大伴家持と万葉集への道
(著) 八木喬
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―古の大き聖の言の宣しさ―
神亀5年、大宰府帥大伴旅人に招かれ邸宅に向かった筑紫国守山上憶良は、坂上郎女から元正上皇に託された想いを伝えられる。それは旅人と憶良の力で筑紫歌壇を形成し、下火となって久しい倭歌を復興させることだった。 旅人や憶良の詠んだ歌を集めるだけでなく、旅人や憶良に歌を詠ませる機会も作ろうと精力的に働きかける郎女の想いは、やがて「梅花の宴」となって実を結ぶ――。 万葉集を代表する歌人である大伴旅人、山上憶良、大伴家持の歌の人生を、揺れ動く時代の流れの中で追った、新しい万葉歌の物語。
[目次]
まえがき
*万葉集の倭歌の表記について
* 第一部 遠(とお)の朝廷(みかど)の歌
一 魂振(たまふ)りの使者、太宰府へ行く
二 遠(とほ)の朝廷(みかど)のある街で
三 『梅花の宴』、そして帰京へ
第二部 大伴家の人びと
四 大伴家の女たち
五 大伴一族の集まり
六 多治比家を訪ねて
第三部 青春の歌と恋
七 笠金村と笠女郎
八 坂上塾で詠う娘たち
九 笠女郎の死、大伴大嬢との結婚
第四部 若き官人家持、恭仁宮から越中へ
十 葛城王に転がり込んだ大役
十一 聖武天皇の苦悩と大仏造立
十二 安積親王の死と初期万葉集
十三 家持 越中国で詠う
第五部 大伴家の落日と家持の死
十四 難波の津を訪ねて防人の歌を収集する
十五 聖武死後の政変で孤立する家持
十六 藤原仲麻呂の乱と皇統の交替
十七 陸奥に死せる家持、都人を走らす
あとがき
[出版社からのコメント]
新しい元号が梅花の宴に由来することが明らかになって、俄かに注目された万葉集ですが、いざ万葉集について知りたいと思っても、分かりやすい作品に出会えないという方も多くいらっしゃるのではないかと思います。 本書は、万葉集の成立に大きなかかわりを持つ大伴一族を主軸として、物語風に読まれた歌や時代背景が語られており、特別な知識がなくても楽しめる内容となっています。 令和の時代に、本書を通じて多くの方が倭歌に関心を持っていただければ嬉しく思います。
[著者プロフィール]
八木 喬(やぎ たかし)
1939年 新潟市生まれ
1958年 新潟高校卒
1964年 東北大学工学部電子工学専攻修士課程修了 同年 ㈱安川電機入社
研究所、プラント設計、ロボット開発、関連会社勤務を経て2002年 退職
福岡県北九州市八幡東区在住
[読者から頂いたお声]
「令和」という元号が、万葉集出典の「初春の令月にして気潔く風和き」という歌から由来となったという発表で明らかになり、私自身もそれを契機に万葉集に興味を持った経緯もございました。その中で、今回作者様のこの度の本書、特に万葉集の成立・編纂に深く関わりをもち、とりわけ万葉集全歌数4516のうち、473首が大伴家持が手がけたという事実は今回拝読して初めて知った事実でございました。この大伴家持とその一族の物語のような歌や、その時の時代背景が難しい言葉もなく、私のような特別な知識も学もない人間にとって、本書はとても分かりやすい一冊でございました。
万葉集が飛鳥・藤原京時代を経て、上は天皇から下は名もない庶民に至るまで、幅広い階層の人々が読んだ歌、その門戸の広い分野の約4千500首を集めた古代歌集という事実はわずかながら私の拙い学習によって存じあげておりましたが、その中で家持が上級官人でありながら、万葉集に473首という最多の歌数を残した、その功績とバイタリティに驚きを感じました。家持が詠んだ歌の中で「世の中は数なきものか春花の散りのまがひに死ぬべきおもへば」という表現があり、人生の儚さと、その時の家持の都の人恋しさや慣れない仕事の苦労の心情からこのような弱った心情の変化を花の散る様とあわせて読んでいるという表現に、家持の歌人としての側面と、人間臭さの側面が垣間見え、親しみを覚え、惹きこまれました。
作者様が定年退職を迎えられてから、作者様の第2の故郷となった福岡の地で、身近の遺跡や由緒ある神社を訪れられ、その過程で万葉集に興味を持たれ、研究させてきたというは池を知り、万葉集の「誰がなんの為に万葉集を現在の形にまとめられたのか」という疑問が私自身もとても気になっていた部分であり、今回家持の歌や時代背景を主に、多くの歌の作者、その歌の説明文、時代背景・歴史の流れ等々からこの疑問を考察され、この一冊に丁寧にまとめられており、大変楽しく拝読させていただきました。(30代:男性)
「令和」の元号が、梅花の宴、万葉集出典の「初春の令月にして気潔く風和き」に由来することが明らかになったことで、再度注目された万葉集。とは言え、いざ万葉集について読みたい・知りたいと思っても、はて何を読めば良いのか、何か分かりやすい作品ないのか、なかなか良い本に出会えないという方も多くいらっしゃるのではないかと思います。そんな時、是非オススメしたいのがこちら「大伴家持と万葉集への道」です。
さて、本書に出てくる「大伴家持」について。実際、わたしは全く存じていませんでした。そこで調べてみたところ「奈良時代の公卿・歌人。大納言・大伴旅人の子。官位は従三位・中納言。三十六歌仙の一人。小倉百人一首では中納言家持。」とのことでした。なるほど。この時点ではまだ、良く分かっていない私。そこでマンガや映画で観たことのある百人一首と何か関係はあるのかを調べてみました。百人一首の和歌の中で、万葉集から直接選ばれた歌はないそうです。とはいえ、全く関係ないわけでもないようです。古今和歌集や新古今和歌集も、万葉集と同じように、古い時代から各歌集が編纂された時代まで、幅広い時代の歌が収録されいます。その中には、その「元歌」となるものが、万葉集に含まれているものがいくつもあるのだそうです。
たとえば、有名なところでは、百人一首の中の
「春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」
という聞き覚えのある歌は、 万葉集の
「春過ぎて 夏きたるらし 白妙の 衣干したり 天の香具山」
という歌が元歌とのことです。
旅人や憶良に歌を詠ませる機会も作ろうと精力的に働きかける郎女の想いは、やがて「梅花の宴」となって実を結んでいます。万葉集を代表する歌人である大伴旅人、山上憶良、大伴家持の歌の人生を、揺れ動く時代の流れの中で追った、新しい万葉歌の物語を是非ご堪能していただきたいです。特別な知識がなくても楽しめる内容となっていますので、決して構えることなく、本書を通じて多くの方が倭歌に関心を持っていただければ嬉しく思います。(40代:男性)
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