スロヴァキア・スイッチ:陽気で愛すべき人々が生きる歴史、文化、そして現在
(著) 石川晃弘
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―家族を愛し心を尊び、力ではなく文化で生き抜く民俗の姿―
共産主義が人類理想の社会として語られていた1960年代末に、理論ではなく人々の日常生活から共産主義の実際を捉えなおすために訪れたスロヴァキア。それは現実そのものにどっぷり浸かり、とことん付き合うこととなった「スロヴァキア学」の第一歩だった――。酒と歌を愛し仲間を愛し、大国に支配されてきた歴史の中でも、明るい気持ちを保ち続け、貧しくとも陽気に暮らし、自分たちの文化を育んできたスロヴァキアの人々。本書は、友人として彼らと交流する中で得た体験をもとに、強力な軍事力や国際政治での影響力を持たず、文化に依拠しながら一つの民族として歴史と現代を生き抜くその生き様を描こうとしたスロヴァキア「実学」である。
[目次]
まえがき
プロローグ なぜスロヴァキアか
第1章 国土と歴史
民族と国土の起源伝説
霊峰タトラ
前史(八三三年~)
ハンガリー王国の時代(一〇〇〇年~)
チェコスロヴァキア共和国の時代(一九一八年~)
スロヴァキア共和国の独立(一九九三年~)
分離独立の是非――経済的には失策、心理面ではプラス
第2章 民族と言語
「民族」の根拠
スロヴァキア語の系統
スロヴァキア語の形成
スロヴァキア語の確立
「言葉」と「歌」
第3章 音楽文化と歌好きな人々
ヨーロッパ・スタンダードとスロヴァキア音楽
歌うスロヴァキア人
集会の席での歌
歌による来客歓迎
ポーランドとの比較――歌うスロヴァキア人、歌わぬポーランド人
第4章 民謡のテーマ
題材の地方性――ワインの歌、山賊の歌
兵役と民謡
山間地で歌われる「ドナウ川」
民族の歴史と厭戦歌
『おお牧場はみどり』の原詞と訳詞――似ても似つかぬ日本語バージョン
『森へ行きましょう、娘さん』の原詞と訳詞
原詞の日本的解釈――真面目な、あまりに真面目な
第5章 生活と価値観
スロヴァキアは農業国か?
農村の様変わり
人々の願望――物の豊かさから心の安らぎへシフト
価値としての「心」=「ドゥシャ」
価値としての「愛」=「ラースカ」
対人関係の最上の価値=「朗らかさ」
価値の序列
感謝と遠慮の間
受身の姿勢――一種の遠慮の表現
状況に柔軟に対応
第6章 仲間関係と相互扶助
近隣関係から仲間関係へ
仲間関係と助け合い――連帯の強さは日本人以上
仲間たちの集い
贈物のやりとり
コネと贈収賄の文化
第7章 祝日・休日の過ごし方
国民祝日と国民休日
クリスマスの風景
大晦日から元旦へ
冬の楽しみ
イースターと春の連休
夏の休日、秋の休日
連休の過ごし方
第8章 酒場の社会的機能
地域社会と酒場
スロヴァキアの酒
一気飲みの伝統
酒場での話題
第9章 話題としての政治と性
政治談議と政治参加
政談から性談へ
話題としてのセックス
オープンな性談義
冷やかしと笑い
第10章 宗教と宗派
国家と宗教
民衆の宗教意識
宗派別の分布
ローマ・カトリックとプロテスタント
対立から共存へ
東方正教の特徴――歓びと楽しさが一番の価値
ギリシャ・カトリックの生成――ルシン人の民族的アイデンティティの支柱
ギリシャ・カトリックのその後
諸宗派の共存と協力
第11章 国民と民族
国籍と族籍
主な少数民族――ハンガリー人に次いでロマが多い
かつての覇者、ハンガリー人
中世からいたドイツ人
ロマ
民族間の融合と共生
第12章 カルパチアの民
カルパチアの民、ルシン人
ルシン人の数と居住分布
木造の教会とキリル文字の言語
ルシン人の文化活動
独立ルシン派の主張
ルシン=ウクライナ派の主張
「スラヴ人」アイデンティティの模索
ルシン人のメンタリティ
民族差別はあるか
第13章 民族間の関係
諸民族に対する親近感
チェコ人観
オーストリア人観
ドイツ人観
ポーランド人観
ハンガリー人観
ウクライナ人観
ユダヤ人観
ロマ観
エピローグ 時代の流れと文化の持続
引用資料
[出版社からのコメント]
旧東側諸国の中でもスロヴァキアはまだまだ日本では馴染みの薄い国ですが、その民俗性や文化を知れば親しみを感じる人も多くいるのではないかと思います。本書を通じて、スロヴァキアとそこに住む人々を知る機会を持っていただければ嬉しく思います。
【著者紹介】
石川 晃弘(いしかわ・あきひろ)
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