森から自然と人のつながりが見える──「森の季節学」フィールドノート
(著) 渡辺隆一
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―豊穣で精緻な森のリズムを楽しむ―
季節の変化と共に驚くほど豊かな表情を見せる森。まるで森の壮大な舞台劇でもあるかの様なその変化は、多様な生き物によって成り立つ長く豊かな相互関係のなかで決まってきたものであり、決して偶然にそうなっているのではない。本書は、志賀高原の自然教育園で自然調査と観察会を二〇年ほど続け、また信州大学で環境問題を解決するための環境教育に携わってきた著者が、ただ個々の事象を観察するだけではなく、そこに森の全体を動かしている多くの動植物の豊かな関係を見いだす「森の季節学」を、志賀高原やボルネオなどでの定点観測の実例を交えながら、豊富な写真と共に分かりやすく解説した作品である。
[目次]
第1章 志賀(しが)高原での定点(ていてん)観察 ──森の表情を読む
1 一年三六五日を写真にとる
2 高原の森の四季(しき)
早春──空白の季節
春──うっすらと大きくなる森
遅霜(おそじも)──木々それぞれの〝対策〟
初夏──「今年の新緑は美しい」
夏──濃い緑は四カ月
秋──紅葉(こうよう)と黄葉(こうよう)
冬──雪原(せつげん)の足あと
光の春──野鳥(やちょう)たちの待ちかねたさえずり
3 植物たちの一年(植物季節)
タカネザクラの植物季節──亜高山帯(あこうざんたい)の生活者
ミズナラの植物季節──山地帯(さんちたい)の生活者
第2章 植物季節調査からわかったこと
1 開花・結実(けつじつ)にみる植物季節
開花の時期をずらす植物たち
なぜか、木の花は春、草の花は秋
2 芽ぶきと紅黄葉(こうこうよう)からわかる四季の区分
生育形と芽ぶき
季節ってなんだろう
3 標高(ひょうこう)で変わる季節 ──植物は異なる季節のリズムをもっている
〝花は里から、紅黄葉(こうこうよう)は山から〟を調べる
植物によって異なる開花期と結実期(けつじつき)
芽ぶきや開花がおりなす森の表情
4 年によって変わる季節──「今年の紅葉(こうよう)は美しい」のはなぜ
5 自然観察に生かす植物季節
第3章 日本の森の定点観察
1 高山(こうざん)のハイマツ林(りん)の四季
2 山地のブナ林(りん)と河辺林(かへんりん)の四季
ブナ林(りん)──なぜ芽ぶきがずれたり、四~五年おきの豊作年なのか
河辺林(かへんりん)──川に治って帯状にならぶ林
3 低地のシイ・カシ林(りん)の四季(しき)
冬──でも林の中は緑のまま
早春──低木の若葉が開きはじめる
春──花を葉より先にして虫をよぶ
初夏──シイやカシの芽ぶきと開花
夏──ネムノキの紅(あか)い花がひときわあざやか
秋──紅黄葉(こうこうよう)は一二月になる年も
第4章 ボルネオで見る熱帯の定点(ていてん)観察
1 熱帯の季節変化
熱帯の植物の開花期
熱帯高山の植物季節
2 ボルネオの熱帯雨林(ねったいうりん)
熱帯雨林との出会い
熱帯の生活
熱帯雨林とその歴史
第5章 「自然」から「環境」へ
1 原っぱの虫たち
2 自然を客観的な事実として調べる
3 失われてゆく自然を守る運動──房総(ぼうそう)半島で、長野オリンピックで
4 私たちは自然とどんな関係をもつのか
おわりに
著者略歴(2000年4月)
[出版社からのコメント]
現在私たちが直面している生態系を始めとする地球環境の変化を考えるためには、人間だけではなく森の視点からアプローチすることも重要だろうと思います。森の変化を愉しむだけでなく、本書がそうした視点からも事象を見るための一助として、多くの方にご活用いただければ嬉しく思います。
[著者略歴(2000年4月)]
渡辺 隆一(わたなべ・りゅういち) 文・写真
一九四七年生まれ。東京にも原っぱがありトカゲやカエルと遊び、夏休みには田舎で虫捕り。大学では生態学を学び、富士山や房総各地で野外調査を行ってきた。そのなかで、失われる自然をたくさん見て、自然を守る運動もしてきたが成功は少なかった。長野県北部、志賀高原の自然教育園に勤務し、自然調査と観察会を二〇年ほど続けた。現在は、信州大学教育学部で、地域から地球規模まで、環境問題を解決するための環境教育に力を入れている。現在、信州大学教育学部教授。
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