きのくに・神野の里:歴史の情景の中の日本と、山村の生活
(著) 森下和彦
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―激動の時代を生きた一つの人生から見える故郷、そして日本の風景―
和歌山県の海南市から東へ高野山に登る高野街道沿いにあった村で、現在は紀美野町の一部となっている下神野村。父・彦次は、明治43年に高野山の麓にあたる、この下神野村大字野中で生を享けた。本書は、日本が近代化を推し進め、古くからの文化や生活習慣から西洋近代の価値観へと変わりゆく中で、父・彦次の生活をひとつの軸として、彼が見てきた大正・昭和前期の日本の移り変わりと、平安時代の荘園絵図で有名な神野庄といわれた和歌山県北部山村の産業・習俗について、できるだけ読みやすい形で書き残そうと綴った作品である。故郷の歴史と文化を伝え残すと同時に、明治から平成までを生きた一つの人生を通じて、日本の近代を俯瞰するうえでも格好の内容となっている。
[目次]
序にかえて
第1章 ふるさと 神野の里
山あがり
野中のようす
下神野村の概観
平安時代の荘園絵図
鳥羽上皇の熊野詣
高野山領としての神野庄
江戸時代の神野の里
戸籍の整備
にぎわう街道筋
下神野村の運送業
龍神街道
集落間の道
高野街道
花折坂と当時の家
有田川筋への往還
清水や神野の和紙
索道の開通
かわりゆく神野市場
子どもの仕事や食事
第2章 東京の生活
故郷を出る
問屋の丁稚
関東大震災
盛んな通信教育
娯楽
徴兵検査
番頭待遇
第3章 戦時社会へ
国境守備隊
新兵教育
軍隊内のいじめ
満州事変の勃発
二・二六事件
再度の召集
日中戦争の拡大
前線基地の朝鮮
中国での駐屯
国民生活の切迫
太平洋戦争の始まり
強まる兵役義務
兵役を終えて
第4章 故郷で銃後の生活
疲弊した農山村
軍需工場と徴用
在郷軍人会
青年学校
食料の買い出し
衣料切符
厳しくなる世相
爆撃される製油工場
敗戦への道
戦争の終結
第5章 戦後の再出発
ヤミ物資の取り締まり
続く食料難
山菜やキノコ採り
激しいインフレ
伝染病の流行
中学校の新設
衣料事情
農地改革
少ない娯楽
第6章 神野の農業や産業
下神野の柿
野上谷のしゅろ
しゅろ加工の方法
しゅろ産業の歴史
水利権としての時水
小作農家
牛の訓練
残っていた昔の農機具
田植えや農家の休日
山仕事やハゼ栽培
養蚕業
第7章 神野の風俗習慣
村々のお寺や神社
堂徒と賦銭
山上参り
結婚式と御方よろこび
お通夜や葬儀の準備
野辺送り
両墓制
こつのぼし
おちゃと
正月行事と樽酒
塩サバ焼き
初午の餅まき
お盆と生石参り
十三神社の秋祭り
野上谷の方言
第8章 ふるさと春秋
終戦後の小学校
小学校の運動会
七・一八水害
川遊び
ジャコ捕り
野山の食べ物
食べた昆虫や魚介類
自然の中で
子どもの遊び
おわりに
参考文献
著者略歴
[出版社からのコメント]
国家という大きな歴史は、国民全体を巻き込んで避けがたい一つの運命へと導きますが、その大きな流れの中でも、それぞれの地域や人々が生み出し続けた個々の歴史は、抽象的な大文字の歴史ではなく人間らしい血の通った歴史として、学び伝えるべきものなのだろうと思います。本書を通じて、私たちの国の近代がいかなるものであったのか、一つの故郷の歴史・文化とともに味わっていただければ嬉しく思います。
【著者略歴】
森下和彦(もりした・かずひこ)
1941年(昭和16年)12月 海南市生まれ。
和歌山県海草郡美里町(現紀美野町中)野中で育つ
著書に
小説 高野騒動 高野山寺領の強訴
戦国歴史小説 雑賀孫一と信長
共にPOD版とデジタル版がある。
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