自然の探究 : 東西の思索をたずねて
(著) 片倉望
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―言葉には、思想の歴史の遺伝子が秘められている―
私たちが日常で当たり前のように使う「自然」という言葉は、実は多様で複雑な奥行きを持っている。日本では明治の頃よりnatureの翻訳語として使われるようになったこの言葉は、中国先秦思想の中で生まれ日本で新たな思想史的展開を遂げた「自然」とは全く異なる時空間の中にある。そして西欧語としてのnatureについても、それぞれの時代、それぞれの思想において多様な意味の広がりを持ちながら現在に至っている。この事実の上に立って、本書では「自然」をめぐる諸問題を哲学や歴史、宗教、科学、美術などの様々な視点から検討していく。古代から現代まで、洋の東西を問わず、「自然」という概念を探究した示唆に富む比較思想史的論考集。
[目次]
まえがき
Ⅰ 自然と世界
1.自然と世界の価値秩序
―自然法論をめぐって―
2.科学における訳語「自然」をめぐって
3.アメリカにおける自然観
―ウィルダネスから自然保護へ―
4.山水画は自然を描いているか
―中国絵画が描くもの―
Ⅱ「自然」の思想史
1 西の思想史
1.自然集合論と公理的集合論
2.「自然」と人間
―ギリシア思想の一側面―
3.トマス・アクィナスと「自然本性natura」
―倫理学を中心に―
4.自然主義と自然化
2 東の思想史
1.「おのずから」としての自然
2.中国古代における「自然」
3.『維摩経』における「自然」
4.仏教における行為と自然環境
参考文献
執筆者紹介
[担当からのコメント]
探究すればするほどそこに残された痕跡が私たちを膨大な知の世界へと誘う、本書にはそんな面白さが詰まっています。「自然」という言葉の裏にある知のダイナミズムを、ぜひじっくりとお楽しみください。
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