価値と生産価格 : 労働価値説の新たな概念と定式

(著) 神田敏英

Amazon

作品詳細

[商品について]
―マルクスがのこした宿題は、その経済学を新たな次元へと押し上げる―
マルクスの独自な全体系の起点である商品価値提起、マルクス学派の極めて重要な概念として長年にわたり論争の対象となってきた労働の二重性などマルクスの労働価値説とそれに基づく上向法展開は今なおその有用性は失われていない一方で、現代経済を分析していくためには部分的に修正すべき点も散見される。本書では、マルクス『資本論』の機軸概念である価値と生産価格を中心に、ベームやボルトキビッチらの主張も批判的に検討しながら、転化問題おける新たな価値式の導入をはじめ独自の視点から考察した概念と定式による上向法展開を試みた挑戦的で示唆に富む経済学論考。

[目次]
まえがき
第1章 商品と価値:価値概念の提起
第1節 冒頭商品
第2節「価値」の提起
第3節 ベーム‐バヴェルクのマルクス労働価値説批判
第2章 労働の二重性
第1節 マルクスの労働の二重性提起
第2節 抽象的人間労働の歴史性に関する論議
Ⅰ 抽象的人間労働の歴史貫通性(超歴史性)説
Ⅱ 抽象的人間労働の特殊歴史性・商品生産に固有説
Ⅲ 商品論の次元と労働の二重性:私論
第3章 価値形態と貨幣(形態)の必然性
第1節 価値形態の形態分析と発展分析
第2節 価値形態の「移行」: 単純形態の「不十分さ」と全体形態の「欠陥」
第3節 価値形態発展の否定: 個別=一般の価値形態と特殊・排他的価値形態
第4節 交換過程と「唯一等価価値形態」 (マルクス「一般的価値形態」)=貨幣形態の必然性
第4章 資本論第3巻と2つの転化: マルクスの生産価格提起
第5章 マルクス生産価格論の検討・批判
第1節 ベーム‐バヴェルクの『マルクス体系の終結』
第2節 ボルトキビッチのマルクス価値・生産価格(転化)式の「修正」と「計算」
Ⅰ ボルトキビッチの主張
Ⅱ ボルトキビッチ説の批判:松石勝彦(及び見田石介)の主張
Ⅲ ボルトキビッチ説批判(松石及び見田説)の検討:私論
第6章 価値式と再生産過程
第1節 投入係数価値式とそれを巡る論議
Ⅰ 投入係数を用いる価値式
Ⅱ 労働生産性上昇とその波及過程を伴なう再生産過程価値例式;それに対する平石修の検討と批判;批判への弁明
Ⅲ 投入(産出)係数を用いる価値式への批判
第2節 死んだ労働と生きた労働の比率 (生産の有機的構成:C/L)を用いる価値式
Ⅰ 価値式の表現方法
Ⅱ 生産の有機的構成とマルクス資本の有機的構成
第3節 賃銀率と搾取(控除)率
Ⅰ 価値労働分配率を用いる賃銀、搾取表現式
Ⅱ 置塩「搾取の数学的証明」に間する論議
Ⅲ 絶対的剰余価値と相対的剰余価値
第7章 生産価格式と利潤率式
第1節 マルクス生産価格式と利潤率式
Ⅰ マルクス生産価格式
Ⅱ マルクス利潤率式とそれを巡る論議
第2節 生産価格式の表現:投入生産係数式と生産の有機的構成・価値労働分配率を用いる式
[補説:基礎部門と利潤率――スラッファの「基礎的生産物」について]
第3節 費用価格を生産価格化する転化式 (ボルトキビッチ「修正」式、投入係数式)をめぐる論議
Ⅰ 大野節夫の主張:費用価格生産価格化の錯誤
Ⅱ 宮川彰の主張;費用価格生産価格化の必要性否定、 生産価格成立による費用価格修正についてのマルクスの弁明支持、総計2一致擁護
Ⅲ モズリーの主張:所与としての資本量と総量: マルクスと新リカード派の方法的並行
Ⅳ 大石雄爾の主張:(ボルトキビッチ)生産価格式と総計2一致の両立
第8章 価値体系と生産価格体系
第1節 価値式と生産価格式の特徴
第2節 価値体系と生産価格体系の規定要因
第3節 生産価格体系の自立性と価値体系との両立説
第4節 価値の本源性と生産価格の派生性
第9章 生産価格と資本論第3巻
第1節 第3巻第10章の次元
第2節「理想的平均」と第3巻
増補 価値と生産価格
はしがき
第1章 価値の提起と労働価値説の方法
Ⅰ 価値の提起
第2章 価値形態と二つの転化:マルクス論理の追跡と批判
1 価値形態の設定
2 二つの転化
3 『資本論第3巻』総過程における価値と生産価格
4 マルクスのアダムスミス「価値構成説」批判
第3章和田豊の神田説批判
1 価値規定
2 貨幣の必然性
3 生産価格
4 価値体系と不等労働量交換

著者紹介

[担当からのコメント]
マルクスの思想は社会主義とつながって政治的な色合いで見られることが多いですが、行き過ぎた資本主義の悪弊が大きな問題となっている今、あらためてマルクス経済学を問い直す意義は大きいのではないかと思います。本書は経済学の基礎知識を要する本ではありますが、ぜひ多くの方にマルクス経済学という思考のフィールドに飛び込んでいただければ嬉しく思います。

[著者紹介]
神田敏英(こうだ としひで)

1942(昭和17)年5月生
1970年3月 名古屋大学経済学部大学院博士課程単位取得退学
1971年4月 岐阜大学教養部勤務
1996年9月 岐阜大学地域科学部配転
2007年3月 岐阜大学退職・岐阜大学名誉教授
愛知県一宮市在住

新刊情報

       

22世紀アート
オフィシャルコーポレートサイト

百折不撓