自閉症スペクトラム発症の謎を解く:高機能アスペルガー障害は、話ことば獲得障害

(著) 別府真琴

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作品詳細

[商品について]
―自閉症スペクトラム解明に求められる言語機能からの研究―
これまで、明確な根拠もないままに先天的に起こるものとされてきた「自閉症スペクトラム」。専門家だけでなく、障害を持つ本人たちも先天性説を鵜呑みにしている現在の状況は、自閉症者の療育のみに関心が集まり、成因研究は成されないままに置き去りにされる危険性を孕んでいる。本書では、前著『なぜ自閉症になるのか――乳幼児期における言語獲得障害』で先天性説を否定し後天性説を新たに提起した著者が、看過し得ないこうした傾向に鑑みて、親子の人間関係を基点とした合意的コミュニケーション相互作用、共感・共鳴の関係、同期などの概念から話ことば成立のメカニズムを解明した前著に続き、高機能アスペルガー障害児の視点、様態を理解することに要点をおき、出版されている手記やサルトルによるフローベールの評伝などを参照しながら、自閉症の成因としての言語獲得障害、とくに話ことばの獲得障害について論述していく。

[目次]
まえがき
はじめに
Ⅰ章 話ことば獲得障害
視線触発――相互模倣ゲーム
話ことばと固有感覚(からだのアイデンティティの形成)
自閉症スペクトラムにおいて、ミラー・ニューロン回路不全がある
ごっこ遊び(知覚的空想)の欠如
相互模倣ゲーム、視線触発の欠如は、自閉症スペクトラムを生む
定型発達者は言語概念で思考し、視覚優位の自閉症者は視覚イメージで思考する
空間知覚概念の異常
クレーン現象と人称代名詞
メタ認知障害(参考文献二)
親のハグの欠如の代替感覚が狭い空間を好むようになる
常識の欠如(参考文献二)
◆◆コラム◆◆「口承文化におけることばとからだの結びつき」を歴史的にみる
Ⅱ章 サルトルが遺したフローベールの評伝
サルトルは、なぜフローベールのあのような大部の評伝を残したのか
乳幼児期におけることばとのまずい関係
話ことばと読み書きことば
話ことば獲得のまずさ――合意的コミュニケーション相互作用構築の失敗
ギュスターヴの話ことば獲得の状態
馬鹿正直
こころのソフトは言語である、社会の構成要素・人間関係は言語である
母親のペルソナ(人柄、役割)
普通にはなれなかったが、大作家になった
Ⅲ章 口承世界を経ずに識字世界に入ってきた少年 ――カスパー・ハウザーの物語――
Ⅳ章 高機能アスペルガー――ドナ・ウィリアムズの物語
ドナの決心
築けなかった話ことばによるコミュニケーション
セオ・マレクのカウンセリング
ドナ・ウィリアムズの固有感覚異常
V章 高機能アスペルガーは話ことば獲得障害で起こる
『他の誰かになりたかった――多重人格から目覚めた自閉の少女の手記』
『変光星―自閉の少女に見えていた世界』森口奈緒美著、花風社、二〇〇四年
三〇代半ばでアスペルガーと診断された泉流星
高機能自閉症、ロビン・H
グニラ・ガーランド
Ⅵ章 総論――高機能アスペルガーは、話ことば獲得障害で発症
発症の要因のさまざま
補遺
乳幼児の電子メディア接触と言葉の遅れ(発達障害)
言葉遅れ相談事例
言葉遅れ三症例の映像解説
定型人間(健常人)の愛着発達と発達障害における愛着形成の頓挫
おわりに
本文注
参考文献
あとがき
著者略歴

[出版社からのコメント]
科学的な実証がなされる前に特定の考え方が社会に浸透することによって、ときに多くの悲劇が生まれることを、私たちは歴史の中で知っています。本書は、自閉症スペクトラムをテーマとしていますが、その射程は家族や社会をも見すえる広がりを持っています。本書を通じて、科学的な知見を日常に還元する視線を多くの方に持っていただければ嬉しく思います。

【著者略歴】
別府 真琴(べっぷ・まこと)

1939年大阪府豊中市生まれ。神戸大学医学部卒業後、神戸大学第二外科を経て、兵庫県立西宮病院外科部長。専門は消化器外科、特に肝臓胆道膵臓外科。
1995年退官。外科医時代から関心があった、西洋医学を基盤にしながらもその欠陥を補完する医療の研究に従事。
現在、別府内科クリニック院長。

著書『なぜ自閉症になるのか』(花伝社)、『意識呼吸のすすめ』、『自分らしさの「タイプB」』(どちらも朝日ソノラマ)

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