主義・相対主義を超えて-』単著 勁草 書房 1994年
『心-身のリアリズム』単著 青木書店 1998年
『コミュニケーションと関係の倫理』単著 青木書店 2007年
『『葉隠』の研究』単著 九州大学出版会 2018年 

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