愛語の奇跡

(著) 吉岡二郎

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作品詳細

「愛」という言葉における精神的な美しさには、その理念の深いテーマが存在していて、愛という言葉に関する“美と哲学”とが混然一体となって表れている。
 だから「愛」という言葉には、例えば隣人愛とか家族愛とか、あるいはまた神への愛とか恋愛とかいった具体的な愛というものがあって、それとともに「愛」という“言語”が存在するという二重構造になっているのだということが分かるのである。
 しかし、そういった概念的な説明には、多くの人々は満足しないであろう。もっと魂に基づく「愛」を求めているであろう。そこで吉岡二郎氏の『愛語の奇跡』における良寛禅師の「愛語」が、ものすごいばかりの精神性を持って迫って来るのだ。そのお言葉には「徳あるは褒むべし、徳なきは憐れむべし」とあるのだが、これをまかり間違っても西洋哲学におけるような倫理的概念で捉えたらならば、道が違う。これが仏教哲学における「徳」という理念に基づくものであるからこそ、その説得力が増すというものだ。
 「言語するは愛語なり」というお言葉には、真の意味での“言語”に対する想いが伝わってくるし、また「知るべし愛語は愛心より起こる」とはまさに革新的“愛”論である!
 さらに驚くべきは、吉岡氏の着眼点の見事さは、「こころの優しさ」を表す語が「愛語」なのだという視点に関してであって、心理学的にとか倫理学的にとかいうように、いわゆる“学問”としての「愛語」を語っているのではないという点なのである。このことは本書のタイトルが『愛語の奇跡』とあるように、これはまさに“奇跡”以外のなにものでもないということの確たる証拠であろう。

著者プロフィール:
吉岡二郎(よしおか じろう)
昭和8年 長岡市生まれ
新潟大学卒業後、教職に就く
桐島小学校勤務時代に木村家に下宿
以後、良寛を敬慕、研究
教諭、教頭、校長を経て退職
教育委員会に5年間、勤務
著書『島崎における良寛』ほか

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