思想の森の貸本屋ーー札幌「独立社」と北海道の出版文化を彩った人々
(著) 藤島隆
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―店主は毒舌で不愛想、でも明治大正の札幌になくてはならなかった貸本屋―
有島武郎の親友であり、知的で直情、周囲との喧嘩が絶えないながらも、その純粋な人柄で多くの人に慕われた足助素一。その彼が明治の終わり頃に「独立自営」の道として札幌で立ち上げたのが、貸本屋「独立社」である。青年の読書欲を満たす場所が少なかった当時の札幌で翻訳文学や哲学書を多く揃えた独立社は、当時の北海道の学生や知識人に多大な影響を与え、素一が上京して独立社を去った後も名前を変えながら様々な人によって引き継がれて、昭和の初めまで存続した。足助素一と「独立社」の足跡を追いながら、明治から昭和にかけての北海道のおける貸本・図書館の文化を当時の人々の息づかいと共に概観した貴重な研究の記録。
[目次]
まえがき
第一部 貸本屋独立社とその系譜
足助素一と独立社
(一) 足助素一について
(二) 独立社の開業
(三) 独立社という店名
(四) 独立社の蔵書
(五) 独立社を詠う
(六) 独立社を利用した人々
(七) 足助、上京後の独立社
(八) 独立社蔵書印のある図書
二 興膳辰五郎と独立社
(一) 遠友夜学校と独立社
(二) 興膳辰五郎について
(三) 興膳辰五郎と独立社
(四) 興膳辰五郎のその後
三 田所篤三郎と創建社
(一) 創建社事件
(二) 小説「酒狂」と「骨」のモデル
(三) 田所篤三郎について
(四) 創建社について
四 棚田義明と再現社
(一) 棚田義明について
(二) 札幌短歌会と雑誌「路傍人」
(三) 再現社について
(四) 雑誌「無産人」の発刊
(五) 再現社の閉店
五 奥出三郎と白羊社
(一) 白羊社について
(二) 更科源蔵が描いた白羊社
六 まとめ
第二部 北海道の貸本屋と図書館
概説 北海道の貸本屋
一 明治期の貸本屋
二 大正期の貸本屋
三 昭和期の貸本屋
四 むすびにかえて
素描 明治期北海道の図書館
一 前 史
二 ケプロンの建言と札幌農学校図書室
三 図書館のはじめ、新聞縦覧所
四 会員組織による図書館
五 宗教関係の図書館
六 教育会経営の図書館
七 学校図書室の公開
八 枝幸図書館と函館図書館
九 地方改良運動と図書館
十 まとめ
旅客の無聊を慰める列車図書館
岡田健蔵―図書館にかける
一 図書裡と号す
二 不燃質図書館への執念
三 図書館業務のセンス
四 郷土資料への着目と蒐集
五「東遊奇勝」をめぐって
六 郷土史研究と北方文化の創出
七 図書館からの情報発信
八 博物館活動との連携
随筆などにみる北海道の図書館
一 日新文庫
二 下村文庫
三 札幌区教育会図書館
四 市立函館図書館
五 地崎文庫
六 北海道立図書館(その一)
七 北海道立図書館(その二)
八 北海道学芸大学附属図書館
あとがき
初出一覧
著者略歴
[担当からのコメント]
その街に図書館や本屋があると、どこか文化的に豊かな感じがすると思ったことはないでしょうか。本書で取り上げられている貸本屋も、きっとその時代の文化の香りを象徴するような存在だったのでしょう。本の文化が変わりつつあるいま、改めて故きを温ねるのも一興かと思います。ぜひご一読ください。
[著者略歴]
藤島 隆(ふじしま たかし)
1945年札幌市生まれ。1970年北海道大学附属図書館勤務。旭川医科大学、山梨医科大学、山形大学、徳島大学等を経て、2005年富山大学附属図書館を退職。
著書等
『北のアンティクアリアン―札幌古書店の足跡』1988年
『年表・北海道の図書館』1992年
『明治期 北海道の図書館』1993年
『北海道図書館史新聞資料集成 明治・大正期篇』2003年
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