エスニック・アイデンティティの研究 : 流転するスロヴァキアの民

(著) 川﨑嘉元

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―エスニック・アイデンティティの視座は、民俗と歴史を考えるうえで欠かせない―
1918年にチェコスロヴァキア国が誕生するまでの約1000年をハンガリー王国の住民として生きてきたスロヴァキア人は、その間スロヴァキア人としての民族意識を風化させることなく文化と伝統を存続させてきた。殖民政策や宗教改革による迫害、アメリカへの移民、国境変更など、スロヴァキアの領地を追われ他国や他の民族集団との共生を余儀なくされてきたスロヴァキア人は、如何にしてそのエスニック・アイデンティを保持し続けてきたのかーースロヴァキア共和国と離散・移民したスロヴァキア人マイノリティが住む地域への意識調査に基づいた、示唆に富む「エスニック・アイデンティティ」研究論考集。

[目次]
はしがき
序  章 エスニシテイ,アイデンティティ,グローバル化
――問題の所在―― 川﨑嘉元
1.エスニシティの登場
2.グローバル化
3.グローバル化とアイデンティティ・クライシス
4.グローバル化と社会主義の終焉
5.アイデンティティ
6.スロヴァキアの民
7.調査の設計
第1章 多民族と交差,共生するスロヴァキア人
リュボミール・ファルチャン/ マーリア・ストルーソヴァー
(川﨑 嘉元 訳)
1.はじめに
2.社会の変化と寛容な民族間関係
3.20世紀の多民族共生の特徴
4.政治的次元における多民族共生
5.1989年以降の多民族共生のあたらしい形態
6.他国に住むスロヴァキア人のエスニック・アイデンティティとローカル・アイデンティティ形成にかんする社会学的,歴史的考察
7.ヴォイヴォヂナに住むスロヴァキア人
8.ルーマニアにおけるスロヴァキア人
9.ハンガリーのスロヴァキア人
10.ウクライナ,カルパチア地方のスロヴァキア人
11.離散するスロヴァキア人の居住地および民族アイデンティティ
第2章 スロヴァキア人の異民族・異国民にたいする受容態度
── 石川晃弘
1.本章の課題・対象・方法
2.一般的受容度と個人属性の相関分析
3.一般的受容度と価値態度の相関
4.個別民族にたいする受容度の分析
5.総   括
第3章 社会変動とエスニック・アイデンティティの変容
――東スロヴァキアの少数民族ルシンの事例をもとに――
近重亜郎
1.はじめに:本章の狙い
2.「ルシン」史概観7)
3.1990年代以降のルシン(「脱ウクライナ」の動き)
4.第三者からみた「ルシン・ウクライナ」について
5.ルシン・アイデンティティ問題の今日的意義
6.ルシン・アイデンティティをめぐる諸事例
7.「ヘリックスモデル」の有効性の検討
8.結びにかえて
第4章 北ハンガリーのスロヴァキア人 ズデニェク・シチャストニー (川﨑 嘉元 訳)
1.はじめに
2.ハンガリーに住むスロヴァキア人
3.アンケート調査結果の分析
4.結びにかえて
第5章 ヴォイヴォヂナのスロヴァキア人 佐藤雪野
1.ヴォイヴォヂナの概容
2.インタビュー記録
3.再び教育,ギムナージウム,マティツァについて3)
4.結びにかえて
第6章 ルーマニアのスロヴァキア人の歴史 ヴラスタ・ラズ (香坂 直樹 訳)
1.スロヴァキア人の移住と入殖
2.入殖時の生活と教育
3.1944年9月11日
4.入殖条件
5.移住の経済的・政治的・社会的背景
6.ナドラクでの新移住者の請願
7.ルーマニア北西部のスロヴァキア人
8.ボドノシュの1940年代(ある教師の記録)
9.北西部へのスロヴァキア人の入殖
10.結びにかえて
第7章 ルーマニアにおけるスロヴァキア人の生活 リュビツァ・ファルチャノヴァー (近重 亜郎 訳)
1.ルーマニアのスロヴァキア人
2.質問調査結果の概要
3.結   論
第8章 合衆国のスロヴァキア人 マイケル・J.コパニッチJr. (香坂 直樹 訳)
1.はじめに
2.歴史的背景
3.移民の動機
4.アメリカへの移民
5.スロヴァキア人地区
6.女性の生活
7.スロヴァキア人の教会
8.合衆国におけるスロヴァキア人の人口動態
9.スロヴァキア語の利用
10.スロヴァキア人組織とビジネス
11.スロヴァキア人の公的生活
第9章 フランスにおけるスロヴァキア人とスロヴァキア文化 パトリス・ブーダール (中村 祐子 訳)
1.小   史
2.フランスへのスロヴァキア人の移住
3.スロヴァキア文化の架け橋
4.公的活動
5.二国間交流活動
6.スロヴァキア語とその学校
7.文学講演会
8.文学翻訳
9.フランス人のスロヴァキア知名度
第10章 流転するザカルパチア地方と民族 ――チェコスロヴァキア編入時代の政治史―― 香坂直樹
1.ザカルパチアの領域とハンガリー王国時代
2.チェコスロヴァキア共和国への編入過程
3.チェコスロヴァキア第一共和国内でのポトカルパツカー・ルス
4.結びにかえて

[担当からのコメント]
民俗とは何かとという問いに答えるためには自然科学や社会科学、人文科学など広範な領域の研究が必要となりますが、それはつまり「民俗」ほど私たちの世界に広く深く関わるものはないということなのかも知れません。国際化が進むなかで今後ますます意義を持っていくであろう民俗をテーマとした本書、ぜひご一読ください。

[著者略歴]
川﨑嘉元(かわさきよしもと)
社会科学研究所研究員,中央大学教授

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