樹影の中の鳩笛 : 読書サークル35年
(著) 鈴木金雪
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―詩を生きる。そこに言葉がある―
ラムネの中の小さなビー玉みたいな/騒音と油膜に包まれた/仕事を終えると/私は帰り道をゆっくりたどるように/手と顔と髪を洗う/肩をほそめて/プラットホームにたたずむと/貨物列車が/湖国の雪を積んで激しく通り過ぎた/その一つ一つのコンテナーの中に/何がかくされているのか/私は知らない/そして/湖(うみ)に霙(みぞれ)降る日の悲しみは/誰にも言えない(「樹影のなかの鳩笛シリーズ」より)
生きるためのハードな肉体労働の狭間にある「独学」は、ひとりの詩人に言葉を宿す。「長屋風景シリーズ」「樹影のなかの鳩笛シリーズ」など原風景を求め続けたこれまでの詩作に自身の解題を附し、散文と共に鶴見俊輔氏の推薦文も収録した著者初にして唯一無二の詩集。
[目次]
【寄せる言葉―独学その他―】
Ⅰ 詩および詩をふくむ散文
○ 私にとって詩とは ―詩的原風景の探究―
【長屋風景シリーズ】
〈井戸水(いどみず)〉
〈初日(しよにち)〉
〈源(げん)さんの死(し)〉
〈牡丹雪(ぼたんゆき)〉
〈ボタ餅(もち)〉
〈金平(きんぴら)ごぼう〉
〈英雄(えいゆう)〉
〈厩表札(うまやひようさつ)〉
〈激(はげ)しい雨(あめ)〉
〈赤(あか)い手(て)で〉
〈わかれ〉
〈子守唄(こもりうた)のように〉
〈記憶(きおく)〉
〈ゴジラの息子(むすこ)〉
【樹影のなかの鳩笛シリーズ】
〈サナトリウムの坂(さか)〉
〈安母尼亜(アンモニア)〉
〈牡牛座(おうしざ)〉
〈帽子(ぼうし)〉
〈麦(むぎ)わらの少女(しようじよ)〉
〈万華鏡(まんげきよう)〉
〈クレゾールの虹(にじ)〉
〈初恋(はつこい)〉
〈キリコ大王(だいおう)〉
〈聖書(せいしよ)〉
〈ボロと彗星(すいせい)〉
〈天邪鬼(あまのじやく)〉
〈羽音(はおと)〉
〈固有振動(こゆうしんどう)〉
○ 白い風景
○ 春風残雪記 ―たんこぶの歌―
Ⅱ 家の暗さと明かり
○ 星
○ 影法師
○ 父の死と母の死
Ⅲ 労働と学び ―私のサークル論―
○ サークルの命
直面する問題から
相互発達への欲望と能力
生き様の合流点
○ サークルの方法
批判と作法
「二流の会」について
折り紙の話
○ サークルの暗闇 ―すくい取れぬもの―
○ 旅立つ二人に
○ 思えば遠くへ来たもんだ
〈らっきょうの歌〉
〈小舟〉
○ 学び続ける足場としてのサークルと労働
○ 独学途中下車ノート
○ 私の大学
○ 「家の会」の奇妙なくぐり戸
○ 「家の会」最後の合宿
○ 無風の中で凧をあげる
Ⅳ 友人の死
○ 最期の贈りもの
○ 【遺稿】 「がんと闘う日々」 今西喜良
○ 【追悼詩】 終 電 車
○ 【追悼文】 碁友・伊藤益臣さんのこと
Ⅴ 歩く・走る・打つ・笑う・生きる(雑文)
○ 真冬のロシア小紀行
○ 油小路商店街を歩く
○ 丹波高原を走る
○ 橘中の楽しみ
○ 跡アンド跡
Ⅵ 気まぐれ読書と青春
○ 漫画のある生活 ―手塚治虫論―
○ つげ義春 「紅い花」
○ 金に咲いた「眼」
○ まだらボケ回想記
○ 二流の会・読書作品リスト
【あとがき】
著者略歴
[担当からのコメント]
文壇の中から辺りを見回すような詩ばかりが目につく昨今、本書のような詩と巡り逢うことができるのは僥倖というしかありません。技巧でも言葉遊びでもない、共鳴によって魂が深く揺さぶられるそんな言葉がここにはあります。ぜひご一読ください。
[著者略歴]
鈴木 金雪(すずき かねゆき)
1951年 京都生まれ。趣味は囲碁・アマ五段格
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