真の名著について
たまに出版社で働くメリットを聞かれることがある。
残念ながら「与えられる」という意味で言えば、特別な何かがあるわけではない。しかし、逆に言えば、どの仕事でも気持ち次第で多大なメリットを「生み出す」ことができるのである。
わたしが出版社だからこそのメリットのひとつとして感じていることは、決してメディア受けしないような素朴な本に出会えることである。こういう本には、なかなか出会えない。
本屋でも取り扱っていることが少なく、そもそも並んでいても、周囲の派手な本に目を奪われて気づくこともない。
だから、ほとんどの人がこういう素朴な本の魅力を知らない。もっといえば読み方すら知らない。
それをここに記したいと思う。
①素朴な本は、内容を情報として読んではいけない。
②素朴な本は、内容に意味を見出そうとてはいけない。
③素朴な本は、内容から学びを得ようとしてはいけない。
④素朴な本は、時間を気にしながら読んではいけない。
⑤素朴な本は、無心にならなければならない。
この5箇条を徹底すると、等身大の自分とは異なる、つまりつま先立ちになってしまった自分に気づくことができる。
①自分が本当に大切にしなければならないことは何なのか。
②社会が自分に押し付けていることは何なのか。
そんな気づきを与えてくれる素朴な本もまた名著であると僕は思う。
株式会社 22世紀アート
代表取締役 向田 翔一