「健康な土」「病んだ土」
(著) 岩田進午
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――現在、地球全体で毎年どれ位の規模の大地が砂漠化・不毛化しているでしょうか。
1.30万ヘクタール 2.600万ヘクタール 3.9000万ヘクタール
正解は本書「二 人類が荒野を残す」をご覧ください。
「母なる大地」という言葉があるほどに、人間はその精神のよりどころを大地に求めている。にもかかわらず、土地の排他的な私有や計画性のない森林伐採、過放牧などにより、私たちは土の肥沃性を奪い続けてきた。私たちはこのまま土が痩せていくのを黙って見守るしかないのだろうか――。本書は、農林水産省をはじめ長く農業技術の研究に従事してきた著者が、土とそれを取り巻く環境がともに進化していく姿を写し出す土の進化史と、土と自然に介入する人間の営為を通じて、自然と人間とのかかわりを考えようとする作品である。土の肥沃性回復のための技術的側面に留まらず、農業の恩恵を受ける一般の消費者の行動変容も含めた「健康な土」を取り戻すための包括的な解決の道を探る。
[目次]
はじめに
序 土が危ない!
一 母なる大地への思い
1 文学に記されている土
2 祖先が残した〝黒い土〟
二 土が病んでいる――人類が初めて経験する異変
1 激変した農村
2 病んでいる土の姿
Ⅰ 土と人間のかかわり
一 人類が育んできた自然観・土観
1 自然と共生していた狩猟・採集時代
2 自然との共生にほころびをもたらした農業
3 農業の工業化――ますます広がる自然との乖離(かいり)
4 土の危機の激化――文明は大地を遠ざける
二 人類が荒野を残す
1 人の手による砂漠化と不毛化
2 何を変えればいいのか
三 自然との共生を求め続けた人類
1 「持続可能な社会」とは?
2 自然の力に依拠した農業
Ⅱ 土のしくみと進化
一 土とは?
1 土は三相からなる多孔質体
2 土は変化のルツボ――土も進化する
二 土の進化史の素描――誕生期から老年期まで
1 ブナ林の土を観る
2 どのようにして土の進化を推定するのか
3 土の誕生から成熟まで
三 壮年期までの土をめぐる物質循環
1 陰の主役――窒素固定生物
2 土中生物のはたらき
四 土も年をとる
1 生成を進め、老衰を助長する降水
2 白い土、赤い土は老いた土
五 土の進化を通して自然を見る
Ⅲ 土の「肥沃性」の鍵
一 植生の多様性が土を豊かにする
1 多様性と系の安定性
2 遷移、生産力と多様性
3 農業と多様性
二 土の進化とバラツキの強まり
1 土の進化は団粒化の歴史
2 土の進化・肥沃化とバラツキ
三 農地でのバラツキと土の肥沃性
1 耕起栽培と不耕起栽培
2 農地におけるバラツキと肥沃性
四 夢の実現を
Ⅳ 「健康な土」と現代農業
一 「健康な土」「生きている土」とはどんな土?
1 ホメオスタシスを示す土
2 土のもつ各種の緩衝作用
3 死んだ土とは?
二 土の危機をもたらすもの
1 炭素循環の破綻(はたん)
2 土中養分のアンバランス
3 農薬による生物多様性の低下
三 環境とのかかわりを考える
終 土はみんなの宝物
一 みんなで「病んだ土」の再生を
1 恵まれた日本の環境条件
2 「健康な土」が「持続可能な農業」を支える
3 再生への道を模索する
[主要な参考文献]
[出版社からのコメント]
近ごろ良く耳にするSDGsには陸の豊かさを守るという項目がありますが、本書では土を通した人と自然の関わりというテーマの中で持続可能性が語られます。先ずは本書を通じて、身近で私たちの生存に不可欠の存在である土から考えてみてはいかがでしょうか。
[著者プロフィール]
岩田 進午(いわた・しんご)
1930年東京都生まれ。東京大学農学部農業工学科卒。農林水産省農業技術研究所研究員、茨城大学農学部教授、(財)日本農業研究所研究員を歴任。日本土壌肥料学会賞、日本農業土木学会賞受賞。
主な著書『土は生命の源』(創森社)、『土のはたらき』(家の光協会)、『「土」を科学する』(日本放送出版協会)、『土のはなし』(大月書店)、『土のコロイド現象』(共著、学会出版センター)、『これでわかる生ごみ堆肥化Q&A』(監修・著、合同出版)、『生ごみ堆肥リサイクル』(共著、家の光協会)、『今日の地球環境』(共著、新日本出版社)など。
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