山妖記
(著) 森下征二
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[商品について]
―言葉の刃が切り裂く心の闇から、人の業が零れ落ちる―
日照りによる不作で山も村も飢えに苦しんでいたある秋の終わり、鬼が棲むと噂される羅刹ヶ嶽に多聞丸と次郎太という若い二人の兄弟が獲物を求めて鹿狩りにやってきた。しかし家族を食べさせるため危険を冒して山に入った兄弟は、いくら待っても獲物が現れる気配がないことに次第に焦りを感じ始める。その時どこからともなく異様な臭気が漂ってきて、それが鬼の毒気だと気づいた兄の多聞丸は、暗闇の中なす術もなく捕まってしまう。何とか弟の次郎太に鬼の存在を伝え、次郎太が兄を掴む鬼の腕を射貫いてからくも逃げのびたものの、村に戻って鬼の腕を確かめた兄弟は、そこに見覚えのある三日月形の傷を見るのだったーー紀伊の自然を舞台に母と子、兄と弟、それぞれに抱えた心の闇が交錯する「山妖記」をはじめ、人間の生と業を透徹した筆致で描いたオムニバス短編集。
[目次]
山妖記
奈落の蛍火
泰衡の母
滅亡の賦 ――大盗袴垂始末記――
オムニバス・豫譲
仮面の刺客
著者略歴
[担当からのコメント]
読み手の心に鮮やかにさざ波を立てる短編小説に出会ったとき、長編小説とは違った独特の魅力ある味わいを楽しむことができますが、本書に収められているのはそんな魅力を持った作品ばかりです。歴史ものから現代ものまで、バラエティに富んだ短編の饗宴をぜひごゆっくりお楽しみください。
[著者略歴]
森下征二(もりしたせいじ)
1941年広島県広島市生まれ
定年を機に同人誌活動を開始。「慧」、「さくさく」、「まんじ」を経て現在「文芸復興」同人。
中国並びに日本の歴史小説を執筆中。
著書に
『釵頭鳳』(彩流社「歴史のみち草」所収)
『燕王の都』(鼎書房「現代作家代表作選集第7集」)
『泰衡の母』(「文芸思潮」第77号所収)
『謎の東丹国使』(鳥影社)
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