若者こそ、われわれの世代を超える可能性を持った存在である:大学の教壇から見る現代の若者論

(著) 井沢良智

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作品詳細

[商品について]
―若者はどう変わり、どう変わっていないのか―
近ごろの学生は変わった――、とよく言われる。本書は、大学で教壇に立ち、学生と向き合って30数年を過ごしてきた著者が、自身の実体験を中心に、彼らの置かれている状況を論じた若者・学生論である。若者はどう変わったのか、どう評価されているのか、今後どのように生きていくのか、一筋縄ではいかないこうした問題に、社会や教育、海外からの視点も交えながら、若者・学生へのエールを込めて切り込む。

[目次]
はしがき
電子版に寄せて
第1章 なぜ若者論・学生論なのか―批判と評価の狭間で
はじめに
硬直的な見方、認識を脱して見直してみたい
教員たちは若者にどう相対しているか
私たちの後継者である若者たち
若者(学生)はどう変わったのか
枠に入り、枠を出て行く成人化のプロセス
時代の申し子、時代を背負うランナーとしての若者
普通の大学、マジョリティーの存在性
送り出したあとに十数年経って問われる枠作りの成果
事件発生率で先進国に優位な日本がなぜ教育危機なのか
「学力低下」よりも「生活力の低下」がなぜ問題なのか
学校だけに特定できない問題の所在
教育の原点をどこに置くか
どこの大学にもいる意欲ある教員と学生
おわりに
第2章 学生・若者たちはどう評価されているのか―変わり変わらぬもの
教壇で相対しながら
学生の基礎学力の低下を私大教員はどうみているか―公式調査から
生活力低下が学力低下の真因だとする指摘を深耕する
親も教員もたどれない変わりようの軌跡と対応の可能性そして限界
若者たちの打ち込む世界と私たちの価値観の狭間で
若者たちの力で成功した事例はいくらもある
問われるのは緊急対策と長期に及ぶ本質の追究
まだ差はあるが、内面の充実で変わり、差を埋めていく学生たち
昔は確実に変わったのに、様相の違う近年の学生
日本、日本の若者の見られる視点
すべてで日本が劣っているのではない
第3章 日本はどう見られているのか―彼我を直視できる旅をこそ
国際交流の初期―大きな刺激だった海外からの若者たち
海外との交流は日本を見直し考える契機
国の評価はプラスもマイナスも後の世代まで
アジアとの共生をどう築くか―歴史と債権・債務一切を引き継ぐ次世代
彼我を直視する公平、公正な視座こそ
ちなみに……
アジアの経済発展における日本の役割と海外の評価
異質性になじみきれない日本的偏狭性
異質性になじめずカルチャー・ショックに翻弄される日本人
議論に弱い日本人学生にも可能な小さな試み
メジャー大学から受けた大いなる教訓
紙一重の理解の壁と多様性を理解する高い感受性
異質性よりも同質性を発見する意外な契機がある
おわりに
第4章 若者の進路、ビジネス社会―その可能性と条件を探る
はじめに
生活の基盤である職場をどう意味づけるか
企業の社会性とビジネス現場との関係性
企業世界、ビジネス社会とは
日本型雇用慣行への異なる反応と雇用護持のコア・コンピタンス
企業世界、ビジネス社会
雇用確保に挑む企業対応の意味するもの―連帯的対応と労使間対話の不可避性
ビジネスの秩序にどう参加するか
就業環境の日本的特性と雇用条件の劣化論
日本的雇用構造の柔軟性と双務契約の非対等性
女性・高齢者の能力開発と雇用拡大
能力主義の動きに現実にどう対処するか
企業行動との共通性はマクロの世界にも
むすびに代えて
第5章 競争とグローバル化の時代に生きる―組織人として個々人として
日本的経営を再評価し護持できないものか
なぜ日本型システムはきしみを起こしたのか
新思考の経営で日本的経営は存立できるのか
転換の時代を迎えた日本人の職業観
自ら問い自ら答えるべき日本的思考と行動様式
雇用差別の陥穽と日本企業、ビジネス人に必要な新思考
外国方式と日本でやっているやり方とは同じではない
高齢化・成熟経済への適応に問われる能力
創造力の涵養と組織、個人のコンピタンス
グローバル化時代にあっても残すべき日本型システム
おわりに
第6章 ムダの効用―あるはずの余力でトライを
次世代の礎である若者へのエールとその選択肢の日常性
卑近な日常性にある選択肢―動機、そして実践
何をどこまで語るか、どんな効果が上がるのか
変わらないが、変わることもある若者の可能性
モデルになるケースはないのか―理念を固め、実施の方策を練る
教育への公的支出に日本は遅れている
学生たちの青春、若者のハイデルベルグを
どこに楽しい溜まり場があるか―まだ多く残る学生街
私語に関する考察
どう総括してどう将来を見定めるか
やらないと決め付ける前に試すのがマシではないか
あとがき

参考文献
《著者紹介》

[出版社からのコメント]
近ごろの若者は・・・という言葉には、否定的な意味合いが込められていることが多い様に思いますが、その若者を作り上げたのは自分たちが生きてきた時代・時間であるということにも目を向ける必要があるでしょう。本書で取り上げられるテーマは様々ですが、それは若者や学生の問題が多様で複雑であるということでもあります。若者を取り巻く日常生活者の一人として、またかつて若者だった頃を思い出しながら、本書を多くの方にお読みいただければ嬉しく思います。

【著者紹介】
井沢良智(いざわ・よしとも)

1938年 長崎県に生まれる
1961年 京都大学法学部卒業

民間企業の勤務を経て30歳代の最後に大学に転身し、2つの大学に勤務後1980年に九州産業大学経営学部に。
経営学部国際経営学科、大学院経営学研究科教授
担当―国際経営論、多国籍企業論、経営戦略論ほか

著作―「日本企業のグローバル化対応の戦略行動」、経営行動学会『経営行動研究』第17号、2008年。A Strategic Redesign of Japanese Firms in the Era of Globalization,『経営学論集』第18巻第4号、九州産業大学経営学会、2008年。『北東アジアの経営教育の調査と研究』九州産業大学産業経営研究所第40号、2008年。『経営グローバル化の課題と展望』(編著)創成社、2003年。『日本企業グローバル化の構図』創成社、1996年。Business Management and Practices of Japan, Doing Business in Asia-Pacific Region Countries-Japan, Korea & Russian Far East, Kim. J and V. T. Shishmakov(eds), 2002.ほか多数。

2009年に九州産業大学を定年退職、同大学名誉教授。
招請を受け、九州情報大学教授に。現在同大学でも名誉教授。

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