黎明期のウイルス研究:野口英世と同時代の研究者たちの苦闘

(著) 鳥山重光

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[商品について]
―見えないものと闘う難しさ―
レトロウイルスのもつ逆転写酵素の発見よって著しい発展を遂げたウイルス研究は、ウイルスを病原体としてだけでなく医療への応用も可能としたが、その一方でコロナウイルスなど未知のウイルスと人類は、今なお終わりのない闘いを続けている。
本書は、そのウイルスについて、長年研究に携わってきた著者が、野口英世やサイモン・フレクスナーらの「濾過性ウイルス」をめぐる約20年にわたる苦闘、スタンリーによる(核)蛋白質結晶という全く新しい概念のウイルスの発見など、黎明期の植物ウイルスを中心テーマとして初期のウイルス研究の苦闘の歴史を振り返りながら、改めてウイルス研究を鳥瞰しようとした試みである。
コロナウイルスを生きる時代に、ウイルスを知りウイルスとは何かを考えるうえで、格好の一書となっている。
[目次]
第1部:欧米と日本における黎明期のウイルス研究
はじめに
Ⅰ ウイルスの最初の発見者
Ⅱ アメリカにおけるタバコモザイク病の研究
Ⅲ 日本におけるタバコモザイク病の研究
1 福士貞吉の米国留学とタバコモザイクウイルス研究
2 松本巍のウイルスの血清学的研究
3 平山重勝・湯浅明のタバコモザイク病の研究
Ⅳ ウイルス研究とロックフェラー医学研究所
1 Thomas M. Riversのウイルス研究
2 プリンストンに植物病理学部門を新設
3 Wendell M. Stanleyの研究を取り巻く環境
4 Stanleyの研究を支えた陰の功労者,Louis Kunkel
Ⅴ Stanleyのウイルス像,その哲学
Ⅵ 川喜田愛郎のウイルス像,その‘ゆらぎ’
Ⅶ 両極端のウイルスから始まったウイルス研究
Ⅷ 戦後復興と日本のウイルス研究
1 植物ウイルス学分野
2 医科学・獣医学・理学分野―ウイルス学会発足
おわりに
第2部:野口英世とロックフェラー医学研究所
はじめに
Ⅰ 1900年代初めのアメリカの医科学
Ⅱ 野口英世にむけられた哀悼文
1 テオバルト・スミス博士の哀悼文
2 ウイリアム・ウェルチ教授の哀悼文
3 サイモン・フレクスナー博士の哀悼文
4 哀悼文からみた野口英世像
Ⅲ ポール・クラークが描いた野口英世
Ⅳ 野口の原著論文とその研究業績の評価
1 梅毒菌トレポネマと培養成功
2 黄熱(Yellow Fever)の病原体研究
3 小児麻痺(ポリオ)の病原体培養
Ⅴ ウイルスの培養と野口英世
1 野口とルヴァディティのウイルス培養
2 プレセット女史による野口英世「批判」
3 ウイルスとコッホの条件の変更
Ⅵ#ポリオウイルス研究とフレクスナーの誤算
Ⅶ ウイルス培養と細菌学パラダイム
Ⅷ 野口英世に対する中傷はいつまで続くのか
おわりに
(資料編)
1 19世紀半~20世紀初期のアメリカの繁栄
2 ロックフェラー財閥の慈善事業
3 黄熱とロックフェラー財団―国際保険部
――野口の黄熱病研究とかかわった関係者――
あとがき

[出版社からのコメント]
本書は、ウイルス研究について必要以上の専門用語を使わず、一般の方にも読みやすいように書かれた作品です。コロナウイルスの治療薬の開発が大きな関心事となっている今、ウイルス研究の歴史を振り返ることは大きな意義があると思います。
本書を通じて、ウイルスやウイルス研究について多くの方が関心を持っていただければ嬉しく思います。

【著者プロフィール】
鳥山 重光(とりやま・しげみつ)
1939年生まれ。青森県現むつ市出身。東京農工大学・農学部卒。
東京大学大学院農学系研究科修了,農学博士。
1968-1986年,東京大学農学部(文部教官助手);1977-1978年,オランダAgricultural University, Wageningen(Dept. Virology)に留学。1986-2000年,農業生物資源研究所,農業環境技術研究所(環境生物部,上席研究官)。2001年-2010年,明治大学農学部(講師):ウイルス学概論,植物ウイルス学,大学院特論担当。
主な研究業績内容:「イネ科植物のウイルス病とウイルスの分類学的研究」,「植物ラブドウイルスと転写酵素」,「イネ縞葉枯ウイルスの精製と病原性に関する基礎的研究」,「イネ縞葉枯ウイルスの糸状粒子に付随したRNAポリメラーゼ」,「日本産テヌイウイルスのゲノム解析;Tenuivirus属ウイルスの系統関係」,「遺伝子組換えイネ作出(共同研究)」など。1999年,日本植物病理学会賞受賞。

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