南極と氷河の旅: 元南極探検リーダーが語る雪と氷の世界
(著) 成瀬廉二
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一九六七年、北海道大学の大学院一年生のとき南米パタゴニア探検隊から誘いの声がかかり、未開の地で氷河を探索し、氷河の予察的調査を行ったことが、私のライフワーク「氷河」の出発点となった。その翌年(一九六八)、少年期からの希望がかない第十次南極越冬隊に参加することになり、南極大陸の内陸氷原上で一年半、雪と氷の探査や計測に携わった。
本書は、過去五十年間の南極と氷河の活動や見聞を語り、地球環境や極地の諸問題を論評するエッセー集である。
全体が四つの章に分かれている。一・[南極と氷河=探検から観測へ=]は、私の主要な研究場であった南極とパタゴニアにおける行動記の一側面である。一九七〇年頃までの南極の活動は、未知に近い地域を探り、調べたので「探検」的色彩が強く、その後の南極や氷河では、精密なデータを得ることに重きをおいたので、観測や調査といえる。
次の[地球環境と氷]には、地球温暖化、環境、越冬生活、南極の自然から、氷床、氷山、氷河まで実に雑多な話題が盛り込まれている。
三・[氷河のサイエンス]は、氷河に雪が積もり、氷となり、環境を記憶し、流れ、年とともに変化する過程、すなわち氷河学の中心軸を解説したものである。氷河の研究に無縁であっても、氷河の映像を見たり、外国旅行の折に氷河を訪れたとき、知っておいたら喜びと感動が増すであろうとの思いで執筆した。なるべく取りつきやすく、読みやすくと心掛けたが、サイエンスは正確性を欠くことができないので、部分的にはややくどい記述もあるかもしれない。
最後の[氷河紀行]は、研究の第一線からリタイアした二〇〇六年以降二〇一二年までに、妻との二人旅で訪れた国や地域の旅行記である。当然、旅行自体は歴史や文化の観(鑑)賞も多く含んでいるが、ここでは主として氷河と環境に関わる見聞と所感をまとめたものである。
書物は一般に、ストーリーのあるものに限らず、基礎から応用とか、時間軸に沿ってとか、初めから最後まで順序よく読まれることを想定しているのだろう。しかし、本書はどこから読んでいただいても良いし、固い、ややこしいと思ったらその項は飛ばしても差し支えない。そして、気が向いたら、また戻って来ていただきたい。
【著者プロフィール】
成瀬廉二(なるせ・れんじ)
1942年、京都生まれ。
北海道大学理学部卒業、北海道大学大学院理学研究科修了。理学博士。
北海道大学低温科学研究所 助手・講師・助教授(1968~2006年)。
第10次南極越冬隊員(1968~1970年)・第14次南極越冬隊内陸調査リーダー(1972~1974年)・第34次南極観測夏隊長(1992~1993年).パタゴニア氷河調査隊リーダー(1983~2003年:計10回).NPO法人 氷河・雪氷圏環境研究舎代表(2006~2018年)、放送大学鳥取学習センター客員教員(2009~2013年)、鳥取大学教育センタ-非常勤講師(2009~2018年)
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