タイポグラフィの森へようこそ―本木昌造からマージナルゾーンまで、巡って辿って考える活字小論集

(著) 板倉雅宣

Amazon

作品詳細

[商品について]
――福沢諭吉著『学問のすゝめ』の初編活字版の表紙題字には、ある特徴があります。それは次のどれでしょうか。
1.「~のすゝめ」が片仮名だった、2.「~のすゝめ」が平仮名だった、3.「すゝめ」が漢字だった
正解は本書「『學問のすゝめ』活字版」をご覧ください。

江戸幕府の通詞であり日本における活版印刷の先駆者として海外にもその名を知られる本木昌造の足跡、「天ハ人ノ上ニ人ヲ造ラズ」ではじまる福沢諭吉の『学問ノスヽメ』の活字版にまつわる謎の調査、印刷した文字や画線の縁(margin)の部分に生ずる[くまどり]を意味する「マージナルゾーン」の語源など、日本の印刷の歴史は知れば知るほど奥深い。自らも長く印刷業界に身をおき、「第2回本木昌造賞」を受賞した著者が贈る、魅惑のタイポグラフィ論考集。

[目次]
まえがき
本木昌造の呼称
本木昌造 長崎ゆかりの地
一、生誕地
二、長崎会所
三、活字判摺立所
四、出島
五、飽の浦 長崎鎔鉄所
六、牢屋
七、昌造と小太郎の住居
八、新街私塾・新町活版所
九、活版伝習所
一〇 諏訪神社
一一、終焉の地
『學問のすゝめ』活字版
一、『學問ノスヽメ』
二、『學問ノスヽメ』初編活字版
三、活版初版に関する参考資料
四、福澤諭吉と平野富二の関係
五、活字版初版『學問のすゝめ』の活字
六、第四編―九編、十一編の活字
七、印刷局の活字サイズ
八、十七編の活字
九、まとめ
グーテンベルグが作った活字の高さをめぐって
一、グーテンベルグの四十二行聖書の活字の覆刻
二、活字を誤って印刷した記録から
三、古い活字の現物の高さ
四、おわりに
ギャンブルがつくった日本語かな活字
一、はじめに
二、ギャンブルとフルベッキとヘボン
三、カタカナ活字の登場
四、ひらかな活字の登場
五、かな活字のゆくえ
六、おわりに
マージナルゾーンの語源を探る
一、はじめに マージナルゾーンとは
二、辞書にはじめて載る。
三、はじめての記載一九四九年 相原次郎
四、元版A. J. Bull "Photo-Engraving" Edward Arnold & Co., London. 1934.
五、マージナルゾーンが使われている書籍は日本語に限られる
[史料] 中国の母型と活字に関する ホフマンの報告 日本語訳

[担当からのコメント]
毛筆やペン字などの手書きの文字は書き手の癖が見えて面白いものですが、本書を読むと活字にも手書きの文字に勝るとも劣らない個性があることが分かります。ときに猟犬のように鼻を利かせ、ときに名探偵のように思考を巡らせて歴史の中から真実を掬い取る、そんな奥深い活字の世界をぜひご堪能ください。

[著者プロフィール]
板倉 雅宣 いたくらまさのぶ

一九三二年 東京上野生まれ
一九五七年 千葉大学工学部工業化学科印刷専攻卒業
      東京書籍株式会社入社
一九九〇年 東京書籍印刷株式会社常務取締役
一九九四年 東京製版株式会社社長
一九九九年 退任

受賞
二〇〇七年 感謝状 印刷図書館
二〇〇九年 第二回 本木昌造賞 タイポグラフィ学会

おもな著作

『東京書印刷株式会社三十年史―教科書製造の変遷』執筆編集 東京書籍印刷株式会社 1999.
「本木初号活字版『単語篇 上』の紹介」『印刷史研究』第8号 2000.
『和様ひらかな活字』Vignette 03. 朗文堂 2002.
『活字―東へ』Vignette 07. 朗文堂 2002.
『教科書体変遷史』朗文堂 2003.
「本木・平野系初期活字見本帳」『日本の近代活字 本木昌造とその周辺』 2003.
「本木昌造の活版事業 その展開と行方」『日本の近代活字 本木昌造とその周辺』 2003.
「明治初期 官公庁印刷部門の動向」『日本出版史料』8号 日本エディタースクール出版部 2003.
「明治初期における活版の効用発見と手引き印刷機」『年報 印刷博物館 2003.』2004.
『号数活字サイズの謎』Vignette 12. 朗文堂 2004.
『教科書にみる印刷術の歴史』印刷朝陽会 2005.
『活版印刷発達史―東京築地活版製造所の果たした役割』印刷朝陽会 2006.
「本木昌造の活版事業とその展開と行方」大阪府印刷工業組 2006.
「日本最初の石版印刷物」『印刷雑誌』vol. 89. 2006.11.
「オランダ商館文書にみる長崎の印刷技術と活字」『タイポグラフィ学会誌 02』 2008.
「刷印から印刷へ 文部省『百科全書』底本と大槻文彦訳「印刷術及石版術」『印刷雑誌』vol. 91. 2008. 1.
「スタンホーププレス渡来の謎」『年報印刷博物館 2006.』 2010.
『東京書籍百年史』特別執筆 東京書籍株式会社 2010.
『かな活字の誕生 外国人の作った金属かな活字』印刷朝陽会 2010.
『ハンドプレス・手引き印刷機』朗文堂 2011.
「サイドベアリングの2つの解釈」『印刷雑誌』vol. 94. 2011. 3
「上海 修文書館のこと」『タイポグラフィ学会誌05』 2012.
「教育書肆 集英堂 山中八郎・橋本源七について 栃木県特有の活字を尋ねて」『タイポグラフィ学会誌06』 2013.
「江川次之進の事績と江川活版製造所の変遷」『タイポグラフィ学会誌07』 2014.
「印刷局の重要文化財スタンホープ型印刷機の来歴」『日本印刷学会誌』 vol 58. No.5. 2021.

新刊情報

       

22世紀アート
オフィシャルコーポレートサイト

百折不撓