寺子屋から変則中学へー史料と郷土史でみる近代日本の庶民教育

(著) 新井常雄

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作品詳細

[商品について]
―学校を卒業させるのが「教育」ではない。いま寺子屋・私塾に学ぶべきこととは―
寺子屋や私塾は、江戸時代の庶民が教育を受ける機関として学ぶ欲求の受け皿となってきた。しかし明治時代になると、政府が西洋式の教育制度の普及を推進すべく定めた「学制」によって大きな岐路に立たされることになった。本書は、東條家の寺子屋日記や麗澤学校設立などの史料を中心に、江戸時代後期から明治時代にかけての寺子屋や私塾の実情を熊谷(幡羅郡)の郷土史と共にまとめた近世庶民教育史である。近世の庶民教育機関が地域に果たした役割や公教育制度について考察するうえでも示唆に富む一書。

[目次]
はじめに
史 料 編
一 安政戊午(五)年日記
二 麗澤学校関係
1 麗澤学校開設願(明治十年一月)
2 私塾ノ便利ヲ論スル文(明治十年一月)
3 願書ヲ呈進シテ私塾ヲ許サレン事ヲ請(明治十年二月)
4 麗澤学校設置伺等 教則(明治十五年十一月)
5 人学證 教員履歴(明治十三年)
6 私立学校生徒之儀ニ付心得方伺・受験生徒姓名届書(明治十六年十一月)
三 知方社設立関係
1 立社謀案(明治六年一月)
2 知方社々約(明治十年十一月)
3 知方社開業祝詞 社員集稿(明治十年十一月)
考 察 編
〔郷土史〕 一 熊谷(幡羅郡)における寺子屋の実態
1 これだけあった寺子屋・私塾
2 高まる教育への要求
二 農村における寺子屋併存私塾の事例
1 三代、七十年間続いた東條塾
2 東條家の「塾」の特徴と就学状況
3 東條塾の維持経営
4 寺子の家庭資産
5 教育内容・年中行事その他
三 明治初期の小学校
1「学制」期の初等教育
2 学校関係者の督促と就学率の低迷
3 村を悩ます小学校費用
四 明治十年代農村における学習結社・知方社について
1 大里外三郡内における中等教育の概況
2 学習結社・知方社
〔社会科教育〕 一 授業をどう行うか
1 生徒の今日的特徴
2「授業びらき」をていねいに行うこと
3 具体的指導内容
二 面白い調べ学習ができる単元と指導のヒント
1 自ら学ぶ習慣の確立を
2 見通しをもった授業計画と調べ活動
三 生徒が進んで学ぶための助言のコツ
1 授業を三つの要素に区分する
2 学習意欲を高める話し合い
3 あなたはどうする〈死刑制度〉
お わ り に
著者略歴
一 筆 者 紹 介
二 考 察 編
三 著 作 物

[担当からのコメント]
現代でも文科省が進める様々な教育政策について賛否両論ありますが、いつの時代も公権力と教育現場には大きな乖離があるのだなと本書を読みながら改めて思います。必ずしも本書のメインテーマではありませんが、紹介されている東條家の教育への理念と情熱には学ぶべきものが多くあります。ぜひご一読ください。

[著者略歴]
新井 常雄(あらい・つねお)

◇昭和二十一年 埼玉県熊谷市生まれ
◇昭和四十六年三月
 立教大学大学院文学研究科(史学専攻)修了
◇昭和四十六年四月より平成十八年三月まで三十五年間、熊谷・深谷市内の小・中学校教諭・教頭・校長を勤め、定年退職する。
◇平成十八年四月より埼玉県立史跡の博物館に二年間嘱託として勤務する。
◇くまがや古文書研究会会員、熊谷郷土研究会会員

考 察 編
 すでに発表した左記の論文の集録ですが、本書刊行にあたり補筆あるいは修正を加え、全体の統一を図りました。

〔郷 土 史〕

 1「熊谷(幡羅郡)における寺子屋の実態
         ―教育者の墓碑・寿碑を通じて―」
     (『熊谷市郷土文化会誌』第六三号 平成十九年)

 2「農村における寺子屋併存私塾の例
     ―安政五年日記・門人帳(東條家)より―
     (『熊谷市郷土文化会誌』第六四号 平成二十年)

 3「明治初期の小学校―熊谷市西部
    (三尻・久保島・大麻生)地区を中心に―その一」
    (『熊谷市郷土文化会誌』第六六号 平成二十二年)

 4「明治初期の小学校―熊谷市西部
    (三尻・久保島・大麻生)地区を中心に―その二」
    (『熊谷市郷土文化会誌』第六七号 平成二十三年)

 5「明治十年代農村における
            学習結社・知方社について」
    (『熊谷市郷土文化会誌』第六八号 平成二十四年)

〔社会科教育〕

 1 授業をどう行うか
      (『中学校公民の授業』民衆社 昭和六十一年)

 2 面白い調べ学習が出来る単元と指導のヒント
      (『社会科教育』七月号昭和六三年 明治図書)

 3 生徒が進んで学ぶための助言のコツ」
    (『中学校学級経営』一月号 平成元年 明治図書)

著 作 物

 1 共 著
  ①『近世史ハンドブック』(近藤出版 昭和四十七年)
  ②『中学校公民の授業』(民衆社 昭和六十一年)
  ③『中学校地理の授業』(民衆社 昭和六十一年)
  ④『中学校社会の授業』(民衆社 昭和六十二年)

 2 論 文
  ①「面白い調べ活動のさせ方・ヒント」
     (『教育科学社会科教育』七月号
                 昭和六十三年明治図書)

  ②「生徒が進んで学ぶための助言のコツ」
     (『中学校学級経営』一月号 平成元年明治図書)

  ③「維新期におけるアウトサイドの教育者
         ―熊谷市下奈良 東條塾の場合―」
     (『熊谷市郷土文化会誌』第五十六号 平成十三年)

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